『THE BEYOND』を6話まで見た後に一期、『RIGHT OF LEFT』、『HEAVEN AND EARTH』を見直した感想です。『THE BEYOND』6話までのネタバレが含まれています。今回、未公開にした記事は『THE BEYOND』全12話先行上映後に公開します。
●一期21話
・道生と弓子、剣司と咲良
弓子「思い出作り作戦、成功率は五分と五分ってところかしらねえ」
一期21話
弓子が仕掛けた結果、剣司と咲良というペアが誕生した。
弓子「昔は臆病で情けなくって、
目立ちがり屋で女好きのろくでなしだったわ」
咲良「臆病で情けなくて目立ちたがり屋の女好きで、
父さんと正反対なんだから」
一期21話
弓子の語る道生の姿と咲良の語る剣司の姿が全く同じだったことから、道生と弓子、剣司と咲良は対称的なペアではなく、剣司と咲良のペアは道生と弓子の後継者且つ、このペアがかなえられなかった望みをかなえることのできる存在なのだろう。剣司は道生の望みだったファフナーのパイロットを引退することができた。道生は子どもの誕生を見ることができず、弓子は子どもの成長を見ることができなかっただけでなく、子どもが大人になる前にいなくなってしまった。しかし、剣司と咲良は子どもが大人になるまでの成長を見届けることができるのではないだろうか。
●一期22話
・総士と同級生
一期9話ではパイロットたちがカプセルの中で眠る甲洋の姿を見て話している時、総士が部屋に入ってきた。
総士「これは甲洋の、自分で招いた結果だ。
お陰でファフナーを失った。
感傷に浸る暇はない」
一期9話
総士と同級生の関係が変わったことを表すのかのようい、一期20話、甲洋が動き出したと告げる場面では総士が部屋に入った後、同級生がやってきた。
総士「甲洋は全細胞を凍らせ封印する予定だったんだ」
一期20話
一期22話では総士は咲良のいる部屋の扉の横に立って、パイロットを待っていた。
総士「剣司、中に入っても取り乱すんじゃないぞ」
一期23話
・甲洋と咲良
甲洋は中枢神経を同化された時、好きな人(翔子)のことも忘れてしまった。
甲洋「これが同化されるってことなのか。
何も感じない。
悲しいことがあったはずなのに。
そう、翔子が」
甲洋「翔子、誰だったっけ」
一期9話
一方、咲良は肉体の同化現象で倒れた時、心が消えていく感覚を味わったが、好きな人(剣司)の名前を叫んだ。
咲良「なにこれ、なに。
心が消えていく。
いや、いやだ、剣司、剣司、剣司」
一期21話
意識を失っている咲良は剣司の手を握った。
●一期23話
・道生と剣司
好きな人(咲良)が同化現象により昏睡状態に陥り、親友(衛)もいなくなってしまった剣司は戦う気力を失ってしまった。
剣司「死にたくねえ、死にたくねえよ」
一期23話
それに対して、愛する人と子どもがいる可能性を告げられた道生はドーピングしてファフナーに乗って戦うことを選んだ。
道生「せめて後続のパイロットが育つまで降りるわけにはいかないんだ。
今降りたら俺がこれまで奪ってきた命に申し訳ない。
その薬の効力が切れたら結婚しよう」
一期23話
・フェストゥムと人間
フェストゥムに中枢神経を同化された甲洋と同化現象で倒れる直前の咲良は同化されていく時に感じたことを言葉にしていた。
甲洋「何も感じない。
悲しいことがあったはずなのに」
一期9話
咲良「心が消えていく」
一期21話
スカラベ型はシステムを同化しようとしたが、途中でコアは破壊されて失敗。しかし、システムを覆った根は残り、総士はその中に閉じ込められた。通信が回復した後、総士が今の状態についてこう言っていた。
総士「時間の感覚が鈍くなっている」
総士「つらいという感情が消えかけているらしい」
一期23話
つまりフェストゥムとは感情(心)がなく、時間が存在しないということになる。
しかし、紅音、総士、乙姫、操がフェストゥムを祝福したことで、フェストゥムの世界は変化した。マレスペロの作った偽竜宮島で暮らすフェストゥム達は感情を持っていた。
セレノア「不安になる?」
レガート「そうらしい。
俺はあの子たちが好きだ
ずっと今のままでいたいと思う」
セレノア「私もそうよ」
フロロ「感情を学んだのよ」
『THE BEYOND』2話
こそうしはマリスに連れ去られた時は幼児だった。しかし、それから3年後、偽竜宮島にいたこそうしは少年に成長していた。こそうしの部屋には時計が2つも置いてあったが、フェストゥムの世界には時間が存在していることを意味している。
●一期24話
・憎しみ
保「真壁、システムの調整、俺にやらせてくれ、たのむ。
衛や千沙都が味わった苦しみを、
フェストゥムの奴らにも味あわせてやるんだ」
行美「保、子どもたちは復讐の道具じゃないよ」
一期24話
小楯保は息子と妻を奪われた憎しみから復讐心に駆られた。しかし、ファフナーに娘夫婦を奪われた西尾行美が小楯保が憎しみに飲み込まれないように諭した。
●一期25話
・蒼穹作戦
史彦「敵に囚われた我々の同胞を救出し、
長年の戦いに終止符を打つ可能性を、
新たな希望を獲得するためのものだ」
一期25話
アルヴィスにとって蒼穹作戦とは総士の救出とミョルニアのコアの開放(希望)を目的としていた。しかし、島のコア(乙姫)にとっては総士の救出よりも希望を獲得するための作戦だった。
乙姫「大丈夫。
あの4人なら、必ず希望にたどり着く」
一期25話
乙姫「一騎たちが紅音の意思に、希望に、届いた」
一期26話
●一期26話
・総士と千鶴
『THE BEYOND』6話、こそうしは美羽が千鶴ママと呼ぶ理由を知った後、千鶴に感謝していたが、パイロットの命を守りたいと思っていた総士は千鶴を信じ、心の中で感謝していたのではないだろうか。
総士「遠見先生の研究が進めば同化現象は防げる」
一期22話
総士「大丈夫だ。
治療を受ければきっと治る」
一期26話
●一期を見終わって
冲方丁が脚本に参加する前、一期1話から一期11話の物語の骨格はしっかりしていたが、脚本家の力量が足りず、その内容を視聴者に伝えることができなかった、これが今回の結論です。
特に一期4~6話の脚本に問題が多く、一期4話では島を守るために人類軍を囮にしろと命じられた一騎の心理、一期5話では総士、一騎、甲洋、真矢、翔子の関係、一期6話では命を賭けて一騎のいる場所を守りたいと思った翔子の心理が書けていなかった。裏を返せば、脚本家は一期4話と一期6話のテーマは自分なりの答えを持っておらず、一期5話の脚本を書く段階で総士、一騎、甲洋、真矢、翔子という5人のキャラクターをつかめていなかったのだと思います。
作家である冲方丁が初めてアニメの脚本を手掛けた作品ということもあり、一期の時は映像が持つ力を理解していないため、台詞ですべて説明しなければ、という意思を感じました。
今回、台詞に頼らず表情の微妙な変化で感情を伝えるという部分の演出にブレはなくしっかりしていただけに、一期前半の脚本の完成度の低さが悔やまれます。
●RIGHT OF LEFT
・答えを求めて
マリス「誰かが生きるために誰かが犠牲になる。
そんな世界を捨てて生きよう、総士」
『THE BEYOND』1話
『RIGHT OF LEFT』で蔵前がマリスと同じ疑問を呈していた。
蔵前「誰かが犠牲になって、
私たちが安全な場所にいて……
それが正しいのかな」
『RIGHT OF LEFT』
しかし、総士もこの疑問に対する答えを持っていなかった。
総士「正しいと願う以外に…ないだろ」
『RIGHT OF LEFT』
●HEAVEN AND EARTH
・真壁家
史彦「俺の願いはこの家がいつまでもお前の帰ることのできる場所であることだ」
『HEAVEN AND EARTH』
マリスによってこそうしが連れ去られる前までは真壁家が一騎の帰る場所だったはずだ。しかし、こそうしが連れ去られた後、こうそうしを探している一騎は海神島にはいないことが多く、史彦は一騎の帰ってくる場所を守っている必要がなくなった。その結果、史彦と千鶴の関係が進展し、史彦が普段、いる場所は遠見家となった。事実、『THE BEYOND』6話までの段階で真壁家は出てきていない。
・一騎の考え
一騎「俺たちは人とは戦わない。
お前たちと一緒に世界中と戦うなんて望まない。
そんなことしたらそれはもう俺じゃない」
『HEAVEN AND EARTH』
一期4話の脚本上の失点が尾を引いていることもあり、ここで一騎の考え方を今一度提示している。