「蒼穹のファフナー」を見直した感想 Part2(2020年)

 『THE BEYOND』を6話まで見た後に一期を見直した感想です。『THE BEYOND』6話までのネタバレが含まれています。今回、未公開にした記事は『THE BEYOND』全12話先行上映後に公開します。

 

●一期6話

・ノルンと防人

 『THE BEYOND』4話でルヴィが時間を稼ぐためにマークニヒトを防人で封じ込めるシーンがあったが、この一期6話にノルンが竜宮島本島を攻撃するフェストゥムを封じ込めるシーンがあった。一期ではフェストゥムを封じ込めているが、『THE BEYOND』ではファフナーを封じ込めているので、二者は対になっている。

 

・一期6話と『THE BEYOND』2話

史彦「奴の目的はワルキューレの岩戸か」
一期6話

 一期では竜宮島での3回目の戦闘でフェストゥムはコアを狙っていることから、総士が竜宮島の防衛に失敗した場合、総士は『THE BEYOND』2、3話でのこそうしの同じ状況(妹、乙姫を殺され、住んでいた島は破壊される)に陥ることになる。つまり『THE BEYOND』2、3話で描かれていたのは一期6話のバッドエンドだった。

 こそうしは武器もなく、一騎に軽くいなされるほど無力だったが、総士には妹を守るための武器であるファフナーがあった。竜宮島=妹を守ることに必死な総士は容子の制止を振り切り、翔子の乗るファフナーを出撃させた。

史彦「なに、マークゼクスを出すのか」
容子「お願い、翔子を止めて、皆城君」
総士「島を守るのが僕らの任務です」
一期6話

 総士にとって竜宮島を失うこと=妹を失うことになるので保の言葉も封じた。

 保「パワーバランスがおかしい。
   マークゼクスを一度帰還させろ。
   リフトエンジンを調整し直す」
   おい、真壁」
総士「その必要はありません、黙っていてください」
 保「大人に命令するな」
一期6話

 竜宮島防衛に失敗し、フェストゥムにコアを奪われた時、総士はフェストゥムに対してこう叫ぶことになるはずである。

こそうし「返せ、乙姫を返せ。
     乙姫を返せ」

こそうし「殺してやる。
     お前を殺してやる」
『THE BEYOND』2話

 この状況に陥らないようにするために、総士は一人で必死に竜宮島を守っていた。

 

・雑感

 アルヴィスでは史彦(総士のマークゼクスを出撃させるという判断を黙認)と保(エンジニアの視点から総士に助言)の行動は妥当なものだったことから、ストーリー展開自体はプロット通りだと思います。一期6話の失敗は翔子の一連の行動に対して説得力のある理由を作れず、情で泣かせる演出で押し切ったこと。

 

●一期7話

・パイロット

総士「もし羽佐間のように敵ごと自爆することが有効な戦術であると
   パイロットたちが認識したらどうなる」
ドラマCD『NO WHERE』

 ドラマCD『NO WHERE』で総士が心配していたことを咲良が口にしていた。

咲良「戦って満足して死んだんだよ、翔子は」
 衛「そ、そんな」
咲良「ふん」
剣司「俺たちもそうしろってのかよ」
一期7話

 事実、咲良の言葉に衛と剣司は困惑していた。パイロットがこういう状況に追い込まれることを防ぐために、総士は翔子の悪口の噂を流し、墓を汚させた。もっとも、咲良自身、死ぬ気はなかった。

咲良「死ぬのは嫌、でも逃げない」
一期7話

 

●一期9話

・総士の願い

総士「脱出しろ、羽佐間」
翔子「皆城君、わたし、フェンリルを使う」
音声「コード認証、フェンリル起動」
総士「羽佐間」
音声「フェンリル解除コード、アクセス不能」
一期6話

総士「今救援が来る、甲洋」
甲洋「翔子、誰だったっけ」
総士「甲洋」
一期9話

 総士はパイロットをなんとしても守ろうとしていた。

織姫「島が彼らの命を守っているから」
史彦「本来の同化現象を防いだ結果と」
織姫「そう。
   でも命以外のものまで守るわけじゃない。
   人としての姿や心までもは」
『EXODUS』12話

 『EXODUS』ではパイロットに新同化現象が発症し、命だけは守れるようになったが、竜宮島ミールが総士の望みをかなえたのかもしれない。

 

・自分自身への言葉

総士「感傷に浸る暇はない」
一期9話

 総士がパイロットである同級生に言った言葉だが、総士が自分自身に言い聞かせ、奮い立たせるための言葉でもあったのかもしれない。

 

●一期10話

・咲良

 『THE BEYOND』5話、咲良はこそうしのクラスの担任の先生だったが、一期では剣司と衛の先生のような役割をしていた。

咲良「衛、あんたちゃんとプリントやっときなさいよ」
   剣司、廊下を走るな」
一期10話

 

・真矢の役割

真矢「たとえどんなに変わっても、一騎君のこと覚えてるよ」
一期10話

 一騎は『EXODUS』24話で竜宮島ミールの祝福を受け、『THE BEYOND』ではフェストゥムの近い存在になったことを考えると、真矢は一騎がどんなに変わっても一騎のそばにいて、その生き様を見届け、一騎がこの世を去った後も生きている間はずっと記憶している人なのである。

 

・真実を知る

一騎「このまま戦うことに慣れていくのが怖いんだ。
   自分はなにか別のものに変わっちまうような気がして」
一期10話

 一騎のこの言葉はこの時点での不安を表したものでしかなく、この後、一騎は竜宮島の外の世界を見て、竜宮島を守るために変わることを選び、最終的にはフェストゥムと同じ能力を持つ体さえも受け入れた。

 真矢は『EXODUS』で竜宮島の外の世界を見たが、家族や仲間を守るためであれば、迷わず人間に銃を向け、撃てる人間に変わってしまった。

 竜宮島の外という真実を見た後、一騎は体が変わり、真矢は心が変わったということになる。

 

●一期11話

・復讐の道具

狩谷「島の連中にわからせてやるのよ、真壁」
一期11話

 ファフナーのパイロットではない狩谷は一騎を自分の復讐の道具として使おうとしていた。

 

・クロッシング

 総士は一騎と戦闘時にクロッシングを通してお互いの感情を共有しているので、自分の考えていることも一騎に伝わっていると思っていた。

総士「あいつが、あいつなら、あいつなら僕をわかってくれると思った」
一期11話

 しかし、共有しているのがお互いの感情であるため、一騎に総士の考えていることは何一つ伝わっていなかった。人間が自分の考えを相手に正確に伝えるためには言葉を使って会話しなければならないが、総士のこの考え方は人間の心が読めるフェストゥムに近いのではないだろうか。

 

・ザルヴァートル・モデル

 ザルヴァートル・モデルを作るためには竜宮島ミールのコアが必要だったため、人類軍は竜宮島のファフナーを鹵獲した。その状況を以下の表にまとめた。

  作った機体 マークザイン マークニヒト マークレゾン
  鹵獲された機体 マークエルフ マークフィア マークフュンフ
  鹵獲された機体の      
  パイロット 真壁一騎 春日井甲洋 堂馬広登
  パイロットの生死 生存 同化 死亡
  裏切られた人 一騎(竜宮島) 狩谷(竜宮島) ナレイン(人類軍)
  裏切った人 狩谷(竜宮島) 溝口(竜宮島) ヘスター(人類軍)

 3機とも人間同士の裏切りにより、人類軍が竜宮島のファフナーの機体を手に入れたが、マークザインとマークニヒトは竜宮島の住人同士の裏切り、マークレゾンは人類軍同士の裏切りによるものだった。