OP、ED共に少しづつ変更されているので、毎回気が抜けません。
19話のEDは絵に気を取られすぎた結果、クレジットが全く記憶に残らなかった。
カノン「我々はお前たちによって新たな共鳴を学んだ。
芽生えた力、共に育てよう」
『EXODUS』20話
「我々」と「共鳴」という言葉で思い出すのは『HEAVEN AND EARTH』でコアの生命を支えて島と一つになったミョルニア。剣司が意識を取り戻した後「クロッシングだ、島のミールと」と説明しているけど、おそらくこれはカノンの姿を借りた島のミールの言葉。
剣司「クロッシングだ、島のミールと」
『EXODUS』20話
『EXODUS』のDVD/CD 4巻に付属するドラマCD『THE FOLLOWER』にこんな場面がある。
弓子「美羽は島の大気になったミールの中で生まれ育ったの。
あの子の血の中には島の大気と同じものが流れているわ。
だから、島の記憶の一部を見ることができる」
ドラマCD『THE FOLLOWER』
ドラマCDの時系列は『EXODUS』7話冒頭。この時は美羽しか見ることのできなかった島の記憶をカノンが手繰り寄せた未来により、SDPが発動した剣司も島の記憶を見ることができるようになった。
織姫「二つの力が芽生えた。
一つは薬、一つは毒。
未来のために必要な力が、すべて揃った」
『EXODUS』20話
必要とはいえザイン、ニヒトと同様、パイロットがフェストゥムである甲洋の力は大きすぎて毒。エンディングから甲洋の搭乗するマークフィアーはザイン、ニヒトに同行して最終決戦に臨むことが示唆されている。
剣司「俺も強くなるよ、衛」
『EXODUS』20話
一期24話の剣司の「俺も衛みたいに強くなれるかな」に呼応する台詞。剣司は人間的にここで完成。
芹「あたしを食べたかったんだ。
あたしも本当はたくさん同化したいの。
もっと食べたいの。
ちょうだい、あなたの命」
『EXODUS』20話
『EXODUS』14話で総士は「そのせいで敵を別の存在に進化させてしまった」と言っているけど、「別の存在」の意味がここで判明。総士がフェストゥムに同化されたことにより、フェストゥムは他の生き物の命を食べて生きる存在、つまり生物へ進化してしまったということ。つまり今の総士もまたフェストゥムが無機物から生物に進化した姿そのもの。フェストゥムは生物になったために人類の弱点を理解し、『EXODUS』1話でハワイの補給基地を攻撃した。個人的に印象に残っているのは『EXODUS』14話、横転したバスをフェストゥムが襲う場面。フェストゥムの動きは明らかに食べ物を取り合う生物の姿だ。
『EXODUS』9話でザインが敵を同化する姿を見た暉は「敵を同化して、食った」と言っていたけど、ザインはすでに意思を持つ生物と化しているため、まさにその言葉通りの行動だった。同じ9話のラスト、ニヒトがリヴァイアサン型を海中から釣り上げ、ザインが同化するという場面があるけど、おそらく総士がザインに食べさせるためにリヴァイアサン型を釣り上げたのだろう。また、竜宮島のファフナーに乗る時は機体と一体化することを求められるが、総士は明らかにニヒトと一体化していない。ニヒトのコアは自我のある生物になっているので、パイロットと一体化することはできない。自我があるということは当然、名前が必要になる。総士が名付けたニヒトの名は「虚無の申し子」。
・総士と甲洋
一期と『EXODUS』20話で甲洋は過去に総士が行った行為を島民の前に示し、その反応を表面化し、判断を仰ぐという役割を担っている。一期はフェストゥムと化した甲洋がカノンを同化しようとする場面が描かれたが、これは子どもの時に総士が一騎を同化しようと事件と重なる。
『HEAVEN AND EARTH』のラストで総士は体を取り戻して帰ってきたが、体がフェストゥムのものである上に、本当に本人であるのかという疑問があった思う。『HEAVEN AND EARTH』で帰ってきた後の経緯は『EXODUS』DVD/BD 2巻付属ブックレットで以下のようなに説明されている。
総士は、来主操と、彼の属するミールの助けによって竜宮島に帰ってきた。だが、一度失った肉体は取り戻せず、人の心とフェストゥムの体の融合体という、極めて状態に生まれ変わった。それは、以前なら敵と見なされていた存在。総士はそんな自分でも暖かく受け入れてくれた島の人々に恩返ししたいと重い、自分の体を研究材料に、同化現象の治療薬の開発に挑んでいる。
映像では島民が総士を受け入れる過程は描かれなかったが、それは一期同様、甲洋を通して描かれることになった。
イアン「マークフィア? 信じられない」
小楯「甲洋君? 本物なのか」
甲洋「ショコラ」
『EXODUS』20話
この場面では保とイアンがマークフィアから出てきた甲洋が本物であるのかという疑問を抱き、ショコラが甲洋本人であると認定している。この後、甲洋が自分の家である喫茶楽園を訪れる場面では、外に特殊部隊が待機していた。
『EXODUS』DVD/BD 2巻のブックレットの文章を読んだ後、『HEAVEN AND EARTH』で描かれたように帰ってきた総士の姿を見て同級生と後輩は大喜び、おそらくソロモンが反応し、CDCの大人は頭を抱えるという様子を想像していたのだけど、フェストゥムになった人が人の姿をして帰還した時の島民の反応を甲洋を通して描かれるとは思わなかった。
甲洋「まだ、そこにいるよ」
剣司「甲洋」
甲洋「あの子の心が残ってる」
零央「そんな…。美三香、なのか」
『EXODUS』20話
「エインヘリヤル・モデル、永遠に戦い続ける戦士たち」という言葉通り、同化現象で肉体が結晶化して砕け散った後に心だけは残る。エインヘリヤル・モデルは肉体を失い心だけになった人でも操縦できる機体。
ふと思い出したのは、パトリス・シェロー演出(※1)のワーグナーの楽劇「ワルキューレ」第3幕冒頭、ワルキューレたちがヴァルハルへ連れて行く戦死した戦士たちを集めている場面。
この映像は第3幕全曲ですが、該当する場面は「ワルキューレの騎行」として知られている第3幕の前奏曲なので、該当するのはこの動画の冒頭5分ほどの映像。
『EXODUS』18話は「永遠」、「戦士」という言葉で島と派遣組を繋いでいたけれど、やはり島とシュリーナガルのミールが人類に提示する永遠はどこかいびつだ。総士の言う「人として生きることが僕らの意思です。島のコアが生と死をミールに教えたように」(『EXODUS』18話)という言葉からも遠ざかっているように感じる。
前出の「ワルキューレ」ではブリュンヒルデがジークムントをヴァルハルの戦士として迎えに行くが、ジークムントはジークリンデと共にいることを望み拒否。結果、ジークムントはフンディングとヴォータンに殺される。しかし、ジークリンデはジークムントとの子をみごもっていたため、志半ばで倒れたジークムントの意志はその子どもに委ねられる。
・美三香の心
甲洋が「あの子の心が残ってる」と言って、コックピットから美三香の心を取り出す場面は一期26話の未公開シナリオ(※2)にあるこのシーンを思い出した。このシーンの前半の一騎と総士の最後の会話は映像化されましたが、後半は映像化されていません。
□海上・上空──マークザインの飛行
総士「僕は……ここにいる。いつか再び、出会うまで……」
一騎「総士ぃーっ!!」
マークザインの手の中で、ばらばらに砕け散るジークフリード・システム。
結晶の固まりがこぼれ落ちてゆき──海に落ちる。
海中へと沈む、ジークフリード・システムの破片と結晶に狭間で──金色に輝くもの(小さな総士のコア)が沈みゆく。
ふいに──海中に、両手を皿のようにして、総士のコアを受け止める者がいる。
甲洋が海中に現れ、総士のコアを捧げ持っている。そして、コアとともに消える甲洋。
□上空
空中に、紅音と、金に輝くコアを両手に捧げる甲洋がいる。
甲洋「おやすみ……総士。また…会うときまで…」
紅音、はるか彼方を見やる。
紅音「行こう……。かつてない発展のために」
ふっつりと姿を消す、紅音と甲洋。
以下は一期26話の最後の場面のシナリオに添付されているコメントより引用。
ここで紅音の言う「発展」は、かつて日野洋治が教えようとした概念であり、紅音、甲洋、総士に新たな未来が拓かれようとしていることを示している。
一期26話の未公開シナリオを読むと、『EXODUS』終盤で甲洋が重要な役割を演じることになるのは必然の流れ。一期24話で乙姫が甲洋について「あの子は自分に近い存在の元で戦うことを選んだの」と言っていたけれど、今や『HEAVEN AND EARTH』で自らの役割を終え島に還った紅音の意思を継ぐ者である。
甲洋「守るよ、みんなの帰る場所を」
『EXODUS』20話
『EXODUS』9話の一騎の台詞「守るよ、みんなを」と思い出した。
・N48 E135
カノンが甲洋に残したメモに記載されていた座標。現在の地図だとハバロフスク付近で、島外派遣組が現在目指しているエリアである。フェストゥムとの戦闘で消失した土地が多いので、参考として一期のリーフレット、DVD-BOXとBD-BOXのブックレットに掲載されている世界地図を掲載。
ナレイン「我々の目的は、ミールを人類にとって有用なものへ変化させることである。
それこそ人類が平和を取り戻すただひとつの道なのだ」
『EXODUS』20話
「人類にとって有用なもの」はミール側のことを考えない、人類の独りよがりの言葉のように感じる。しかし、ミールを変化させることが共存への道なのか。
ふと「DEAD OR ALIVE」の歌詞のこの一節を思い出した。
世界と君が 生命をやり直すために
ハインツ「広域通信だ。敵が来る」
『EXODUS』20話
広域通信がフェストゥムを引き寄せることは『EXODUS』6話で語られていた。
溝口「広域の電波通信を使ってやがる」
オルガ「フェストゥムを引き寄せるはずなのに。
敵が全くいないなんて」
溝口「あのミールのご加護ってわけか」
『EXODUS』6話
ラストの総士のモノローグは竜宮島にいる織姫の「犠牲」という言葉でつないでいる。
史彦「コアの忍耐にも感謝する」
織姫「犠牲になったのはわたしじゃない」
史彦「犠牲?」
総士「多くを犠牲にして。
さらなる犠牲とともに旅の終わりを迎えようとしていた」
『EXODUS』20話
※1 パトリス・シェロー(1944-2013)はフランスの演出家。「ニーベルングの指環」は1976年から1980年にバイロイト音楽祭で上演された。
※2 「蒼穹のファフナー 完全ビジュアルブック」(メディアワークス)に掲載された「冲方丁未公開シナリオ集」より引用。