蒼穹のファフナー EXODUS 第18話「罪を重ねて」

星の周りには星雲があるけれど、僕らの場合、それは家族だった 僕らを育て、今は生きる基盤でもある家族 現在の家族と、もう逝ってしまった人たち(※1Neil Peart

 

カノン「もういかないといけないんだ」
 一騎「どこへ行くんだ」
 総士「人類が知る限り、この宇宙で存在が無にのまれても、
    存在した情報は失われない。
    事象の地平線は、存在があったという情報の分だけ広がる」
 一騎「誰かがいなくなるたびにそいつがいた証拠が世界に残るって言うのか」
    待て、カノン」
カノン「ありがとう、一騎。
    さようなら」
『EXODUS』18話

 ドラマCD『THE FOLLOWER』で弓子が話していたけれど、美羽は「島の記憶の一部を見ることができる」。17話で半覚醒状態の里奈が広登の存在を感じ、彼のメッセージを祖母に伝えたけど、いなくなった島の住人は一番強い思いを、生と死の狭間といえる夢の中で伝えることができるのだろうか。一騎はカノンの存在を通して、14話の総士の言葉の意味を理解する。

 

 イアン「かつてないファフナーの設計です。
     これまでは一体でも多く敵を倒すか、一人でも多く生還させるか、
     どちらかが問題でした」
西尾行美「これは根本的に違う。
     パイロットの消耗を防ぎ、1分でも長くファフナーに乗せる、
     そういう機体さ」
『EXODUS』18話

 イアンの台詞は一期13話、日野洋治の「一体でも多く敵を倒すのではなく、一人でも多く兵士が生き残れるためのね」を踏まえたもの。パイロット引退後にカノンが選んだ進路のエンジニアというのがここで生かされている。

 

西尾行美「ゴルディアス結晶が敵と味方、両方の命の情報で成長する」
『EXODUS』18話

 『HEAVEN AND EARTH』で芹がフェストゥムの墓標を作っていた場面を思い出す。その時、真壁司令は「敵の死は、刻みこむしかない、永遠に」と言っていた。『EXODUS』11話で芹と山へ虫取りに来た織姫が芹の作った墓標を見る場面がある。これを見た時の織姫の表情は見えない。

 

西尾行美「この40年で最大の進化だろうね」
『EXODUS』18話

 『EXODUS』第1話冒頭、総士のモノローグ「人類の理解を越えた力を持つ彼らがこの星に現れてから40年、世界の大半が戦場と化した」と年数が一致。総士がこのメッセージを残した時期についていろいろ推測されていたけど、西尾博士の言葉と一致するので、おそらくこの戦いが終わった直後なのだろう。

 『EXODUS』18話は2151年で40年前は2111年。公式サイトと一期BOXのブックレットの年表を確認したけど、この年についての記載は一切なし。この後、作中で補足されるのか。それとも放映終了後に出る設定資料で明らかにされるのか。

 

 小楯保「パイロットとファフナーのコアを
     クロッシングさせるシステムが構築されているんだ」
 イアン「ゴルディアス結晶や島のミールと
     なんらかの情報を共有するためと思われます」
西尾行美「ゴルディアス結晶が敵と味方、両方の命の情報で成長する。
     それが今のファフナーのトリガーにもなっている」
『EXODUS』18話

 もしかしてザインはすでに「パイロットとファフナーのコアをクロッシング」している状態なのでは? 敵と味方を情報を蓄積したゴルディアス結晶がファフナーとも関係しているというのは、同化された思念が渦巻くニヒトを思い出す。パイロットへの負荷が半端ないとはいえ、フェストゥムに近いザインとニヒトがファフナーとしては完成された存在なのか。

 

織姫「わたしとこの島はあなたたちの犠牲で成り立っているということ」
『EXODUS』18話

 島のミールが一期で乙姫の存在を通して死を学び、『EXODUS』では生を理解し始めている。人類は地球上の命で生きていることを学び、その結果、島のミールとコア(織姫)は人とフェストゥムの命で生きているということ。ただし、島のミールが頂いた命の記憶は残る。

 島のミールだけではなく『EXODUS』1話でナレインが「人類がどのようにして命を保つか、学習したか、フェストゥム」と言っているように、北極ミールから分化したフェストゥムもそのことを知ってしまった。

 そういえば『EXODUS』16話で芹と織姫が次のような会話をしていた。

 芹「周りの命を同化して生きようとするって」
織姫「どんな命も他の命を奪って生きてるわ」
『EXODUS』18話

 芹のSDPは島が学んだ「生」をそのまま体現している。自分が生きるためには躊躇なく自分以外の周りにある命を奪う。

 

総士「群れが共鳴した」
『EXODUS』18話

 総士はフェストゥムの感覚を感じることができるようなので、この場でただ一人、フェストゥム側から視点で話している。

 

  一騎「暖かい」
ナレイン「君の因子と共鳴しているからだ」
  一騎「共鳴…。俺とこいつらが」
『EXODUS』18話

 一騎がミールと共鳴できるというのは一騎の母、紅音から引き継いだ同じ能力か。

 ファフ辞苑5(※2)の【真壁紅音と麻木史彦】の項に次のような文章がある。「瀬戸内海ミールと共鳴した紅音は、敵フェストゥムの位置や思考を感じることが出来る」

 

ナレイン「君なら永遠の戦士になれるだろう。
     我々のミールの祝福を受ける気はないかね。
     命の果てを越えて生きるために」
  一騎「祝福…」
  溝口「おいおい、なんの話だよ」
  総士「人として生きることが僕らの意思です。
     島のコアが生と死をミールに教えたように」
『EXODUS』18話

 「俺は、遠見みたいにファフナーに乗り続けられない」(『EXODUS』13話)という一騎にとって、みんなを守るために戦い続けられるというのは極めて魅惑的な言葉。一期のラストでフェストゥムの祝福(※3)を受け、エメリーから永遠の存在(※4)だと指摘された総士が諌めているように、それはかつて竜宮島のミールが「人を死から守ろうとして生を奪った」(一期22話)のと同じように、シュリーナガル・ミールがミールなりの考えで生きながらせようとしているだけ。一騎が島のコアから突きつけられた言葉は「あなたはどう世界を祝福するの」(『EXODUS』4話)。祝福を受ける側ではなく、祝福をする側になれということ。

 島側でも「エインヘリヤル・モデル、永遠に戦い続ける戦士たち」という言葉が出てきて、「永遠」と「戦士」という言葉で繋いでいるのが引っかかる。

 

総士「なにをしてるんだ」
一騎「髪を切ろうと思って」
総士「切る気がしないんじゃなかったのか」
一騎「自分だけ命を守ってる場合じゃない」
『EXODUS』18話

 結局、一騎は『EXODUS』5話Cパートで短冊に「生きたい」と書いた気持ちのまま、ここまで来てしまったのだと思う。その一騎の気持ちを変えるきっかけとなったのはこのエピソード冒頭、夢の中でのカノンと会話。一期17話で一騎と会話してからカノンが変わり始めたけれど、『EXODUS』では17話でのカノンの行動が一騎を変えるきっかけとなった。一期のカノン同様、『EXODUS』での一騎は自らの意思は希薄で、ザインに乗って戦うという命令を待つ人間だった。結果、一騎とカノンの立ち位置が一期と『EXODUS』で反転されている。

 

住民1「新国連の連中が」
住民2「俺たちを殺す気か」
住民3「舐めんな」
住民4「人殺し」
『EXODUS』18話

 『EXODUS』15話の時に一緒に移動する市民の感情が描かれていないと指摘したけど、これをやるために控えていたのかな。人類は自らの生存が脅かされれば、同じ人類を殺すことも厭わない。『EXODUS』ではフェストゥムが人類を攻撃する方法がより人に近くなり、残虐になったけれど、人類軍の内部で何度も繰り返された、自らと考えの違うものは排除して構わないという考えも学んでしまった。

 

  美羽「こわいよエメリー、こわいよ」
エメリー「心を塞いで、怒りを入れないで」
『EXODUS』18話

 美羽は人の怒りの感情も感じ取ってしまうが、フェストゥムが人間に向けてくる感情そのものが人から学んだものなので当然か。

 

総士「遠見は航空、カノンは工学、剣司は医療、要は教育、
   みな進路を決めた」
一騎「総士は研究か、向いてそうだな」
総士「お前は喫茶店で料理か」
『EXODUS』1話

 剣司以外はファフナーのパイロットに復帰したものの、一期のメンバーは選んだ進路を全うすることになりそう。17話で剣司は新同化現象の原因を発見し、カノンの最後の仕事はファフナーのエンジニアとしてのものだった。咲良は後輩と新人パイロットの教育係。真矢は「一騎くんのいる場所を守る」と航空の道を選んだけど、戦闘機に乗るということはで修羅の道に進む可能性があり、それも覚悟して選んだ道なのだと思う。

 2クール目のキービジュやOPで真矢はアルヴィスの制服姿だけど、『EXODUS』5話でカノンが「真矢もレギュラー・パイロットから外れる。これが最後の任務になるだろう」と言ってる。この言葉が伏線になるのだろうか。

 

※1 2013年、Rushのロックの殿堂入りセレモニーのスピーチ。

※2 一期DVD5巻リーフレット、DVD-BOX、BD-BOXに掲載。

※3 一期26話、総士の台詞「そして僕は、彼らの祝福を、存在と無の循環を知った」

※4  『EXODUS』14話、エメリーの台詞「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」