『EXODUS』17話まで見て『EXODUS』全体で見えてきたものについての覚書。
・一期とEXODUSのシリーズ構成
EXODUS | 一期 | |
島のコアの目覚め | 5話 | 14話 |
銭湯 | 11話 | 21話 |
合宿 | 11話 | 21話 |
1クール目を見終わった時は一期中盤にあった島のコアの目覚めから銭湯、合宿でパイロットが一致団結するまで、つまり一期21話までの内容を描いたので、2クール目は一期の構成から離れると思っていた。
しかし、2クール目を見ると一期の出来事は物語の展開に合わせて順不同に使っていることが判明。
EXODUS | 一期 | |
合同葬儀 | 16話 | 2話 |
夏祭り | 17話 | 20話 |
一期でカノンに焦点の当たった17話が『EXODUS』でもカノンが主役の回であったことを踏まえ、一期と『EXODUS』の構成を比較すると一騎、総士、カノンが主役になる回は一期と同じことが判明。ただし、一期からいろいろ反転させられているので注意が必要。
一期 9話、10話 | 一騎と総士が行き違い |
EXODUS 9話、10話 | ザイン、ニヒト初戦闘 |
一期 14話、15話 | ザイン誕生 |
EXODUS 14話、15話 | ザイン、ニヒト二度目の戦闘 |
一期 17話 | カノンが島ととも自爆を命じられる |
EXODUS 17話 | カノンが島の未来をつかむために命を使う |
『EXODUS』18話のサブタイトルは「罪を重ねて」。一期18話が茶番裁判の回だったことを考えると真矢がメインの回だと予想される。
これで1クール目の展開が遅かった理由が判明。視聴者を飽きさせずにザイン、ニヒトの戦闘を9話まで引っ張ったけど、そこまで溜めただけに9話が盛り上がったんだと思う。そういえば、冲方丁はアニメージュ2015年3月号のインタビューで「6話から本編突入という感じです」と言っていたけど、6話で起きたことと言えば、一期は翔子の死、『EXODUS』では織姫の目覚め。対称的な出来事が本編をスタートさせている。
・竜宮島、人類軍、フェストゥム
SFはわたしという一人称の世界、あなたがいるという二人称の世界、社会を構成する三人称の世界の先に、人類という第四人称が存在することを教えてくれる。
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』後書き
一騎が個であることを教えたのは総士(竜宮島)、カノン(人類軍)、操(フェストゥム)の三人。これは一騎が友達、人類、非人類という順序で視野を広げ、相手を理解していったことを示している。しかし、一騎が個であることを教えた者はそれを証明するかのように、祝福したり何かを助けるために自己を犠牲にしたために全員がいなくなった。
真矢が一期18話で「お父さんはフェストゥムとどう違うの」と言っているように、人類軍とフェストゥムはある意味似た者同士。そのため、『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』では両者の考えが多様化していることが語られた。まず『HEAVEN AND EARTH』では「ミールは己の死を以って、個体であることを与えた」ため、フェストゥムが多様化し、操のように人間を理解したいと思うフェストゥムが現れた。そして『EXODUS』では人類側の考えが多様化し、フェストゥムと会話できるエスペラントが出現。人類軍の中には竜宮島との共闘を考える者まで現れ始めた。こうなると人類軍とフェストゥムの双方から、これまでの敵と手を結び共存を考え始める者が出てくるのは必然の流れ。新しい存在が来るにあたって、世界中のミールは皆、滅びではない、未来を探しているのだから。
・生者の記憶、死者の記憶
ドラマCD『THE FOLLOWER』でエメリーが「あなたの島のミールはすべてを記憶して保ち続けるんですね」と言っているけど、広登は島外派遣ではジャーナリストとして記録する人だった。また、カノンの瞑想訓練の海は大海原を進み続ける船で小さな炎を引き連れている。その炎は亡くなった人の魂で、真矢曰く「ずっと覚えてるんだ。亡くなった人たちのこと」。(※1)つまり、生者の記憶を記録するパイロットと死者の記憶を忘れないパイロットの記憶が島のミールと一つになった。そして、カノンが残した新しい機体の名はEinherjar Model。(※2)この構図に気がついたとき、いろいろと腑に落ちた。
※1 ドラマCD『GONE/ARRIVE』、及び『Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』を参照。
※2 『エッダー古代北欧歌謡集』(新潮社)収録のスノリのエッダ「ギュルヴィのたぶらかし」にはこう書かれている。「戦場で倒れた者は一人残らず彼(オーディン)の養子だからだ。オーディンは彼らをヴァルハラとヴィーンゴールヴに送る。彼らはそこでエインヘルヤル(死せる戦士たち)と呼ばれる」 つまり、オーディンの指揮下で戦う、戦場で死んだ戦士がエインヘルヤル。ワーグナーの楽劇『ワルキューレ』にはワルキューレの一人、ブリュンヒルデがジークムントに選ばれた戦士ゆえに戦いで死ぬ運命だと告げる場面がある。