【蒼穹のファフナー EXODUS】シュリーナガルの人々

 ベルリン・ドイツ・オペラで2021年4月1日から72時間無料で配信されていたワーグナーの歌劇『リエンツィ』(シュテルツル演出)を視聴。14世紀のローマの政治家を題材にしたオペラが『EXODUS』のシュリーナガルの住民の考えを理解するヒントを与えてくれた。

 14世紀のローマを舞台にした作品ですが、今回は舞台が第三帝国に、主人公が総統に置き換えられていました。第1幕ラスト、リエンツィが護民官になると、バラバラの服装をしていた人々はリエンツィ支持を表すかのように制服に着替え、以後、統制の取れた集団として描かれていました。その後、戦争が始まり、民衆が疲弊していく中(舞台には死者を表すかのように十字架が立っていく)、リエンツィは側近とともに地下壕に避難。物語は人々がリエンツィを撲殺したところで終わります。

 

・シュリーナガルの住民

 新国連の支配下の世界ではジャーナリズムがなく、自分の考えを持つことも諦める世界(※1)であるため、シュリーナガルに新しく赴任して来た人類軍の将軍がミールと共存することを表明した時、シュリーナガルの住民はそれに対して自分の意見を言うことができなかった。ナレイン将軍は「今の世にジャーナリズムが生きているとは」(※2)と言いながら、武力を使ってシュリーナガルの住民に自分の考えを押し付けていたのである。

   真矢「敵じゃない。
      人から守ってるんだ」
『EXODUS』6話

 フェストゥムの襲撃でシュリーナガルは壊滅状態となり、住む場所を失った人々はナレイン将軍の命令に従い、人類軍の基地があるダッカへの移動を開始した。しかし、ダッカを目前でシュリーナガルの住民は人類軍から攻撃された。人類軍から見捨てられたことを知った後、自分の考えで行動し始める人が現れ始めた。

   総士「新たな道が示された朝、大勢が失望に打ちのめされた。
      人類からの敵意と荒野への道を受け入れられず、
      安らぎを求める者もいた」
『EXODUS』15話

 ナレイン将軍はシュリーナガルの住民を説得して、旅立たせた。

   総士「命を断つ者、来た道を戻ろうとする者、
      絶望の安らぎをぬぐい、苦難へ進ませるため一日が費やされた」
『EXODUS』15話

 しかし、先の見えない旅はシュリーナガルの人々が自分で行動して考えるきっかけを与えた。キャンプに新国連のスパイが入り込み、新国連のスパイがシュリーナガルの住民の前に現れた時、シュリーナガルの住民は誰から命令されるのではなく、自主的に新国連のスパイを攻撃し始めた。これは新国連に支配され、ナレイン将軍の指示に従っていたシュリーナガルの住民の大多数が自分で考えて行動し始めたことを表していた。

  市民1「新国連の連中が」
  市民2「俺たちを殺す気か」
  市民3「舐めんな」
  市民4「人殺し」
『EXODUS』18話

 シュリーナガルの住民が自分で考えて行動することができるようになった結果、希望の地へ行くという望みを他人に託す人々が現れ始めた。

   総士「やがて多くの者が歩みを止めた」

  アニラ「通信不能、離脱しました」
 ナレイン「自ら囮に……」
『EXODUS』21話

 シュリーナガルの住民は多くの犠牲を払って、竜宮島に到着し、その後、希望の地である海神島に移住した。

   総士「こうして僕らは、最果ての地に到着した。
      5027名の生存者、6機の輸送機、15機のファフナー。
      それが、1万7千人もの犠牲によってたどり着いた、すべてだった」
『EXODUS』21話

ジェレミー「5001名の生存を確認。
      ペルセウス中隊は9割が死亡」
『EXODUS』22話

 シュリーナガルから海神島までの大行路を生き残った者は心身共々、新国連の支配下から抜け出し、自分で考えて行動することのできるようになった。つまり、生き残ったシュリーナガルの住民は海神島に到着した時、人間になったのである。

 

・杖

 シュテルツル演出の『リエンツィ』第4幕、地下壕に避難したリエンツィが杖をついている姿を見て、『THE BEYOND』3話、杖をついている真壁司令の姿を思い出してしまった。

 「杖」は時間の経過を表すのと同時に組織のトップが老いたことを表す小道具だったのです。

 

 

※1 『EXODUS』3話、カノンの台詞「自分の考えを持つことも諦めていた」

※2 『EXODUS』5話。