ドラマCD「STAND BY ME」の感想

 ドラマCD『STAND BY ME』の感想。数年ぶりに聞いたけど、あまりにも面白くて、途中何度か笑ってしまった。そして、アニメの初期は日常会話がつまらなかったことを思い出してしまった。

 

 アニメだと3話Aパートで描きべき内容を冲方自身が補完したエピソード。この結果、一騎の次のパイロットが選出され、訓練を始めることになる。そして、翔子と甲洋の描写を追加。このドラマCDを聞いて翔子と甲洋がどういう性格なのかよくわかった。翔子の思いは真矢が引き継ぎ、真矢が言葉にしているので、戦いが始まる前の翔子の気持ちが伝わってくるけれど、戦いが始まる前の甲洋の描写は少なく、元々どういう性格だったのか今ひとつよくわからない。翔子はファフナーに乗った後の行動の方が悪い意味で印象に残ってしまった。一方、甲洋は翔子が死んだ後、翔子を助けられたはずと一騎を責め、俺なら友達を助けられるとファフナーに乗るいう部分は印象に残っている。

 このドラマCDを聞くと、『EXODUS』4話は冲方によるリベンジだと思った。もちろん新人パイロットの置かれている状況が最初の作品とは全く異なるので、やり直しではない。先輩がいるっていいなあ。

 アニメではパイロットの意思確認を徹底していないけど、ドラマCDで補完。

一騎「みんなや、みんなの父さんや母さんは何も言わないのか」
総士「パイロット候補者たちの意志は確認済みだし、
   大人たちにとってこの状況は僕らが生まれる前からの了解事項だ。
   今更、彼らの意思を問うことはない」
ドラマCD『STAND BY ME』

 

 一騎は2話で制服を来た後、一期16話までアルヴィス内で制服を着ないのが気になっていたんだけど、ドラマCDの最初で一つのドラマにしてしまった。冲方は私がアニメで気になったところを補完してくれる。

総士「その前にアルヴィスの制服はどうした、一騎」
一騎「あれか。どうしても着る気になれなくて」
総士「僕も最初はそうだった。
   これまでとは全く違う常識の中で生きなければならないのだから。
   だが、制服を身に纏うことで受け入れることの最初の一歩になる」
一騎「受け入れること…」
ドラマCD『STAND BY ME』

 パイロットとして選出された後、アルヴィスに集合する。その時、アルヴィスの制服を着ている人、着ていない人がいる。真矢と翔子が抵抗なく制服を着た人。

真矢「なんで? こんなのただの服だよ」
翔子「うん、私は特別な感じがして好き」
ドラマCD『STAND BY ME』

 アルヴィスの制服を着ていない人は、総士から着替えてこいと言われる。

総士「一騎、甲洋、咲良、剣司、衛、制服はどうした。
   支給されているはずだぞ」
剣司「やっぱ着るのか、あれ」
 衛「学校にも制服ないのに」
総士「全員今すぐ予備の制服を借りて着替えてこい」
ドラマCD『STAND BY ME』

 同級生に命令する総士を想像するとおかしくてしょうがない。総士に一番突っかかっているのは咲良。この後、訓練の後の様子と対比すると面白い。あとは漫画の読み過ぎで「ロボットのパイロット! 秘密基地!」と盛り上がる衛がいいキャラである。衛は精神的も強いし。

 

 この後、パイロットとしての訓練に入るけど、操縦ではなくメディテーション訓練である。

総士「お前たち自身の心を体験する
   その具体的なイメージとして、海が現れる」
剣司「海? 泳ぐのか」
総士「仮想現実の海だ
   その中を自由に行動できれば第一段階はクリアだ」
ドラマCD『STAND BY ME』

 ここで一騎、甲洋、剣司、衛、真矢、翔子、咲良の海が描写される。『GONE/ARRIVE』ではカノンの海が描写され、『Preface of HEAVEN AND EARTH』(※1)では総士、広登、暉、里奈、芹の海が描写がされ、一騎が最初は海の上にいたけどなんらかの理由で海に落ちたことが語られる。私は剣司の海が好きである。ここで重要なのは翔子と真矢も最初の段階の訓練をしていたという描写である。

 第一段階の訓練終了後、総士から次のような結果が言い渡される。

総士「本日の訓練により、搭乗する期待が仮決定した。
   本格的な搭乗訓練は真壁一騎と春日井甲洋のみ行う。
   羽佐間翔子、遠見真矢、要咲良、近藤剣司、小楯衛については
   予備候補生として訓練と同時にCDC勤務にあたってもらう」
ドラマCD『STAND BY ME』

 私はこれを聞いた後の咲良の反応がとても好きです。

 これを踏まえて、一期3話Bパートの戦闘訓練につながる。訓練シーンで描かれたのは甲洋、剣司、衛、咲良の4人で、翔子はCDCで弓子からオペレーターとしての訓練を受けてる。

 

一騎「なあ、俺一人じゃダメか」
総士「なんだと」
一騎「こないだだって俺たちだけで倒したじゃないか」
ドラマCD『STAND BY ME』

 一騎はこの頃から戦うのは自分一人だけでいいと思っているので、このドラマCDの中で同級生になぜパイロットになるのかと聞いて回る。

一騎「衛、なんでパイロットなんかになろうとしてるんだ」
 衛「なんでって、咲良がやるって言って、剣司もやるって、だから」
一騎「自分で決めたんじゃないのか」

 衛「もし本当に危ないんだったら、
   それこそ一緒にいなきゃ、友達だから」
一騎「一緒に…」
 衛「なにもできないかもしれないけど、
   一緒にいることはできるから。
   一騎もそうでしょ」
一騎「俺」
 衛「総士のそばにいてあげたいんじゃないの、友達だから。違うの」
一騎「いや、違わないと思う」
ドラマCD『STAND BY ME』

 ここで衛が一騎の本心を見抜いているのが興味深い。一騎は甲洋にも聞いている。

一騎「なあ、甲洋はなんでパイロットなんかになりたいんだ」
甲洋「そりゃあ、義務だし、親が喜ぶし、
   それに一緒にいたい相手がいるし、な」
一騎「一緒にいたい相手って」
甲洋「べ、別に、みんなのことだよ」
ドラマCD『STAND BY ME』

 

 今聞くと完全に総士の視点で見てしまう。総士が同級生に冷酷に命令する様子を聞いていたら、12話の総士の台詞「全員、コックピットからたたき出すぞ」を思い出してしまった。

 アニメを先に全部見て、自分なりに問題点を洗い出したあとなので、ドラマCDでどこを補完したのかがわかりやすかった。ちなみに発売日は2005年10月26日。『RIGHT OF LEFT』の放映前ではあるけど、TV放映終了後も追いかけていた熱心な人じゃないと聞いていないよね。

 

※1 『Newtype Libraty 冲方丁』(2010年、角川書店)に収録。