2023年1月20日から劇場先行上映された『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』の感想です。
●居場所
一騎は千鶴から余命を宣告された後、史彦に一人になりたいと言って、アルヴィスを出ていきました。一騎が悩んでいる時、史彦は一騎のそばにいない人だったのでしょう。総士は島内放送を使って迷子になった一騎に対して帰宅を促しました。つまり、一騎が悩みを抱えている時、一騎のそばにいようとしたのは総士でした。
この事件を通して、真矢とカノンが
一騎「出前、行ってくる」
『EXODUS』3話
『EXODUS』3話、一騎は言葉を残して喫茶楽園を出ていきました。『BEHIND THE LINE』では一騎が家に帰ってくるところまで島内に放送されたことから、真矢は一騎が総士のところに行ったので心配する必要はないと思ったのではないでしょうか。そのため、真矢は一騎の居場所を心配することなく、客がいなくなった後の喫茶楽園でカノンと話し込んでいたのです。
『BEHIND THE LINE』の後、一騎の居場所は史彦のいる場所、つまり真壁家から総士のいる場所になったということになります。一騎は余命を宣告された時、親離れをしたのです。
●振り出しに戻る
・「THE BEYOND」
『THE BEYOND』のマリスは自分の考えを持っているが、言えない人でした。
マリス「未来を見た。
美羽がいなくなる未来を」
マリス「たとえ世界を敵に回しても、僕は未来を消すと決めた」
こそうし「早く言え、バカ」
『THE BEYOND』11話
『THE BEYOND』10話、美羽は操の言葉を聞いた後、顔を背け、下を向きました。
操「ううん、僕には平和にできる力がないから。
美羽ならそういう存在と一つになれるよ」
『THE BEYOND』10話
『THE BEYOND』の美羽は自分の考えで行動したいと思っていましたが、行動できない人だったのです。
美羽「美羽、ずっと、ママやエメリーになろうとしてた。
教えてもらった通り。
ずっとずっと。
それが正しいって思ってた」
『THE BEYOND』11話
・「BEHIND THE LINE」
『BEHIND THE LINE』では総士(自分の言葉を直接、相手に言えない人)が、一騎(他人)に頼むという、『THE BEYOND』から一歩進んだ場面がありました。しかし、一騎(他人)は総士(自分の言葉を直接、相手に言えない人)に対して、もう一歩先を示しました。
一騎「ダメだ、自分で言え」
『BEHIND THE LINE』
総士(自分の言葉を相手に言えない人)は自分で真矢(相手)に言葉を伝えました。
・「EXODUS」
『BEHIND THE LINE』の先にあるのが、躊躇することなく、自分の言葉を相手に言うことのできる人です。それは『EXODUS』1話に登場しました。
ナレイン「こちらC300、コード、ケイトス。
人類軍南アジア艦隊所属、特殊航空連隊ペルセウス中隊」
真矢「ケイトスへ。
誘導に従ってください」
ナレイン「アローズへ、全面的に従う。
かわりに貴艦の指導者に伝えてほしい。
我々の望みはお互いの希望を出会わせることであると」
『EXODUS』1話
ナレインが言葉を使った人と人のコミュニケーションのゴールということになります。
●「EXODUS」のテーマ
私にとって『BEHIND THE LINE』は『EXODUS』のテーマ、つまり『EXODUS』を理解するために必要なものが明確になった作品でした。『EXODUS』のテーマこそ、一期から『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』以降を分断するものそのものでした。
●一騎の物語の終わり
『BEHIND THE LINE』で一騎は総士に自分がいなくなった後のことを頼み、真矢とカノンには自分自身がやりたいことをやってほしいと言うという形で、自分から遠ざけた。『BEHIND THE LINE』は一騎の終活が終わったところで終わったので、『EXODUS』と『THE BEYOND』はみんなが一騎がいなくなることを受け入れる物語だった。
『EXODUS』で一騎は主人公の位置から一歩下がり、『THE BEYOND』ではさらに一歩下がった。『THE BEYOND』ラストで一騎は甲洋と一緒に竜宮島から旅立ったが、それは一騎が『蒼穹のファフナー』という物語から去ったことを意味しています。
一騎はみんなの心を傷つけないようにして、ひっそりと姿を消したのです。