「蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE」初見の感想

 2022年12月27日、「『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』完成記念プレミアム上映会&総士生誕祭」で『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』を見た時の感想です。

 

●雑感

 ファフナーのパイロットは本来の自分とは別の存在になることで「戦う人間」になる物語だったが、『BEHIND THE LINE』では本来の自分とは別の存在である「戦う人間」を自己崩壊に導き、本来の自分に戻る過程を描く物語である。

 一期1話で父を失った咲良と一期23話で母を失った剣司は「死」を理解しているため、早い段階で「戦う人間」を自己崩壊に導くことができた。一方、思春期に入る前に家族を失ったカノンと父が亡くなったという知らせを聞いても「お父さん死んだらしいって聞いても実感なくって」と言った真矢は「死」を理解していないため、なかなか本来の自分とは別の存在である「戦う人間」を自己崩壊に導くことができない。

 『BEHIND THE LINE』を見終わった後に思い出したのは、『サラエボの叫び』(2017年)という映画でした。1994年12月14日、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時のサラエボで行われたコンサートについてのドキュメンタリー映画ですが、『ファフナー』と同じくある日突然、自分の住んでいる場所が戦場になった子どもたちの物語でもあります。

 

●不確定な未来

 『HEAVEN AND EARTH』の時、一騎は史彦にこう言っていました。

一騎「ここで一緒に住むとか、遠見先生と」
『HEAVEN AND EARTH』

 『BEHIND THE LINE』では遠見家で史彦が千鶴と遠見家で食事をしているシーンと総士が一騎の部屋にいるシーンが描かれたことから、『HEAVEN AND EARTH』の時の一騎の言葉とは異なり、一騎ではなく史彦が家を出るという形になりました。

 

 『BEHIND THE LINE』で一騎は総士に灯籠を流してほしいと言っていましたが、実際に灯籠を流したのは総士ではなく一騎でした。

 『HEAVEN AND EARTH』と『BEHIND THE LINE』で言った一騎の言葉と実際に起こったことが違うことから、その人が決める瞬間まで未来とは不確定なものなのです。

 

●真矢と一騎

 『BEHIND THE LINE』の終盤、一騎は剛瑠島で働くという真矢の選択を後押ししたこともあり、真矢は喫茶楽園から出ていく一方、一騎は喫茶楽園にとどまることを選びました。

総士「遠見と溝口さんは」
一騎「空にいるよ」
 暉「最近ずっとです。
   遠見先輩と働けると思ったのに」

総士「お前は喫茶店で料理か」
一騎「意外に向いているよ」
『EXODUS』1話

 それから6年後の『THE BEYOND』12話、真矢は一騎とは一緒に行かないことを選びました。ここでは『BEHIND THE LINE』とは逆に真矢が喫茶楽園にとどまり、一騎が喫茶楽園を出てきました。

真矢「私じゃ一騎君のいる場所には行けないから、
   ここで帰る場所を守ってるね。
   たまには帰ってきてね、竜宮島に」
一騎「約束するよ」
『THE BEYOND』12話

 『BEHIND THE LINE』の終盤で真矢は一騎の言葉とともに喫茶楽園から出ていったことを考えると、『BEHIND THE LINE』の終盤で一騎は真矢から離れていたのです。『BEHIND THE LINE』を見た後、私は以下の台詞を思い出しました。

乙姫「とっくの昔にあたしから離れていたくせに」
一期22話

 

●広登

 広登は『BEHIND THE LINE』でファフナーを降りた後のことを考え始めていました。

広登「俺らも第二種任務、決めないとな」
『BEHIND THE LINE』

 そのため、1年後には悩むことなくメットを美三香を渡すことができたのです。

広登「ほら、俺が先輩から受け継いだものだ。
   大事にしろよ」

広登「ファフナーに乗れるのもあと数年だろ。
   今のうちに受け継いでもらわないとな」
『EXODUS』1話