「蒼穹のファフナー THE BEYOND」ティザーPVの感想 Part1

 The beyond――定冠詞がつくので名詞ということになる。Wiktionaryで “the beyond” の意味を調べると、The unknown、The hereafter となっている。ドラマCDのタイトルが「NO WHERE」、「NOW HERE」だったことを考えると、この後に hereafter が来るというおもしろい流れになっている。

 

 1月6日18時に公式サイトでティザーPVが公開。皆城総士生誕祭で上映された時に見ましたが、さすがに情報量が多すぎて、一度見ただけでは消化しきれませんでした。この記事はイベント会場でPVを見た直後のメモを元にして書きましたが、サイトでのPV公開がイベントの8日後ということもあり、いろいろ考える時間もありました。

 

 『EXODUS』の発表映像(※1)での能戸総監督の「そのタイトル通り、新章に突入します」という言葉が引っかかっていて、『EXODUS』はもっと大きい物語の序章だったのではないだろうかと考えていたところでした。そのため、最終的な決着を先送りした『EXODUS』の続編をやるというのは予想通り。ぶっちゃけ、一期から『EXODUS』までに出てきたファフナー・パイロットの子どもたちは物分りのいい優等生ばかりなので(親の考えに意義を申し立てたのは一期10話の広登くらいか)、ファフナー・パイロットとして選ばれた子どもが反抗するというのはある意味新鮮。一騎たちと後輩組はある日突然、それまで信じていた価値観が崩壊してしまい、親に反抗している場合ではなくなってしまったので、反抗期がなかったというのも当然か。そう考えると、恰幅のよくなった剣司の姿を含め、海神島での生活は割と平穏だったのかも知れない。しかしながら、世界が危機的状況であることに変わりはないわけで、親への反抗は重すぎる運命を背負った総士故に許されることなのかもしれない。

 

 PVで制作スタッフが発表。
  製作総指揮:中西豪
     脚本:冲方丁
     監督:能戸隆

 ファフナーを作っている三人は続投。ただし、能戸さんがシリーズで初めて監督になった。羽原さんは『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の監督なので、外れるのは想定内。制作スタジオは違うけど、ヤマトとファフナーを平行してやるとは思わなかった。XEBECzwei制作の『ブラッククローバー』のOVAの監督が能戸さんで正直びっくりしたんだけど、思えば『BEYOND』の前哨戦だったのかもしれない。(※2

 

・美羽がファフナーのパイロットになっていた
 ドラマCD『THE FOLLOWER』では自分の意志で行動する姿が描かれていたので、あまり違和感はなく、やっぱりだと感じた。とは言え『EXODUS』21話の総士の言葉「僕らには新たな平和を作る術がない。世界を導く者たちを、対話の力を守ろう」を思い出すと虚しくなるのも事実。

 

・Mk-Eins-re:Specter
 ein ではなく eins(発音はアインス)が英語の one に相当する単語ですが(※3)、『RIGHT OF LEFT』ではマークアインと呼ばれていた。(※4)マークアインが出てくる一期23話と『RIGHT OF LEFT』を確認したけど、モニターに表示されていないので綴りは不明。eins には文語で「同一の」という意味があるのが引っかかる。Specter は英語で「幽霊」を意味する。

 

 人間が子どもを得るために必要な恋愛、結婚、妊娠、出産という過程は剣司と咲良、道生と弓子という二組のカップルに振られ、主人公である一騎と真矢は恋愛という要素から徹底的に遠ざけられた。(剣司と咲良は一騎と真矢の同級生、一騎は道生のデータを使って作られたザインのパイロット、弓子は真矢の姉と、いずれも一騎と真矢に深く関わりのあるキャラクターである)その結果、一騎と真矢は恋愛、結婚、妊娠、出産という過程を経ずに『EXODUS』のラストでそれぞれが子どもを一人ずつ得た。そして『BEYOND』では、一騎と真矢はそれぞれが育てたこそうしと美羽を戦場に送らなければならない親の立場にまで達している。

 

 『BEYOND』はティザーPVで公開された内容から劇場公開作品だと思っているのですが、参考として『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』の制作発表から発表までの時系列をまとめてみた。

 『HEAVEN AND EARTH』
  2009年12月23日:公式サイトで『HEAVEN AND EARTH』の制作を発表
  2010年12月25日:『HEAVEN AND EARTH』劇場公開

 『EXODUS』
  2010年12月23日:『HEAVEN AND EARTH』
  2011年07月09日:『EXODUS』の制作を発表
  2015年01月09日:『EXODUS』放映開始

 『EXODUS』の時は『HEAVEN AND EARTH』の公開から半年後のイベントで制作発表。1話の放映は発表から3年半後なので、『BEYOND』は早くて2018年だと考えています。


 

 XEBECzweiで見られるティザービジュアルには公式サイトとは異なり、ティザーPVに出てくる言葉が追加されている。これが『BEYOND』のテーマを考える上での大きな手がかりになる。

  ここにいると定められたのなら、
  僕はその運命に抗う

 この一文を見てすぐに頭に浮かんだのが『EXODUS』のこの台詞だった。

総士「もし君がこの機体と出会うなら、それが君の運命となる」
『EXODUS』25話

 一騎はずっといなくなりたいと思っていたが、最終的にここにいることを選び、総士は定められた運命に殉ずることを選んだ。しかし、この文章からこそうしは産みの親である総士と育ての親である一騎の考えを否定する存在になることが明確になった。ドラマCD『THE FOLLOWER2』で総士と真矢が親の価値観を否定し、大人になるというエピソードが描かれたが、おそらく『BEYOND』でこのテーマをより深く描いていくことになるのだろう。そのため、大人になる過程として子どもに必要な親の価値観の否定という部分はドラマCDに回され、『EXODUS』本編で描かれなかったのだと思われる。

 『EXODUS』25話以外にも頭に浮かんだ総士の台詞があるので、メモがてら、ここに列記しておく。

総士「運命に抗うことで生まれる希望。
   それが僕らを犠牲へと駆り立てた」
『EXODUS』13話

総士「まさか島の理念を僕が否定するとはな。
   いや…織姫はとっくに乗り越えていたというわけか。
   本当のお別れですね、父さん」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』


 

 リアルタイムで追いかけると、作中のキャラクターと同じ感情が味わえるというのは『BEYOND』でも健在だった。能戸総監督がツイッターで不定期に書いていたこそうし記(※5)を読み、『EXODUS』2017年カレンダーの12月のイラストを見ていたので、ティザービジュアルとPVの映像を見た時の感想は「これほど急激に成長するなんて」(※6)だった。正直、この1年間、総士がいなくなったこととこそうしの存在を受け入れるだけで精一杯だったのに、気がついたら一騎とこそうしの幸せな時間は1年で終わってしまった(涙)

 

 『EXODUS』の2017年カレンダーの12月のイラストを見て、「仲の良い親子だが、子が親の価値観を否定して自己を確立。最終的に親子は分離する」という言葉が頭に浮かんだ。これで思い出したのが、ワーグナーの楽劇『ワルキューレ』のヴォータンとブリュンヒルデ。ヴォータンとブリュンヒルデは一心同体の親子だったが(※7)、ブリュンヒルデは人の愛に感銘を受け、父、ヴォターンの命令に背いた。その結果、ブリュンヒルデは神格を奪われ、地上で生きる人間になった。結局のところ、一騎と総士はあまりにも近すぎる存在で、放っておくとフェストゥムと同じく、一つになろうとしてしまうのだろう。一期では総士は友人である一騎と一つになろうとしたが、一騎が傷を負わせたことで二人は個を持つ別の存在になった。一騎と総士が親子になった『BEYOND』ではおそらく子(こそうし)が親(一騎と総士)の価値観の否定することで、自己を確立して、親と分離するという形になるのではないだろうか。

 

※1 2011年7月9日に行われたイベント『蒼穹作戦』で流れた映像。『蒼穹のファフナー Blu-ray BOX』に映像特典として収録されている。

※2 ジャンプスペシャルアニメフェスタ2016で上映され、『ブラッククローバー』のコミックス第11巻のアニメDVD同梱版に収録予定。

※3 ドイツ語の ein は英語で不定冠詞の a、an を意味し、英語の one(基数の1)と同じ意味を持つのは eins である。

※4 冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENSE』(ハヤカワ文庫JA)収録の『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』のシナリオ。

※5 能戸総監督がツイッターで書いていた。1から6まである。
   こそうし記①こそうし記②こそうし記③こそうし記④こそうし記⑤こそうし記⑥
   2017年2月15日にこそうし記 番外編がアップされた。

※6 『EXODUS』3話、遠見千鶴の台詞。

※7 ベジャール振付のバレエ『ニーベルングの指環』にはヴォータンとブリュンヒルデのパ・ドゥ・ドゥがあるが、親子というよりも男女として描かれている。

 


関連記事
 ・「蒼穹のファフナー THE BEYOND」ティザーPVの感想 その2