【蒼穹のファフナー THE BEYOND】ここにいた証

 2021年9月6日に書いたのですが、諸事情により『THE BEYOND』第10~12話の先行上映後に公開することにした文章です。

 

 『EXODUS』で総士がいなくなった後の一騎が生み出したものは、「皆城総士」という名と「マークアレス」という名のファフナーである。Alles はドイツ語 All の中性単数形で、「すべてのもの(こと)」を意味する。漢字にすると「総」である。

 冲方丁は『剣樹抄』(文藝春秋)で「名」について以下のように書いていた。

「では、人はどのように数える?」
 了助は、一人、二人……と答えかけ、その前に光圀が言わんとすることに気がついた。
「一名、二名」
 光圀のでかい手が降ってきて、よくやったというように了助の肩を叩いた。
「そうだ。それが、人が死んで残るものだ。心に残り、碑に刻まれ、その者がいた証となる」
冲方丁『剣樹抄』(文藝春秋)

 一騎はマークニヒトのコックピットにいた子どもの名(皆城総士)とザルヴァートル化したファフナーの名(マークアレス)を通して、総士がここにいたという証を残そうとしたのではないだろうか。