【蒼穹のファフナー THE BEYOND】竜宮島ミールと一騎の祝福 Part1

カノン「お前が世界を祝福するなら
    我々が生と死の循環を超える命を与えよう」 『EXODUS』24話

 一騎は竜宮島ミールに世界の祝福を前借りをして、生と死の循環を超える命を手に入れた。

カノン「お前は世界の傷をふさぎ、存在と痛みを調和させる者。
    我々はお前によって世界を祝福する」
『EXODUS』24話

 竜宮島ミールは一騎に生と死の循環を超える命を与え、存在と痛みを調和させる者になった後、竜宮島ミールは一騎を通して世界を祝福するという。竜宮島ミールは一騎を通していつ世界を祝福したのだろう。

 

・祝福

 一期25、26話~『HEAVEN AND EARTH』と『THE BEYOND』1話~『THE BEYOND』2話はともにアルヴィスは総士奪還の蒼穹作戦を実行するが失敗、総士はフェストゥム側へ行き、数年後に帰還という流れなっている。総士は一期25、26話でフェストゥムを祝福したが、『EXODUS』24話で竜宮島ミールは「世界を祝福する」と宣告したが、『THE BEYOND』1話で一騎とともに世界を祝福していた。総士の祝福と竜宮島ミールと一騎の祝福を一覧表にまとめた。

    総士 竜宮島ミール 一騎
  人間の祝福 痛み 人間の心(※1 一騎がこそうしを育てる時間 (※2
  人間の対価 人間の体 2歳のこそうし
  フェストゥムの祝福 存在と無の循環 フェストゥムの心
  人間が得たもの フェストゥムの体 14歳に成長したこそうし
  竜宮島ミールが得たもの マークニヒトのパイロット 12年という時間を3年に圧縮

 竜宮島ミールはコアである乙姫を通じて知った “人間の心” 、つまり竜宮島ミールが知っているもの(=今、持っているもの)で祝福したのに対して、一騎はこそうしを育てる時間、つまり一騎がこれから経験するもの(=今、持っていないもの)で祝福したことである。

 

・祝福のとき

 それでは竜宮島ミールはいつ世界を祝福したのだろう。

ミョルニア「それは、真壁紅音が自ら同化を望んだということだ」

ミョルニア「むろん、真壁紅音自身にとってもそれは不測の事態だった。       だが我々と接触した瞬間、我々を迎え入れ、祝福した」
一期24話

 ミョルニアの言葉によると紅音が祝福をしたのが、フェストゥムに接触した瞬間ということなので、竜宮島ミールが祝福したのは、美羽がこの台詞を言った直後、ロケットを撃つのを諦めた瞬間だろう。

美羽「お願い戻って。
   私に撃たせないで」 『THE BEYOND』1話

 これまで連れ去られた総士に手を差し述べていたのは一騎だったが、『THE BEYOND』1話で手を差し伸べているのは竜宮島ミールとクロッシング状態にある美羽だった。

 一騎はこの時、力を使い果たし眠っていた、つまり一騎の預かり知らぬところで、竜宮島ミールが一騎とともに世界を祝福したのである。この結果、マリスが北極にある偽竜宮島に着いた時、フェストゥムたちは “人間の心” と “子どもを育てる” ということを知っていたため、偽竜宮島で人間たちを模して同じ社会を作り、連れてきたこそうしを育てることができた。

 もし竜宮島ミールが世界を祝福をしなかった場合、ベノンの命令でこそうしと暮らすことになったフェストゥムたちは人間たちのように暮らすということも、こそうしを育てるということも知らないため、イアンの言葉通りこそうしを同化してしまったのかもしれない。

イアン「信じられない。
    フェストゥムが彼を同化せず、3年も教育していたと」
『THE BEYOND』3話

 ある意味、竜宮島ミールがこそうしのために偽竜宮島を作ったとも言える。

 

・こそうしの意思

 総士は自分の意思でフェストゥムを祝福したが、こそうしは物心つかぬ子どもとはいえ、自分の意思とは無関係にその身は竜宮島ミールが世界を祝福するために使われてしまった。

総士「ぼくはコアの言葉に従う」
『EXODUS』6話

 こそうしは転生した総士自身であるため、総士のこの言葉は生まれ変わっても有効なのかもしれない。あるいはこそうしの親である総士が竜宮島ミールの言葉に従う者であるため、こそうしは親である総士からコアの言葉に従えと言われ、竜宮島ミールが世界を祝福した時、フェストゥム側へ行かされたと見ることもできる。

 

・竜宮島ミールが欲したもの

 純粋ミールであるアルタイルと対話できる者は “フェストゥムの体” と “フェストゥムの心” を持つ者なのではないだろうか。マレスペロは元々海神島のコアだったが、新国連に利用された結果、フェストゥムになってしまったコアであるため、”フェストゥムの体” と “フェストゥムの心” を持っている。そのため、アルタイルが地球に到着した時に手に入れていれば、アルタイルと話して自分のものにすることができたはずだ。しかし、アルタイルは竜宮島が手に入れ、島とともに海の底で眠らせてしまった。

織姫「この星であなたと対話をする相手は未来にいるの」
『EXODUS』26話

 アルタイルと対話する人は以下の条件を満たす人ということになる。

  1. 織姫がアルタイルと接触した時には存在しない
  2. 竜宮島のコアとクロッシングできる
  3. フェストゥムの “体” と “心” を持つ

 この条件に一番近い人物は最初の2つの条件をクリアしている転生した皆城総士(こそうし)である。総士が祝福をして “フェストゥムの体” になっているため、こそうしは”フェストゥムの体” を持っているが、人間として育てられたため “フェストゥムの心” は持っていない。こそうしの親である総士は14歳の時にフェストゥムの世界を体験したが、”フェストゥムの心” を得ることはできなかった。しかし、総士は人間が “フェストゥムの心” を得るための手がかりを残していた。

総士「彼らの世界に触れるには彼ら自身に触れるしかないということだ」
『EXODUS』14話

 物心がつく前の子どもをフェストゥムに育てさせることで “フェストゥムの心” を持つ人間が生まれるということだろう。

 

 竜宮島ミールはコアがエメリーとお話をする必要があると判断し、成長させてしまった(※3)。竜宮島ミールの行動から学んだかのように、アショーカはアルタイルとお話をすることを望んだ美羽を成長させてしまった(※4)。しかし、生まれ変わる前の記憶を持っているコアとは異なり、美羽は見た目が大きくなっただけで、”心” は4歳のままだった。このことから、竜宮島ミールは子どもの体だけを大きくしても意味がなく、子どもの心を成長させるには年月をかけて育てる必要があることを学んだのだろう(※5)。そのため、こそうしが “フェストゥムの心” を獲得するためには、竜宮島ミールが乙姫から学んだ “人間の心” だけでは不完全であるため、一騎の “子どもを育てる時間” とともに世界を祝福した。

【幼い総士】
マリスのエスペラントの能力により、幼い総士は強制的に記憶の改変をされていた。
『THE BEYOND』1巻ブックレット

 こそうしは2歳まで海神島で育てられたが、マリスによって連れされた後、記憶を改変されたため、完全に “フェストゥムの心” を持つ人間として育った。

 

 また、世界情勢は緊迫しており、一刻の猶予もないが、こそうしがアルタイルと対話するまでに10年以上の年月が必要である。こそうしが成長するのを待っている間にフェストゥムとの戦いによって人類は絶滅してしまうかもしれない。この世とフェストゥムの無の世界では時間の流れが違うため、竜宮島ミールはこそうしをフェストゥムの無の世界で育てれば、数年でアルタイルと対話できるまでに成長させることができると考えたのかもしれない。

 

・竜宮島ミールとアルヴィス

 もちろんアルヴィスがこそうしを取り戻すことができず、マレスペロがこそうしを利用して竜宮島の位置を知り、アルタイルを手に入れる可能性は否定できない。もしアルヴィスが竜宮島ミールの考えを知った場合、かつて史彦が乙姫に言ったのと同じ言葉を竜宮島ミールにぶつけるだろう。

  史彦「我々の情報を敵に教えたのか。
     島を滅ぼす危険を犯し、島民の犠牲も考えない」
一期22話

 だが、ここで思い出すべきは織姫が総士に言った言葉である

  織姫「あなたなら未来を恐れずたどり着いてくれるから」
『EXODUS』22話

 竜宮島ミールは人間を信じているからこそ、この道を選ぶ賭けに出たと思われる。もちろん竜宮島ミールも手をこまねいてはいない。

  剣司「総士は生まれた時から竜宮島のミールとクロッシングできる可能性があった」
『THE BEYOND』3話

 こそうしとは生まれた時から竜宮島ミールとクロッシング状態にあり、コアはこそうしが眠っている時に接触することができた。

こそうし「また変な夢を見たな」
『THE BEYOND』2話

 ”また” という言葉からこそうしが何度も見ていると思われる夢の中で、竜宮島ミールは毎回、この言葉を繰り返したに違いない。

一騎「俺が迎えに行く、必ず」
『THE BEYOND』2話

 

 竜宮島のコアは島から出られないが、その代わり竜宮島ミールとともに世界を祝福した一騎がこそうしの居場所を探し続けた。こそうしが連れ去られてから3年後、北極近くで一騎がこそうしが無線で島の外に呼びかけた電波を受信したことで(※6)、こそうしを閉じ込めていた島を発見した。アルヴィスはその島に奇襲攻撃をしかけ、こそうしを取り戻した。こそうしは海神島に帰還した時、アルタイルと対話するための条件をすべて兼ね備えた人間になっていた。

  織姫「選んだ道を進めるよう守るのが私の役目」
『EXODUS』6話

 しかし、竜宮島ミールにできるのはここまでである。こそうしを竜宮島に帰るための道しるべにできるか否かは、竜宮島の住民に手にかかっている。

ディラン「予見された通り、皆城総士の身は帰れども、
     心は島を去ったままのようです」
『THE BEYOND』3話

 

P.S.
 こそうしは怒ってもいいと思うよ。ただし、怒る相手は一騎ではなく、こんな運命を受け入れた親である総士、つまり転生する前の自分にだが。こそうしの心境を表した言葉は「エリエリレマサバクタニ(我が神、我が神、どうして私をお見捨てになったのですか)」だと思った。

 

※1 竜宮島ミールの祝福はコアである乙姫が教えたものだった。

乙姫「ううん、あたしも選んだよ。
   心を持つこと」 一期16話

※2 一騎の母、紅音がフェストゥムを祝福した時、フェストゥムに時間軸を与えたことから、一騎の祝福は時間に関係するものになった可能性が高い。

ミョルニア「いや、多数の因子が彼女に共鳴することで
      我々の中にある種の時間が生まれたのだ。
      時間は我々にとって世界を形成する重力の一つにすぎない。
      だが、真壁紅音だった存在は多くのコアたちと共鳴し、
      我々の中で時間軸を絶対とする場を形成してしまった」
一期24話

※3 『EXODUS』3話、岩戸での会話を参照。

千鶴「これほど急激に成長するなんて」
総士「自ら成長を早めたのか」

※4 『EXODUS』6話、美羽はアショーカと接触した夜、急成長した。

※5 『THE BEYOND』3話で溝口が「簡単に人が育てば苦労はない」と言っていた。

※6 『THE BEYOND』1巻ブックレットに以下の文章が記載されている。

【総士を取りもどすために】
アキレス単騎での総士捜索に出ていた一騎は、北極近くで微弱な電波を受信する。