【蒼穹のファフナー THE BEYOND】総士を知る物語

 『THE BEYOND』は一騎と真矢が別の形で総士と同じ経験をすることで、この世を去った総士を理解するという構造になっている。

 

・一騎

一騎「お前が選んだ道を、俺も選ぶよ」
『EXODUS』25話

 島の祝福を受けた後、一騎は総士と同じ道を歩むことを選んだ。総士は以下の言葉と子どもを残してこの世を去っていった。

総士「未来へ導け、一騎。
   そして、互いの祝福の彼方で会おう、何度でも」
『EXODUS』26話

 2年後、総士が残した子どもはマリスに連れ去られた上、奪還にも失敗。マリスは子どもとともにロケットで空に逃げ、以後、行方知れずとなった。

剣司「総士は生まれた時から竜宮島のミールとクロッシングできる可能性があった」
『THE BEYOND』3話

 織姫の命によりアルヴィスは竜宮島を去り、竜宮島のコアは生まれ変わったばかりなので、コアから助言を受けることは不可能だった。

イアン「海神島のコアと美羽くんですら探索が困難だったわけだ」
『THE BEYOND』3話

 海神島のコアと美羽にも探索ができなかったため、一騎が海神島を出てずっと探し続けていたのではないだろうか。

 

こそうし「僕は知りたい。
     海の向こうには何があるのか。
     世界は本当はどうなっているのか。
     誰か教えて下さい」
『THE BEYOND』2話

 こそうしは発信した電波を受信した一騎(※1)はこそうしが閉じ込められている島を侵入し、こそうしと再会した。そして、こそうしを島の外に連れ出した後、こそうしが知りたいと思っていた真実を理由を説明することなく、こそうしが妹だと信じていたフロロを同化するという行動を通して、妹が人間ではないことを教えた。

  一騎「居るべき場所へ帰るんだ」
『THE BEYOND』2話

 真実を知ったこそうしは一騎にこう叫んだ。

こそうし「殺してやる。
     お前を殺してやる」
『THE BEYOND』2話

 

 かつて総士は中枢神経を同化され、昏睡状態に陥った甲洋を目の前にしてファフナーのパイロットたちにこう言い放った。

  総士「これは甲洋の、自分で招いた結果だ。
     お陰でファフナーを失った。
     感傷に浸る暇はない」
一期9話

 この言葉の真意が理解できない一騎は総士に問いただした。

  一騎「ファフナーと俺たち、お前にとってどっちが大切なんだ」
一期9話

 総士は一騎に理由を説明することなく、こう答えた。

  総士「ファフナーだ」
一期10話

 総士が理解できない一騎はこの後、竜宮島を出ていった。

 皮肉なことに一騎はかつて総士が自分にしたのと全く同じことを、こそうしに対して行ってしまったのである。総士と一騎の間には物理的な距離が生まれたが、一騎とこそうしの間には心理的な距離が生まれてしまった。

 

ベイグラントのコア「理由がなければ赦す可能性もない」
『EXODUS』23話

 マレスペロはかつてミツヒロにこう言っていたことから、理由があれば相手から赦してもらえる可能性があるということになる。事実、一騎は総士が「ファフナーだ」と答えた理由を知った時、総士を赦している。それではなぜ一騎はこそうしに理由を告げることなく、真実を教えたのだろうか。

 

 なお、一期の一騎と『THE BEYOND』のこそうしが置かれている状況は、すべてひっくり返しになっています。

       一騎   こそうし
  場所 竜宮島 → モルドヴァ 偽竜宮島 → 海神島
  状況 狩谷に連れられて、一騎は自分の意思で出ていった 外の世界を知りたいこそうしを一騎が連れ出した
  捕虜 新国連の捕虜になった こそうし自身が捕虜と定義

 

・真矢

○眼

総士「痛いよ、痛いよ、痛いよ」
一騎「俺がやったんだ」
大人「総士君の左眼、回復は難しいそうよ」
一期15話

 一期に先立つこと5年前、総士は一騎を同化しようとしたが、一騎は拒否した。その結果、一騎は総士の左眼を傷つけてしまった。

公蔵「パイロットには別の者を選抜する。
   お前はジークフリードシステムに乗れ、総士」
総士「前線で戦わず……仲間を戦場に送り出せと……(悔しげ)」
公蔵「それがお前の敵性だ」
『RIGHT OF LEFT』(※2

 左眼が見える自分を受け入れられない総士はファフナーに乗ることができず、ジークフリードシステムの担当者となった。

 

  真矢「お姉ちゃん?
     違う、フェストゥム」
セレノア「私を見つけた。
     おもしろい目だ。
     頂こう」
『THE BEYOND』1話

 第五次蒼穹作戦でセレノアは真矢の右眼を同化し、視力と戦場で敵をいち早く見つけるという真矢の能力を奪っていった。しかし、総士とは異なり真矢はファフナーのパイロットになった後、右目の視力を奪われたので、視力を奪われた後もファフナーに乗ることができる。

 

○フェストゥム

澄美「昔、研究者がミールに同化されたのよ。
   名前は皆城鞘。
   お腹の中には子供がいたわ」
『EXODUS』3話

乙姫「あたしはコア型っていうの。
   コアギュラ型から分岐した存在。
   世界でも数人しかいない人類とフェストゥムの融合独立個体」
一期20話

 総士の母、鞘は竜宮島ミールに同化され、いなくなってしまった。しかし、鞘のお腹の中にいた子どもは同化されず、フェストゥムになった。

 

真矢「お姉ちゃん?
   違う、フェストゥム」
『THE BEYOND』1話

真矢「フェストゥムを確認」
『THE BEYOND』5話

 真矢は自分の目で姉、弓子の姿をしたセレノアと道生の姿をしたレガートの存在を確認した。総士は人間として生きていた妹がフェストゥムになったが、真矢は死んだ姉と死んだ姉の配偶者の姿をしたフェストゥムが現れた。

 

○教官

 総士はたった一人でファフナーのパイロットに選出された6名の同級生のメディテーション訓練を担当することになった。

  総士「この場所では規律を優先してもらう。
     身勝手な判断は慎め」
  咲良「あたしは自分の意志でここに来てんの。
     制服なんて着せられる筋合いないってのよ」
  総士「なら帰れ。
     士気を乱すものは、この場で除外するだけだ」
ドラマCD『STAND BY ME』

 総士は訓練開始前から言うことを聞かない同級生に手を焼いていた。

 

 一方、真矢はエレメントとなった一騎と甲洋以外のパイロットである剣司と咲良が引退したため、同級生の中では唯一の現役パイロットだった。

こそうし「またあのファフナーに乗りたい」
『THE BEYOND』5話

 こそうしをファフナーに乗せるために教育することになり、真矢はその責任者となった。総士は一人で6名のパイロットのメディテーション訓練を行っていたが、真矢はこそうし一人をメディテーション訓練するだけである。また、真矢は総士よりも10歳年齢が高いので、総士よりも心理的な負も軽いはずである。

 

○家族

 真矢は『THE BEYOND』6話で母、千鶴がいなくなったことで、総士と同じく、父、母、姉妹、一番親しい同級生を失ってしまった。総士と真矢が失った家族と友人を表にまとめた。

 
  名前 皆城鞘 遠見千鶴
  話数 物語開始前 『THE BEYOND』6話
  死因 竜宮島ミールに同化された ワームスフィアに飲まれた
 
  一番親しい同級生
  名前 蔵前果林 羽佐間翔子
  話数 一期1話 一期6話
  死因 ワームスフィアに飲まれた フェンリルで自爆
 
 
  名前 皆城公蔵 ミツヒロ・バートランド
  話数 一期2話 一期24話
  死因 ワームスフィアに飲まれた マークニヒトに潰された
 
  姉妹
  名前 皆城乙姫 遠見弓子(※3
  話数 一期26話 『EXODUS』26話
  死因 竜宮島ミールに同化された 同化されて消えた

 『THE BEYOND』7話以降、真矢に残された家族は姪、美羽のみということになります。妹と姪という違いはあれど、真矢は竜宮島でのフェストゥムの最初に戦闘が終わった一期2話の総士と同じ状態になったということになります。

 また、一騎と同じく総士と真矢の亡くなった家族・友人との関係性もすべてひっくり返されています。

      総士   真矢
  知らない親    母    父
    2133年に同化 2138年に脱島
  育ての親    父    母
  姉妹    妹    姉
  一番親しい同級生   異性   同性

 真矢は総士が経験したことを別の形で追体験をすることで、総士を理解することになるのだろう。

 

 

※1 『THE BEYOND』BD/DVD1巻の解説書に以下のような一文がある。

【総士を取りもどすために】
アキレス単騎での総士捜索に出ていた一騎は、北極近くで微弱な電波を受信する。

※2 冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫)より引用。

※2 弓子は『EXODUS』7話、シュリーナガルで崩れた建物の下敷きになって亡くなったが、美羽がアショーカに願ったことで、その後も生き続け、役割を終えた後、消えた。しかし、『EXODUS』26話、美羽は遺品として母、弓子の指輪を受け取っていることから、美羽は母、弓子はアショーカの前でいなくなった真矢に言うのではないだろうか。