『THE BEYOND』第4~6話、公開5週目の週末に見た後の感想(前半)です。
・こそうしとマリス
『THE BEYOND』5話、マリスはこそうしと話をしたが、マリスの言うことを聞かなかったので強制的に連れ去ろうとした。マリスの本当の姿を知ってしまったこそうしは「お前をずっと親友だと思っていた」と嘆いていたが、『THE BEYOND』5話ラストのマレスペロの絶対停止領域を見た時、ベノンの側にいるマリスへの思いは吹っ切れたのではないだろうか。その後、こそうしは真矢と零央にこう言い放った。
こそうし「疑われたまま死ぬもんか。
僕が敵を呼んだと思っているんだろう」
『THE BEYOND』6話
こそうしは海神島に攻撃を仕掛けたベノン軍と戦っている時、常にマリスのことを気にしていた。
こそうし「ファフナー。マリスか」
こそうし「気配を感じる。
マリスがいる」
『THE BEYOND』6話
陣形を崩してマリスの元に向かおうとした時、こそうしはマリスのことをシステムにいる彗に報告した。
こそうし「マリスが何かしてる」
『THE BEYOND』6話
今、こそうしがマリスに会ったら、一騎に言ったこの言葉を言うのでないだろうか。
こそうし「島を攻撃するために僕を利用したな」
『THE BEYOND』3話
・人間とフェストゥム
こそうしは『THE BEYOND』2話で乙姫(フロロ)を殺されてしまったが、『THE BEYOND』6話では一緒に暮らしていた千鶴はフェストゥムに殺害されてしまった。
- 偽竜宮島で一騎(人間)が乙姫(フェストゥム)を殺した
- マリスが海神島に放ったフェストゥムが千鶴(人間)を殺した
つまりこそうしは短期間の間に人間とフェストゥムの両方からフェストゥムと人間の家族を奪われてしまったということになる。その結果、人間もフェストゥムもやっていることは何ら変わらないという現実を知ることになるが、その現実を受け入れた上でこそうしは自分がいるべき場所を選ぶことになるのだろう。
・総士とコアの関係
冲方「妹だから自分が守ってやらなければならない」
『蒼穹のファフナー』文芸統括&シナリオ 冲方丁インタビュー
総士「ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって父さんに言われた。
自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」
一期15話
一期と『EXODUS』の総士とコア(妹、乙姫と姪、織姫)の関係は総士が守る者、コアが守られる者という関係だった。
【ウォーカー】
ウォーカーのコアの欠片から生み出された存在がフロロである。
『THE BEYOND』第1~3話パンフレット
こそうしの妹、乙姫の姿をしていたフロロは竜宮島や海神島のコアに近い存在と言えるのではないだろうか。フロロはこそうしの家族であるセレノア、レガート、フロロの中でもっともこそうしに近い存在であり、フロロはこそうしにとって母親顔負けの世話好きな存在として描かれ、島の外の世界に興味を持つこそうしの変化に気がついていた。フロロは一騎とともに偽竜宮島を出ていこうとするこそうしを引き止めようとした。
フロロ「行ったらダメ」
フロロ「行かないで。島に戻って」
フロロ「お家に帰ろう、お兄ちゃん」
『THE BEYOND』2話
初めて総士を引き止めてくれる人が現れたのだ。しかし、フロロは一騎が同化して消してしまった。
こそうしは生まれた故郷である海神島に戻り、そこで暮らすことになった。ある夜、こそうしの部屋にマリスが現れ、こそうしを眠らせて連れ戻そうとした。しかし、竜宮島のコアである輝夜と朔夜がマリスを連れ戻そうとする妨害し、その間にこそうしは目覚め、マリスを拒否した。つまり『THE BEYOND』では総士とコアの関係が逆転し、何も知らない無垢な子どもであるこそうしが守られる者、コアが守る者に逆転していた。
・集合写真
海神島の近藤家に剣司の母と咲良の父母の写真と並んで一期3話で撮影した集合写真が飾ってあった。集合写真といえば、アルヴィス内にある総士の部屋に飾ってあったことが印象に残っているが、その総士亡き後、パイロットのことを記憶し続けるという役割は総士の次のジークフリード・システムの担当者だった剣司が担うことになるのだろう。
・人間同士の対話
『HEAVEN AND EARTH』で弓子が、『THE BEYOND』4話で真矢がアルヴィス内の総士(こそうし)の部屋で銃を放った。その状況をまとめると以下のようになる。
HAE | THE BEYOND | ||
撃った人 | 弓子 | 真矢 | |
撃たれた人 | 史彦 | こそうし | |
銃撃数 | 1発 | 2発 | |
弾丸 | 左腕に当たった | 当てる気はなかった | |
撃った理由 | 美羽を守るため | こそうしを脅した |
弓子は美羽をアルヴィスに奪われることを恐れて、史彦を撃ち、真矢はこそうしから海神島を守るために、銃を使ってこそうしを脅した。いずれもアルヴィスという大人の論理が優先される組織と子どもが対立する場面で使われた。
撃たれた史彦は弓子の心情を理解し、弓子の行為を赦した。
史彦「君の行いは、母親として当然だ」
弓子「あの子はそう言ってはくれません」
史彦「だが守ろうとする心は伝わっている」
『HEAVEN AND EARTH』
銃で脅されたこそうしも真矢の本心に気がつき、真矢を通して海神島の人々の気持ちを知った。
こそうし「銃で脅したあなたを憎めなかった。
あなたは僕を信じてくれた。
だから」
真矢「みんなが君を信じてるよ」
『THE BEYOND』5話
真矢のこの言葉がこそうしを変え、未来を切り開くことになった。
史彦「人間同士の対話がもっとも困難だということだ」
『THE BEYOND』4話
『EXODUS』23話の真矢とヘスターが対話する場面も含め、悲しいことに人間同士が利害関係抜きで本音で話し合うためには武器という大きな力が必要ということを表しているのかもしれない。
・居場所を作る
こそうし「僕は捕虜だぞ。
こ、殺すのか」
こそうし「他にないだろう。
僕は捕虜なんだから」
『THE BEYOND』5話
故郷と家族を奪われたことで、属するべき場所を失ったこそうしは自分を捕虜だと定義することによって、頼るべき者のいない海神島に居場所を作ろうとしていた。