蒼穹のファフナー THE BEYOND 第4~6話の感想 Part5

 『THE BEYOND』第4~6話、公開3週目の週末に見た後の感想の後半です。

 

・竜宮島とベノン

 マリス、レガートともに海神島にやってきたセレノアは操と甲洋にこう告げた。

セレノア「お前たちにこの世の争いをなくすことなどできはしない」
『THE BEYOND』5話

 『HEAVEN AND EARTH』で一騎が来主操(スフィンクスA型)に言った言葉を思い出した。

  一騎「お前たちに平和なんて作れない」
『HEAVEN AND EARTH』

 竜宮島の住人は平和を基盤にして生きているのに対して、ベノンは戦いを基盤にして存在しているが、戦いに勝利した後にあるものはアルタイルとともに元の状態、すなわち無に帰ることなのである。

 

・竜宮島の歴史

 『THE BEYOND』のこそうしの姿を通してアニメでは一切描かれていない一期1話以前の総士の人生が描かれている。こそうしは偽竜宮島から海神島に戻った直後、ルヴィの考えによりマークニヒトに乗り、故郷と妹を奪われた怒りから海神島を攻撃した。火遠理島(※1)で百戦錬磨のアルヴィスの戦士と戦った後、美羽が眠らせた。このことから推測される総士の身に起きた事件とは何だったのだろうか。

 5歳の時、公蔵は総士に母、鞘は竜宮島ミールに同化され、妹の乙姫は島のコアとして生きていることを教え、その後、公蔵は総士に妹である島のコアを守るために生きろと命令したのではないだろうか。

総士「ミールの因子が僕らの遺伝子に移植されてるんだって父さんが言ってた。
   ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって、父さんに言われた。
   自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」
一期15話

 『THE BEYOND』5話ラストのこそうしのように、総士は島のコアとして生きている妹に対する気持ちを父にぶつけることができればよかったのだが、父から命令された総士は自分の正直な気持ちを言うことができず、押し殺してしまった。その結果、総士は一騎を同化していなくなろうとしたのではないだろうか。

総士「ぼくは初めからどこにもいないんだ。
   だったら、お前と一つになれる場所に帰りたい、一騎」
一期15話

 

 『EXODUS』でL計画に参加した娘の死を受け入れることができず、両親が息子、彗を放置していた鏑木家の姿が描かれていたが、それは一期1話以前の皆城家の姿そのものだったのだ。

 『EXODUS』3話では鞘が同化される様子を見る公蔵の姿が描かれていた。

 保「この新型、やはりミツヒロと日野の研究か」
容子「二人は北極のミールとの決戦を望んでたんですよね」
西尾「それは皆城公蔵も同じさ」
一期17話

 ミツヒロや洋治と同じ用に北極での決戦を望んでいた公蔵は妻、鞘が同化された後、ミツヒロと同じようにフェストゥムに魂を同化された人間(※2)だったのかもしれない。

 

 総士には本音を言える蔵前がいたとはいえ、父、公蔵は家に愛人の狩谷由紀恵を連れ込んでいたので、彗よりも環境は悪かったと言えるだろう。

 

・マークザインとマークニヒト

 マークザインは人間しか乗れない機体。島の祝福を受けた結果、体はフェストゥムに近づき、心を失いつつある一騎はその資格を失った。そのため、一騎は自らの意思でマークザインを降りたのではないだろうか(※3)。

 一方、マークニヒトはマークザインとは反対にフェストゥムしか乗れない機体。イドゥンがテスト・パイロットである狩谷由紀恵が同化した後、マークニヒトに乗ったのはイドゥン、来主操(スフィンクスA型)、総士(フェストゥムの体を持つ)、総士の生まれ変わりのこそうしの4人で、いずれもフェストゥムかフェストゥムに近い者だった。

 

・ベノン

 新国連は事前通告なしで竜宮島を攻撃し(一期15話、『HEAVEN AND EARTH』)、同じ人類であっても交戦規定アルファの名のもとに無差別攻撃を行った。(『EXODUS』1、14、15、21話)それに対してベノンは人類とアルヴィスに事前通告をした上で戦争を始めている。

 史彦「赤い月のようなものを見ただろう。
    あれが自らマレスペロと名乗り、
    支配する群れをベノンと名付け、
    人類に宣戦布告した」
『THE BEYOND』3話

マリス「ベノンが来る。
    誰にも止められない」
『THE BEYOND』5話

 そして、無駄な戦いを避けるため、敵には降伏する機会を与えている。『THE BEYOND』5話、ベノンは制圧した人類軍の司令官に降伏を求め、マリスはアルヴィスに降伏する機会があることを告げた。

マリス「降伏したい時は僕を呼んで」
『THE BEYOND』5話

 マレスペロは人類から戦争を学び、人類のやり方で人類と戦争を始めてしまった。

 

・レガートの言葉

レガート「なぜフロロを消した」

 一騎はフロロを同化したが、フェストゥムは同化を消すと表現していた。

  一騎「敵を破壊すると、すごく安心する」
ドラマCD『NO WHERE』

レガート「次に会う時は苦しまずに破壊してやる」
『THE BEYOND』5話

 かつて一騎がフェストゥムを破壊すると表現していたことを考えると、レガートにとってフロロを消した一騎は敵であり、破壊すべき存在ということになる。

 

・一騎の変貌

 一騎「人じゃない。
    でも、心を感じる」
『EXODUS』26話

 一騎は人間によって作られたパペットであるミツヒロに心を感じたが故に攻撃できなかった。

 

フロロ「感情を学んだのよ。
    最初はマレスペロの命令だったけど。
    今は本当の家族だと思ってるの。
    あなたならわかるでしょ」
『THE BEYOND』2話

 人間のように一騎に訴えるフロロに対して、一騎は冷たく言い放った。

 一騎「お前たちは人間じゃない」
『THE BEYOND』2話

 この一騎の言葉は第四次蒼穹作戦時のミツヒロに対する総士の台詞と同じニュアンスを感じる。

 総士「人と信じこまされた怪物だ」
『EXODUS』25話

 総士「ためらうな、一騎」
『EXODUS』26話

 『EXODUS』26話の第四次蒼穹作戦終了時から『THE BEYOND』2話の間に、一騎のフェストゥムに対する考え方を一変するほどの出来事があったのではないだろうか。

 

・ベノン対アルヴィス

 マリス、セレノア、レガートが海神島にやってきた時、それぞれ違う相手と話し合った。

 マリスはこそうしを連れ戻そうとしたが、抵抗されて失敗。その後、こそうしの部屋にやってきた島のコアとアルヴィスの上層部と話し合った後、マリスはアルヴィスに宣戦布告した。ここでは人間と人間が話し合っていた。

 セレノアは操と甲洋に仲間にならないかと持ちかけた。ここではフェストゥムとフェストゥムが話し合っていた。

 レガートは一騎と話し合った。フェストゥム(レガート)と一騎(人間)の話し合いだが、フェストゥムであるレガートは人間のように感情的になり、人間である一騎がフェストゥムのように淡々と考えを述べていた。レガートはフロロを消した一騎に破壊すると言って去って行った。

 

・憎悪

こそうし「僕をおかしくさせる何かもある」
『THE BEYOND』5話

 こそうしはマークニヒトに乗った時、マークニヒトの中にある蓬莱島のコア(※4)が貯め込んだ同化された人間の思念(※5)を感じたのだろう。マークニヒトに残っている思念は憎悪(※6)であり、人間から抽出した憎悪で作られているソルダード化された兵士と同じものがマークニヒトの中に眠っているということになる。

 

 

※1 島の名前は『THE BEYOND』第4~6話パンフレットのKEYWORD/アルヴィスの項に記載されています。

※2 一期11話、千鶴の台詞「この島で最初に魂を同化されたのは、もしかするとあの人なのかもしれません」。

※3 2019年5月18日14時、チネチッタで行われた舞台挨拶で、石井真は「ザインは美羽に譲った」と話していた。

※4 『EXODUS BD-BOX』のブックレットに掲載されている冲方丁「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」に以下のような一文がある。

◯蓬莱島
前作で破壊された島。島のミールは、皆城総士が乗るマークニヒトの中で眠っている。

※5 『EXODUS』7話で総士は「同化された人間の思念、これほどか」と言っている。

※6 『THE BEYOND』第4~6話パンフレット、第4話のSTORYに「ニヒトに眠る憎悪の念」という一文がある。