『THE BEYOND』第4~6話、公開2週目の週末に見た後の感想です。
・千鶴の祝福
ミョルニア「それは、真壁紅音が自ら同化を望んだということだ」
史彦「もう一度言ってみろ」
ミョルニア「むろん、真壁紅音自身にとってもそれは不測の事態だった。
だが我々と接触した瞬間、我々を迎え入れ、祝福した」
一期24話
『THE BEYOND』ではこれまで描かれなかった部分が可視化されているが、千鶴が自らを犠牲にして、フェストゥムの攻撃から史彦を守るいう行為はかつて真壁紅音が行った出来事と全く同じということになる。
千鶴「愛しています」
『THE BEYOND』6話
史彦に向けたこの言葉はフェストゥムへの祝福だったのではないだろうか。
こそうし「ありがとう。
戦う力を与えてくれて」
『THE BEYOND』6話
千鶴はこそうしから感謝されたことによって、おそらく自分の中にある複雑な気持ちを整理することができた。そのため、史彦がフェストゥムに攻撃された時、島民が竜宮島に帰るためには必要不可欠な存在である史彦を生き残らせるために、自らを犠牲にしたのではないだろうか。
・史彦の贖罪
史彦の視点から千鶴がワームスフィアに飲まれる姿が見えるように描かれていた。史彦の償いとは愛する人を犠牲にして生き続けることなのかもしれない。
・一騎と千鶴
竜宮島の子どもにフェストゥムと戦う力を与えた千鶴はこそうしから、人類軍にフェストゥムと戦う力を与えた一騎は一騎はアイからそれぞれ感謝された。
アイ「感謝しています、マカベ。
あなたが私をファフナーに乗せてくれた」
『EXODUS』3話
こそうし「ありがとう。
戦う力を与えてくれて」
『THE BEYOND』6話
・呼び方
一騎「行こう、総士」
『EXODUS』26話
一騎「総士はあれに乗ったのか。
あいつを頼む」
『THE BEYOND』4話
こそうしが連れ去られる前、一騎は「総士」と呼んでいたが、連れ戻した後は「あいつ」と呼び方が変化している。
・一騎とこそうし
『THE BEYOND』ではこれまで明確に描かれなかった過去を新たな視点から描くということを行っていますが、一騎の視点で一期1話に相当するのが『THE BEYOND』6話、ベノンとの戦闘ということになり、『THE BEYOND』5話までの一騎とこそうしの関係はこれまで描かれなかった過去ということになります。
こそうし「返せ、乙姫を返せ。
乙姫を返せ」
一騎「これが真実だ。総士」
こそうし「殺してやる。
お前を殺してやる」
『THE BEYOND』2話
一騎は総士の左目を傷つけたのと同じことをこそうしに対しても行ったということになります。ただし、こそうしが感じた痛みは一騎が引き受けたため、こそうしがフェストゥムに教えるべき “痛み” にはならず、こそうしに残ったのは “憎しみ” という感情のみでした。一行が海神島に帰還後、目覚めた一騎は真矢と一緒に遠見家に行き、史彦にこう告げた。
一騎「しばらく島にいるよ、普通に」
『THE BEYOND』4話
一騎は海神島で普通に暮らすにもかかわらず、こそうしのことを真矢に頼んだ。つまり、一騎は自分の意思でこそうしを遠ざけたということになります。これは一期ではフェストゥムが竜宮島にやってくるまでの5年間、一騎と総士は疎遠だったことに相当します。こそうしがマークニヒトに乗ることが決まった時、一期1話の総士と同じく一騎は距離を置いていたこそうしと向き合うことになります。
・こそうしの二人の親
『THE BEYOND』第4~6話で一番印象に残ったシーンは、生まれてから2年間、こそうしの親だった一騎とその後の3年間、こそうしの親だったレガートとの対話。一騎はフロロを消したことでレガートの怒りを買ってしまった。
・憎しみ
こそうし「銃で脅したあなたを憎めなかった」
『THE BEYOND』5話
真矢は脅しでこそうしを銃を撃ったにも関わらず、こそうしは真矢から憎しみを感じなかった。
こそうし「返せ、乙姫を返せ。
乙姫を返せ」
一騎「これが真実だ。総士」
こそうし「殺してやる。
お前を殺してやる」
『THE BEYOND』2話
一騎はこそうしを連れ戻しに来たため、こそうしに危害を加えることは一切しなかったにも関わらず、こそうしは乙姫(フロロ)を同化するという一騎の行為から憎しみを感じたということなのだろうか。
・美羽の精神年齢
零央と美三香(19~20歳) 一緒に住むのはまだ早いと思っている。
道生と弓子(24~25歳) 道生が竜宮島に帰ってきてすぐに一緒に住み始めた。
『THE BEYOND』4話、美羽は真矢にこそうしと一緒に暮らしたいとお願いし、その後、こそうしは遠見家で暮らすことになった。つまり美羽の精神年齢は零央と美三香よりも高く、道生と弓子と同じ24~25歳くらいということになる。
美羽は実年齢は9歳、見た目は中高生、精神年齢が24~25歳の部分もあるというアンバランスな存在なのである。
・総士とこそうしの精神年齢
こそうしの精神的な成長はこそうしが真矢を見る視線で描かれている
こそうしは家で服の前が開け、下着が見える真矢の姿を見た時、目を背けた。
こそうしは『EXODUS』2話、総士が前を開けたシャツ姿の真矢を見た時と同じ反応をしている。こそうしの真矢に対する視線から総士の精神的な年齢が低かったことがわかる。マークニヒトに乗った時、総士は子供っぽい動きや言動をしていたが、その姿が総士の精神年齢そのものだったのである。
アルヴィスでファフナーの訓練をする前、シナジェティック・スーツ姿の真矢の体を見ていた。
『EXODUS』4話、零央と彗がシナジェティック・スーツ姿の美三香と里奈の体を見る場面と重ねていることから、こそうしの精神的は成長し、14歳になったことを表現している。
・総士とこそうし
総士「到着したら起こしてやる」
『EXODUS』8話
しかし、総士は寝坊し、一騎を起こすことはできなかった(※1)。
一方、こそうしは目覚まし時計を使わずに朝早く起き、無線を使って島の外に呼びかけていた。
総士「予定より2度も高い。
修正が必要だ」
『EXODUS』1話
こそうし「最適な温度だ」
『THE BEYOND』6話
どう見てもこそうしの方が器用だった。
・こそうしの考え
こそうし「誰よりも優れた兵士になってみせる」
『THE BEYOND』5話
海神島での教育が始まったばかりなので、ベノンに教育されたこそうしにとって敵と戦う人は「兵士」なのである。ちなみにルヴィはアルヴィスのファフナー・パイロットを「戦士」と呼んでいた。
・総士と真矢
総士:人間(一騎)に左目の視力を奪われた。
真矢:フェストゥム(セレノア)に右目の視力を奪われた。
真矢は『THE BEYOND』で一期の総士と同じく片目を奪われた状態なので、一緒に住むことになったこそうしを通じて総士のことを知るのではないだろうか。
・真矢の右眼
セレノアは第5次蒼穹作戦で真矢の右眼を奪ったが、視力と “目に見えないもの” を奪っていった。『THE BEYOND』での人間とフェストゥム間のやりとりは時間の経過とともに変化してくようなので、セレノアが奪った真矢の “目に見えないもの” は、少し別の形に変化してゆっくりと真矢に返されるのではないだろうか。
・大人になること
『EXODUS』以降、ファフナーから降りる(いなくなるも含む)=大人になることを意味しているのであれば、ずっと母、千鶴と姉、弓子から守られていた真矢はまだ大人になっていないのではないだろうか。
『THE BEYOND』6話で母、千鶴が死んだことで、真矢は大人ならざるを得なくなる。『THE BEYOND』 は真矢が大人になる物語なのだろう。そして、私達にこの物語で大人になることはどういうことなのかを教えてくれるはずである。
・真矢と容子
真矢「見送る人の気持はわかります。
死を背負ってほしいわけじゃないんです。
自分がここにいたことを忘れてほしくないだけ」
『THE BEYOND』6話
真矢は出撃する前、娘二人を見送った容子にこう言ったが、『THE BEYOND』では真矢も容子と同じく見送る側になることを示唆しているのだろうか。
一騎「遠見は俺のこと覚えていてくれる」
一騎「このまま戦うことに慣れていくのが怖いんだ。
自分はなにか別のものに変わっちまうような気がして」
真矢「たとえどんなに変わっても、一騎君のこと覚えてるよ」
一期10話
一期10話の一騎と真矢の会話を思い出したが、一騎自身の言葉通り、一騎はファフナーに乗ってから別人のように変わってしまった。
・総士の帰還
陣内「あれじゃあ、敵を招き入れたも同然です」
『THE BEYOND』4話
『HEAVEN AND EARTH』でマークニヒトとともに竜宮島に帰還した総士に対する島民の反応が描かれている。この後、捨てることのできないマークニヒトを拘束することになったので、ここでは『HEAVEN AND EARTH』~『EXODUS』の間で描かれなかった出来事が可視化されています。
・重い言葉
甲洋「どれほどの力があっても
同じ命は二度と生み出せない」
『THE BEYOND』5話
『THE BEYOND』第4~6話で一番心に刺さった言葉。翔子の死を受け入れたことで、フェストゥムとして生き続けることになった甲洋の言葉は重い。
※1 能戸総監督の2015年3月9日のツイートを参照。