蒼穹のファフナー THE BEYOND 第4~6話の感想 Part11

 『THE BEYOND』2巻を見た感想をまとめました。

 

・理解してほしい

マリス「僕を憎め。
    そして、僕の憎しみを思い知れ」
『THE BEYOND』第7~9話PV

 マリスが憎んでいる相手は『THE BEYOND』2話で語られていた。

マリス「僕の親は戦いに出て戻らなかった。
    エスペラント軍のせいで。
    あいつらは誰かを犠牲にして生き延びようとする」
『THE BEYOND』2話

 マリスが憎んでいるのはエスペラント軍、つまり人類軍ということになる。マリスは最初に「僕を憎め」と言っていることから、戦いで親を奪われるという同じ経験をすることによって、自分の憎しみを誰かにわかってもらいたい、この感情を共有してほしいと思っているのではないだろうか。かつて、自分の苦しみを理解してほしいと思いながら、システムで感情を共有しているので言葉で言わなくても、相手が理解してくれると思っていた人がいた。

 総士「あいつが、あいつなら、あいつなら僕をわかってくれると思った」
一期11話

 それは総士である。つまり、マリスは総士とは異なり、言葉を使って自分の感情を表現しているということになる。

マリス「間違った選択だと教えてあげるよ。
    真壁史彦、ルヴィ・カーマ」
『THE BEYOND』6話

 マリスは狙っていた史彦とルヴィ・カーマではなく、アニラ、シャオ、千鶴を殺した結果、美羽、こそうし、フェイという子どもに家族を奪われた憎しみを教えたことになる。

 

・悲しみ

こそうし「自分が特別だと思ってるから、
     何をなくしても平気なんだろ。
     だから、僕が失ったものがわからないんだ」
『THE BEYOND』6話

 こそうしは美羽に妹を失った時の悲しみを理解してもらうために、大切にしているエメリーの弟の靴を海岸に投げた。

こそうし「どうだ。
     僕が許せるか」
  美羽「わかるよ。
     そんなことしなくても総士がつらいこと。
     美羽、わかってあげられるよ」
『THE BEYOND』5話

 残念ながら、このやり方では美羽はこそうしの気持ちを理解することはできなかった。それはこの後、美羽を食べたいという操に迷うことなく片手をあげようとしたことからも明らかである。

   操「母さんは僕が死ぬがいやなんだ。
     君を食べればもっと生きられる。
     だから」
  美羽「全部は無理だけど、こっちの手だけなら。
     両方あげたら、ファフナーに乗れないから」
『THE BEYOND』6話

 こそうしは美羽に家族を失った悲しみを教えることができなかったが、代わりにマリスが美羽に家族を失った悲しみを教えることになった。

 

・ファフナーに乗る理由

 いつ自分の命を使うべきか、今こそ自分がいなくなる瞬間なのか、といったことを、敵との対話の中で探り続けるなどということない、安らぎの中に、一騎は、いた。
冲方丁『Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』(※1

 この言葉をひっくり返せば、一騎はまだここにいるべきだと思ったが故に、ファフナーに乗って戦い続けた。つまり、一騎にとってファフナーとは存在理由そのものだった。

 

こそうし「ここにいたことはわかる。
     でも、ここにいたくない。
     どこにいればいいかわからない」
 ルヴィ「それはあなたが何者でもないからです」
『THE BEYOND』4話

 一方、自分が何者かわからないこそうしにとってファフナーとは、自分自身を知るための器である。

   保「機体の記録を渡すだけじゃダメなのか」
『THE BEYOND』5話

 それはこそうしがマークニヒトの中で総士が残したメッセージを聞き、その意味を理解し始めた時、竜宮島とつながったことからも明らかである。

 

・美羽がやること

美羽「島に帰れたら
   ママやエメリーがしたこと
   美羽もするだけだもん。
   一人で大丈夫」
『THE BEYOND』6話

 弓子とエメリーは役割を終えると、その命をアショーカに返した。美羽が竜宮島に帰った時にやろうとしていることはこれだろうか。

美羽「あのお星様に食べてもらうのがいいんだけど、今はできないから」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 『EXODUS』で美羽がアルタイルに接触した時、アルタイルは遠い宇宙にいて手が届かなかった。しかし、今はアルタイルは竜宮島とともに眠っているため、竜宮島に帰ることができれば、アルタイルに接触することができるのである。

 

・フェストゥムにとっての親

 乙姫「お母さん。
    生まれて初めての言葉」
一期14話

 乙姫「あたしは、あなたたちみんなを抱きしめるお母さんみたいに。
    そのためにこの島と一つになる」
一期26話

 一期は竜宮島ミールのコアである乙姫が “母” という存在を学ぶ物語だった。冲方丁が乙姫を通して描こうとした “母” とは以下のような存在だった。

●皆城乙姫
 乙姫では、個人的に放任主義的母性というのをやりたいな、と思っています。周囲の存在に、ありとあらゆることを自分の意思で選択することを望むのが、乙姫なんです。そして、乙姫自身はそれをひたすら見守るだけ。
『アニメージュ』2004年10月号

 

 フェストゥムが知っている親とは乙姫の姿そのものだった。ベノンに命じられてこそうしの父と母を演じていたセレノアとレガートは、外の世界を知るために無線機で呼びかけようとするこそうしを止めることなく、ただ見守っているだけだった。

レガート「あの子が外の世界に興味を持つことは止められないのかもしれない」
『THE BEYOND』2話

 

 総士はマークニヒトを使ってアルヴィスや一騎を攻撃したいというこそうしの望みをかなえた。

こそうし「出てこい 真壁一騎。
     こいつでお前を消してやるぞ」
『THE BEYOND』3話

こそうし「こんな島、全部壊してやる」
『THE BEYOND』4話

 

 マークニヒトはルガーランスを出して、こそうしの望みをかなえた。

こそうし「そっちばっかり武器を使うなんて。
     武器だ」
『THE BEYOND』4話

 

・I wish I were here.

 織姫は自分を長く生かそうとしてはダメだと千鶴に釘を刺していた。

織姫「でも、私を長く生かそうとしてはダメ。
   島のミールはこれからも学ばないといけないから。
   命の終わりと始まりを」
『EXODUS』8話

 操は寿命を引き延ばそうとしていけないことを知っていたが、容子を悲しませたくないという気持ちから、美羽を食べて生き永らえようとしたのではないだろうか。

 操「母さんは僕が死ぬがいやなんだ。
   君を食べればもっと生きられる。
   だから」
『THE BEYOND』6話

 しかし、操はこそうしと美羽が言い争っている姿を見て冷静になり、望みを取り下げた。

 操「やっぱり、食べない。
   ごめんなさい。
   ぼく、一人で死ぬね」
『THE BEYOND』6話

 操は容子を悲しませたくないという気持ちから、あなた(人間)とずっと一緒にいたいと気持ちになった。

 

 

※1 『NEWTYPE LIBRARY 冲方丁』(角川書店、2010年)より引用。