『THE BEYOND』第4~6話の感想のうち、過去作に言及した内容と第4~6話の各話の感想を公開した後に書いたものをまとめました。
・こそうしを見る眼
こそうしを奪還した後、真矢だけこそうしに対する態度が異なっていた。
こそうし「お前を殺してやる」
美羽「おかえり、総士」
真矢「離れなさい。
おとなしくして。
でないと拘束する」
『THE BEYOND』3話
これは独立人類軍がこそうしを捕らえた時の対応そのものである。
真矢「たとえ憎まれても二度とあの子を敵の側へは行かせない」
『THE BEYOND』3話
新国連はこそうしの意思には興味がなく、竜宮島に帰るための道しるべとしてしか見ていない。つまり、真矢は新国連と独立人類軍の視点でこそうしを見ているということになる。アルヴィスが新国連と独立人類軍と交渉したのは真矢がこそうしを理解する前であり、真矢がこそうしにもしものことがあった場合、私が処分すると言ったため、アルヴィスは交渉を有利に進めることができた。
・クロッシング
竜宮島のコアからの言葉を聞いたこそうしは真矢にファフナーに乗りたいと申し出たが、真矢はこそうしをかるくいなした。しかし、その時、総士の声が真矢を牽制した。
総士「そうとは限らないぞ」
『THE BEYOND』5話
こそうしは目覚めつつあり、その結果、こそうしはどこかにある総士の記憶に断片的にではあるが、アクセス可能になったということなのだろうか。この後、こそうしは総士と同じような行動をするようになった。
- こそうしは朝、風呂場から出る真矢を見た時は恥ずかしさのあまりそっぽを向いていたのに、真矢と一緒にファフナーの訓練を行った時はシナジェティック・スーツ姿の真矢の姿を見ていた。
- こそうしは総士より器用に温度計を使って料理をしていた。
・こそうしの成長速度
こそうしは遠見家に住むようになって以降、さまざまな人から教えを受け、ものすごい速度で吸収し、成長していった。アルヴィスはこそうしを通してフェストゥムの学習能力の高さを目の当たりにしているのである。
・輝夜と朔夜
マークニヒトのコックピットに座標値が表示されるというのはユニコーン・ガンダムを思い出すのだが、ガンダムの場合、座標を見て主人公を導くのは周りにいる人間だった。しかし、ファフナーの場合、こそうしを導くのは輝夜と朔夜という実体のない少年少女ですが、モーツァルト/歌劇『魔笛』で主人公タミーノを導く三人の童子(※1)を思い出しました。ガンダムに比べるとファフナーは意図的に古い物語の形式を利用して作られています。
・美羽が失ったもの
美羽はこそうしから大切なものを失うことの悲しさを知らないと言われたが、美羽は生まれる前から家族を失っていた。
生まれる前:父(道生)
4歳:母(弓子)、友達(エメリー)
9歳:祖母(千鶴)
美羽は4歳の時に母と友達を相次いで失ったが、幼すぎて大切な人を失うことの悲しさを理解していないのではないだろうか。『THE BEYOND』6話で祖母、千鶴が亡くなったが、美羽がこれを知った時、大切な人を失うことの悲しさを理解するのかもしれない。
・マークザイン
総士「ニヒトを始末すれば、ザインの共鳴も止まって乗れるようになる」
『EXODUS』4話
剣司「死んだ機体とはいえ、それは」
『THE BEYOND』3話
総士が同化されていなくなったことで、マークニヒトは死に、マークザイン単騎での運用が可能になった。『THE BEYOND』では美羽が乗るようになった。
マークツェン改アキレスがザルバートル化されることになったことで、一騎が再びマークザインに乗る可能性は低くなった。
・里奈
里奈「おばあちゃん年だし、あんたいなくなったら、あたし一人だよ。
だあれも帰えんない家でさ」
『HEAVEN AND EARTH』
暉が言葉を取り戻したばかりの頃、里奈は自分の気持ちを言葉にして伝えることができた。しかし、暉が完全に言葉を取り戻した後、里奈は自分の気持ちを素直に言葉にすることができなくなってしまった。
仲間と一緒にいる時に好きな人の結婚を知るというのは心に大きなダメージを与える。
里奈「結婚」
美三香「どうしよう。
結婚式とかしちゃうのかな」
零央「お前はどうもしないだろう」
里奈「そうなんだ」
彗「里奈さん」
里奈「おめでたいじゃん」
こんな状況だからこそ、みんなで祝ってあげるの」
『EXODUS』19話
里奈がここでやるべきことは場を盛り上げるのではなく、この場から立ち去って一人で泣くことだったのだが、里奈にはそれができなかった。その結果、剣司の結婚は里奈の心に大きな傷を残してしまった。
海神島の戦闘で暉が同化されていなくなり、里奈はキールブロックの向こう側に行く暉の姿を見た。この時、「行かないで、置いてかないで」と自分の正直な気持ちを言葉にしていたにもかかわらず、意識を取り戻して出てきた言葉はこれだった。
里奈「暉が行っちゃった。
広登と一緒に」
『EXODUS』25話
剣司に失恋した時と同じく、この時もキールブロックで暉に言ったのと同じ言葉を祖母、行美に言って、泣くべきだったのだ。
『EXODUS』で失恋、弟の死という心の傷を2つも負った里奈は、なんとか生きることにしがみついている状態だったのだろう。仲間を守るためにフェンリルを起動した時、生きる気力は残っていなかったのではないだろうか。
里奈「ごめん、暉」
『THE BEYOND』1話
機体は破壊される前に彗が里奈を引き寄せてその体を助けてくれたが、心は死んだも同然だった。そのため、里奈の心は暉と暮らしていて一番幸せだった頃-『EXODUS』が始まる直前-に逃げ込んでしまった。
『THE BEYOND』での里奈は一期26話以後の一騎と同じであり、里奈、暉、彗の関係も一騎、総士、真矢と全く同じである。
一期26話以後 | THE BEYOND | ||
昏睡 | 一騎 | 里奈 | |
生存 | 真矢 | 彗 | |
同化 | 総士 | 暉 |
一騎は暉が乗っていたマークツェンに乗っていることは仮死状態の里奈と関係しているのではないだろうか。
・史彦と千鶴
主人公でありながら一騎は家族との別れを経験していないため(母、紅音が同化されたのは一騎が2歳の時なので、一騎は死を理解できない)、『THE BEYOND』6話で史彦が亡くなり、一騎は親の死を経験すると思っていました。そのため、初見では史彦ではなくて千鶴が亡くなったことに衝撃を受けました。作品をよく見ていくと、史彦には生き続ける理由があり、千鶴には亡くなる理由があったので納得しました。
・史彦の罪
弓子「美羽をどこへ連れていく気ですか。
私から美羽を奪わないで」
『HEAVEN AND EARTH』
この言葉が史彦から赤紙を渡されたすべての親の気持ちであり、この後、史彦は弓子から銃で撃たれたことで、史彦の司令としての罪は償っていたのかもしれない。
・母と娘
弓子「あたしがデータを改ざんしました」
千鶴「弓子」
弓子「だってこのままじゃ母さん一人で」
一期18話
弓子「美羽をどこへ連れていく気ですか。
私から美羽を奪わないで」
『HEAVEN AND EARTH』
千鶴が史彦をかばったのは娘、弓子がアルヴィスと史彦の対して行った罪を償う気持ちがあったのかもしれない。
・「ガンダム」20話と「THE BEYOND」5、6話
『THE BEYOND』5、6話は『機動戦士ガンダム』20話「死闘! ホワイト・ベース」の物語構造を下敷きにしているように感じました。この2つには以下のような共通点があります。
- 主人公が監禁されている。
- 主人公は許可なしでは機体に乗れない。
- クルー間で意見が対立。
- 敵が白兵戦を仕掛け、主人公側に多大な犠牲が出る。
- 主人公側のメインキャラが犠牲になる。(21話)
ランバ・ラルの「どこも人手不足だからな」という台詞には吹き出しました。『THE BEYOND』3話、CDCで以下のような会話があったことを思い出しました。
容子「私たちエンジニアにまでアルヴィスを操艦させて。
早く増員してください」
溝口「羽佐間さんには悪いが、今はこれが限界だよ。
簡単に人が育てば苦労はない」
保「そろそろエンジニアの方も引退したいが。
今の我々にそんな贅沢は許されんか」
『THE BEYOND』3話
・一騎に残された時間
一騎「あと3年、それだけあれば覚悟だってできる」
『EXODUS』1話
一騎が人間として過ごした期間とその後、こそうしと過ごした時間は以下の通りである。
2151年06月28日:『EXODUS』1話
2151年11月23日:『EXODUS』26話
2153年 :マリスがこそうしを連れ去る
一騎は3年あれば覚悟できると言っていたが、すでに2年前後+5ヶ月という時間が経過していた。こそうしを奪還したことで一騎の時間が動き出したが、あと数ヶ月内で一騎はやるべきことをすべてやり、覚悟を決めることができるのだろうか。個人的に気になるのは真矢は『EXODUS』1話の時点での一騎の余命を知っていたのか否かである。
P.S. 11月に入って突然、頭の中で『THE BEYOND』第12話のジグソーパズルがスタート。この時、手元にあったピースは全体の40%くらいだったので一部分しか見えなかったのですが、『THE BEYOND』第4~6話の公開が始まったことで手元のあったピースが80%に増え、現在はだいぶ見えてきている状態。
※1 三人の童子は日本で上演される場合、女性歌手が演じることが多い役ですが、海外では少年合唱団員が演じることの方が多い役です。