2017年12月10日ニコニコ生放送一挙の感想

 ニコ生一挙の2日目、『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』のメモ。1日目同様、やはり13時間+24時間で全部見るのは難しく、実際に見られたのは『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』の2/3ほどでした。諸事情により、放送順とは逆に『EXODUS』、『HEAVEN AND EARTH』の順で見ました。

 

・『EXODUS』1話

一騎「ここは穏やかで大事な仲間がいた場所だから、
   俺はここにいるよ」
『EXODUS』1話

 ずっといなくなりたかった一騎がここにいると言えるようになったにもかかわらず、最終的には未来をつかむために竜宮島を出る決断をさせる(ドラマCD『THE FOLLOWER2』参照)という鬼畜な脚本。

 

・『EXODUS』2話

ナレイン「今は大将だけで100人はいる。
     もはや階級に意味はない」
『EXODUS』2話

 先日、高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)を読んでいたら、こんな一文があった。

 カチン軍では将軍は総帥のトゥ・ジャイ議長(少将)ひとりしかいないが、規模が二十分の一であるナガ軍には十人もいるという。カチン軍に換算したら二百人だ。

 要はナガ軍で階級のインフレが起きているという話なのだが、人類軍の状況を思い出してしまった。

 

・『EXODUS』2話、3話

ビリー「やあ、おじゃまするよ」
 里奈「なんでこいつらが来るの」
『EXODUS』2話

 戦場で人類軍に対して悪感情を持っている里奈を助けたのはビリーだった。『EXODUS』3話、喫茶楽園でも里奈とビリーが向き合って座っている。

 里奈とビリーを通して竜宮島と人類軍が対立していることを表現しているのだろうか。

 

・『EXODUS』4話

カノン「一騎の体を蝕んだ、化け物だ」
 容子「それがファフナーなのよ、カノン」
『EXODUS』4話

 カノンは人類軍出身で竜宮島の住人ではないため、島のファフナーを本当に理解していなかった。カノンが島のファフナーの本質を理解したのはSDP発現後だった。

カノン「ファフナーが怖いなんて初めてだ」
『EXODUS』15話

 

・『EXODUS』7話

 フェストゥムの攻撃でいなくなった弓子は美羽が望んだことでアショーカから時限付きの命を得た。人として生きていた時の弓子は美羽が理解することができなかったが、アショーカの力で命を得て生きた弓子は、彼女自身がなりたかった美羽の母親像なのかもしれない。

 

・『EXODUS』9話

 シュリーナガルから海神島まで旅した結果、最終的に人類軍のファフナーパイロットはパペットだったミツヒロを除いて全員いなくなった。そのため、シュリーナガルでマークザインが見せた奇跡を目の当たりにし、その意味がわかった人はオペーレーターで生き残った者だけなのかもしれない。結局、マークザインの奇跡は一期の時と変わらず、口伝で伝えられる伝説の域なのだろう。

 

・『EXODUS』14話

 ダスティンがカマル司令を暗殺したが、新国連上層部と考えの合わない司令官を直轄の部下を使って抹殺する姿はイドゥンがミョルニアを消したシーンを思い出した。新国連はフェストゥムと同じようなやり方で人類軍の考え方を均一化していると感じた。

 

・『EXODUS』19話

 暉「俺も先輩みたいにあいつらを撃ちます」
真矢「わたしが里奈ちゃんに怒られちゃうよ」
 暉「遠見先輩と一緒になりたいんです」
『EXODUS』19話

 人類軍を撃って真矢と同じ状態になりたいという暉の心情は、一期15話の総士が一騎に言った台詞「一つになろう、一騎」を彷彿とさせる。この物語で好意を持つ相手と同じになりたいと思うことはフェストゥムの同化に値する行動と見なされ、相手との距離は縮まるどころか逆に遠ざけられる。一騎と総士は5年近くも疎遠になり、この後、暉は真矢に思いをぶつけるが、真矢から恋愛相手としては見てもらえなかった。

 

・『EXODUS』26話

  一騎「お前の心は今どこにいる、ミツヒロ」
ミツヒロ「俺が……アイを……殺した」
『EXODUS』26話

 ミツヒロは一騎の言葉でベイグラントのコアの少年が消した記憶を取り戻した時、自分の犯した罪を自覚したが、堀川惠子『永山則夫 封印された鑑定記録』(岩波書店)と ギッタ・セレニー『人間の暗闇―ナチ絶滅収容所長との対話』(岩波書店)という2冊の本を思い出した。どちらも罪人が第三者に自らの人生について話すことによって最終的に自らの犯した罪を認識する。つまり一騎はミツヒロに対して行ったことはこれと同じことということになる。実際にやると答えにたどり着くまでに時間が掛かることを一瞬で答えにたどり着くというフィクションならではの荒業を使っているが、この方法を使うとその真意を汲み取るのが難しいという欠点がある。

 

 一騎はこれまで自分の経験を伝えることで相手を救済してきた。一期17話のカノン、『HEAVEN AND EARTH』の来主操。しかし、島の祝福を受けた一騎がミツヒロを救うために行った行為は一期15話で乙姫が行ったのと同じものだった。

  乙姫「私が思い出させてあげる。
     本当のことを」
一期15話

  一騎「お前の心は今どこにいる、ミツヒロ」
『EXODUS』26話

 一騎の場合は総士を傷つけた上に怖くなって逃げたという記憶だけが残り、その罪悪感に苦しみ続けていたが、総士が一騎を同化しようとしていたという衝撃の真実と「総士はね、一騎に感謝してるんだよ」(※1)という乙姫の言葉によって救済された。しかし、一騎とは逆にミツヒロは消された記憶を取り戻した結果、ベイグラントのコアの少年に操られていたとはいえ、自らの手でアイを殺した罪悪感に苛まれることになった。

ミツヒロ「俺が…アイを…殺した。
     頼む、マカベ。
     俺を消してくれ」
『EXODUS』26話

 一騎は総士の左目に傷を与えることで、フェストゥムとの半同化状態にあった総士を人にした時と同じく、ミツヒロの心に傷をつけることで、パペットとして生まれたミツヒロに心を与えたのだろう。

 

・新国連側の物語

 竜宮島及びアショーカ側は望みをかなえる物語だとしたら、新国連側は兵士として戦場に赴くと人は変わるということを示した物語だった。ある者は戦場で想像をはるかに越える過酷な現実を目の前にしては心を失い、上官の命令を忠実に実行する兵士となった。またある者は上官の命令に疑問を抱き、命令違反をしたものの、その後、自分の良心に基づいて行動することになった。

 

・一騎と総士が追い求めたもの

一騎「あと3年、それだけあれば覚悟だってできる」
『EXODUS』1話

 一騎はファフナーに乗らなくても残りの命は3年と告げられたが、『EXODUS』1話の時点で現実を受け入れられていなかった。そのため、一騎は思わず七夕の短冊に心から望んでいることを書いてしまった。

 これこそ誰にも言えない一騎の本心だった。しかし、「一騎先輩、できました?」(※2)という里奈の声で我に返り、この短冊をもみ消した。それもなお一騎の生きたいという思いは強く、ナレインの提案に心動かされた。

ナレイン「我々のミールの祝福を受ける気はないかね。
     命の果てを越えて生きるために」
『EXODUS』18話

 一騎にとって『EXODUS』とは竜宮島のコアから与えられた命題「あなたはどう世界を祝福するの」(※3)に対する答えと自らが生き続ける方法を探し続す物語だった。

 

 一方、総士は北極ミールに同化された結果、一旦フェストゥムの世界へ行ったが、肉体を取り戻してこの世界に帰ってきた。総士はボレアリオス・ミールに保護され、そこで肉体を取り戻したため、その体は北極ミール側に所属しており、それ故、最初に総士の祝福について語ったのは北極ミールの欠片から生まれたアショーカに属するエメリーだった。

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
  総士「ぞっとしないな」
『EXODUS』14話

 エメリーから言われるまでもなく、総士自身、人として命を終える可能性が低いことはわかっていたと思う。だからこそ、総士は自分の言い聞かせるかのように人として生きることにこだわっていた。

総士「僕は人間として生き、命を終える。
   それもそう長くない」
『EXODUS』14話

総士「人として生きることが僕らの意思です。
   島のコアが生と死をミールに教えたように」
『EXODUS』18話

 総士にとって『EXODUS』とはフェストゥムを祝福し、フェストゥムからの祝福を受けて(※4)、人として命を終える方法を探す物語だった。

 

 一騎と総士は物語の最後に祝福するという形になるはずだが、一騎は祝福することを担保にして、つまり『EXODUS』では祝福せずに、生きたいという自らの望みをかなえた。竜宮島のミールが一騎の祝福について預言している。

カノン「お前は世界の傷をふさぎ、存在と痛みを調和させるもの。
    我々はお前によって世界を祝福する」
『EXODUS』24話

 一方、総士はベイグラントのコアの少年を祝福した。

 総士「コアの亡霊よ、感じるか。
    それが痛みだ。
    僕がお前たちに与える祝福だ」
『EXODUS』26話

 この後、総士がフェストゥムから受けるであろう祝福の内容について、総士がベイグラントのコアの少年を祝福する前に織姫が預言している。

 織姫「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、
    あなたとあなたの器が生まれ変わる。
    そういう未来が見えるの」
『EXODUS』22話

 しかし、この織姫の言葉だけでは総士と総士が最後まで憎んでいたマークニヒトと一緒に生まれ変わることになった理由が見えてこない。TVアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」 続編告知PV!の中にある本編では使われなかった総士の台詞「祝福を果たそう。マークニヒト」があれば、最終的に総士はマークニヒトを受け入れて一緒に祝福したため、織姫の預言通り、総士とマークニヒトが一緒に生まれ変わったことが視聴者に伝わったはずだ。初見時、『EXODUS』22話の織姫の台詞はネタをバラしすぎて悪手だと思ったのですが、『EXODUS』26話で丁寧に総士とマークニヒトの祝福について描いていれば、ありだと思った可能性が高い。事前情報ゼロで見たかったので、1クール放送終了直後に公開されたTVアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」 続編告知PV!は視聴せず、『EXODUS』全26話の放送終了後、それもかなり時間が経ってから見ました。このPVは確か2015年5月24日に開催された『「蒼穹のファフナーEXODUS」スペシャルイベント -痛み-』の開演前に流れていて、聞きたくなかったので耳を塞いだ記憶があります。

 一騎と総士の未来を決める上で重要な役割を果たす “祝福” 関連の台詞を削りすぎたため、終盤の流れがわかりにくくなってしまったことは否めません。

 

 ※ここで言う預言とは「キリスト教で、神の霊感にうたれたものが神託として語ることば」(『精選版 日本国語大辞典』より)という意味で使用した。

 


・『HEAVEN AND EARTH』

一騎「俺たちは人とは戦わない。
   お前たちと一緒に世界中と戦うなんて望まない。
   そんなことしたらそれはもう俺じゃない」

 一騎は操に対して戦わないと断言していたことを考えると、第四次蒼穹作戦のブリーフィング時の一騎の言葉は恐ろしい。

一騎「必要なら、俺が人類軍と戦う」
『EXODUS』25話

 人類軍と戦う時の罪をすべて背負った真矢に対する一騎なりの気遣いだと思うけど、新国連側の物語に書いた通り、戦場は人を変えるという部分にも通じる。当然、一騎はこの後、史彦から諌められる。

 

※1 一期15話。

※2 『EXODUS』5話

※3 『EXODUS』4話、島のコアの台詞。

※4 『EXODUS』14話、エメリーは総士にこう言っている。
   「あなたの祝福が、そう(人間として生き、命を終える)であることを祈ります」

 

P.S.
 本日(2017年12月24日)19時半、ニコニコ生放送で『蒼穹のファフナー』1話~4話の生放送があります。(URL: http://live.nicovideo.jp/watch/lv309663329)アニメちょい見生放送というdアニメストア ニコニコ支店の宣伝の企画ですが、ファフナーはよく16話まで見てと言われる作品なので4話までだとちょっと苦しい。