【蒼穹のファフナー】アルヴィス-補足

 【蒼穹のファフナー】アルヴィスを書いた後、読んでいた本の中に、新国連とアルヴィスの政治組織の違いからアルヴィスが平和な世界を志向している理由を明確に説明している文章がありました。

 

 スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』(青土社)でイマヌエル・カント『永遠平和のために』(1795年)を取り上げていた。この本によると民主主義国家は平和を志向する傾向にあり、独裁国家は戦争を志向する傾向にあるという。

 民主制とは、そもそも非暴力を中心に構築することが意図された政治体制であることだ。民主的な政府は国民の権利を守る目的でのみ権力を行使する。(中略)民主制は戦争を回避する傾向にあることだ。
スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』

 民主主義の考えに則って運営されているアルヴィスは偽装鏡面を使って人類とフェストゥムの前から存在を消すことで平和な世界を再構築しました。そして、大人たちは世界から失われた平和という文化を子どもに受け継がせようとしました。アルヴィスは一貫して人類に対しては攻撃せず、フェストゥムに攻め込まれたときのみ戦っていました。

 一方、独裁国家についてはこの本の中で以下のように説明していした。

 戦争することで利益を得るのは権力者であって、そのコストは国民が負担しなければならない。独裁制では「戦争は世界の日常茶飯事の一つとなる。それは国家の元首が国家の一員ではなく、国家の所有者だからである」
スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』

 2114年、北極ミールが地球に到来し、世界中にフェストゥムが出現。フェストゥムと戦い続けるために世界は新国連の支配する独裁国家となりました。しかし、人類を救うためのフェストゥムとの戦いはいつの間にかフェストゥム因子に感染しないたった5万人の命を救うことにすり替えられ、フェストゥム因子に感染した全人類の命を使って、アルヴィスとフェストゥムを世界から抹殺する計画に変わっていました。まさに独裁者であるヘスターが利益を得る戦争に変化していました。もとも、この計画は最終段階で新国連の支配下にあったベイグラントのコアが離脱したため、頓挫しました。

 

 ここまで書いた後、カント『永遠平和のために』を全文読みました。アルヴィスと新国連が取った行動を想起させる文章がいくつかありました。新国連は「第一章 国と国がどのようにして永遠の平和を生み出すか」で挙げられた6項目のうち、以下の2つを守っていませんでした。

   その5  いかなる国も、よその国の体制や政治に、武力もって干渉してはならない。(※1

 新国連は一期で竜宮島を占領し、『HEAVEN AND EARTH』では竜宮島に対して核攻撃を行いました。

   その6  いかなる国も他の国との戦争中に将来の和平にあたって相互の理解を不可能にするようなことをしてはならない。たとえば殺し屋を雇ったり、毒薬を用いたり、降伏条約を無視したり、背信をそそのかしたり、等々。(※2

 『EXODUS』17話でアルゴス小隊隊長、ダスティン・モーガンは一騎に対して暗殺者を差し向けました。

 

 一方、アルヴィスは「第二章 国家間の永遠平和のために、とりわけ必要なこと」、その3「世界市民法と友好の条件」には以下のような一文があります。

 その外国人が平和的にふるまっているかぎり、敵意をもって対処してはならない。(※3

 ミツヒロ・バートランドとペルセウス中隊は新国連所属、来主操は北極ミールから生まれたフェストゥムといずれもアルヴィスと敵対する勢力に属していますが、対話を求めて竜宮島を訪れたため、アルヴィスはこの文章を遵守した行動を取りました。

ミツヒロ「軍部の愚かさを埋め合わせるための和解だ。
     人類軍の作戦予定を教えよう」
  史彦「上陸はお前一人、滞在期間は最長で48時間だ」
一期18話

  史彦「客が目を覚ました」

  史彦「お前との対話は、引き続き可能か」
   操「うん」
『HEAVEN AND EARTH』

ナレイン「我々から攻撃してはならない」

  真矢「ケイトスへ。
     誘導に従ってください」
ナレイン「アローズへ、全面的に従う。
     かわりに貴艦の指導者に伝えてほしい。
     我々の望みはお互いの希望を出会わせることであると」

『EXODUS』1話

 『永遠平和のために』を通してアルヴィスと新国連の行動を分析すると、この2つの組織の違いがより明確になります。また、この本の中で描かれた理念は国際連盟や国際連合の礎になっていますが、皮肉なことに『ファフナー』に登場する新国連は真逆の存在へと変貌してしまいました。

 

※1 カント著・池内紀訳『世界平和のために』(集英社)から引用。

※2 カント著・池内紀訳『世界平和のために』(集英社)から引用。

※3 カント著・池内紀訳『世界平和のために』(集英社)から引用。

 


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