2022年12月にGYAO! とRチャンネルで一期を見直した時の感想です。『THE BEYOND』は一期と対になっている部分が多いので、この記事には『THE BEYOND』のネタバレが含まれています。
●真矢と総士
一期(9、11、12、13、17話)では何も知らない真矢が総士や大人に対して自分の考えを言っていたのに対して、『THE BEYOND』では何も知らないこそうしが美羽や大人に対して自分の考えを言っています。また、一期の真矢の言葉が感情的なのに対し、『THE BEYOND』のこそうしの言葉は論理的です。
●家を出る
弓子は道生が竜宮島に帰ってきた後、千鶴の反対を押し切り、道生と一緒に日野家で暮らすことを選んだ。
弓子「いいじゃない、一緒に住むぐらい」
千鶴「島の人たちにどう思われるか、少しは考えて」
弓子「考えてるわよ」
千鶴「明日は子どもたちと海へ行くんでしょ。
引率者として恥ずかしくないの」
弓子「もういい、勝手に出てく」
一期18話
弓子が家を出ることを聞いた時、真矢が気にしたのは弓子が道生と一緒に住むことではなく、自分のご飯だった。
弓子「あたし、今日からここに住むから」
真矢「そ、そんな。
うちのご飯、誰が作るの」
弓子「やあねえ、あなたに決まっているじゃない」
真矢「えっ、えー」
一期18話
『THE BEYOND』12話、美羽とこそうしが家事(主に食事)の分担について話し合っていた。
美羽「ねえ、やっぱりアルヴィスに住むの?
こそうし「君ん家だと家事の分担が不公平だ。
僕がほとんど料理してるじゃないか」
美羽「総士がこだわるからでしょ」
『THE BEYOND』12話
この時、真矢はこそうしと美羽の会話に入り、真矢は遠見家ではなく、日野家で暮らすと明言した。
真矢「分担は減るよ。
あたしも住むから」
こそうし「遠見さんの家は?」
剣司「遠見先生の病院を俺が借りるんだ」
『THE BEYOND』12話
一期の真矢は自分で食事を作る、つまり自分のことは自分でやるという考
『ファフナー』では「料理をする」と「家を出る」が大人になった証として扱われていました。一期の時に料理が得意だった一騎は『HEAVEN AND EARTH』の時、史彦に対して以下のような提案をしました。
一騎「ここで一緒に住むとか、遠見先生と」
『HEAVEN AND EARTH』
しかし、史彦は一騎の提案を拒否しました。
史彦「俺の願いは、この家がいつまでもお前の帰ることのできる場所であることだ」
『HEAVEN AND EARTH』
つまり、史彦は一騎が大人になることを拒んでいたということになります。
●総士の変化
一期5話、総士は一騎が真矢と会わないように命令しました。
総士「一騎、今日は向こうだ。
一騎「えっ、なんで」
総士「シミュレーションの前に前回のトレーニングを行っておけ。
わかったな」
一期5話
一期19話、総士は一騎に真矢を家に送り届けるように命令しました。
一騎「総士、助けろ」
総士「すまないが今忙しい」
一騎「はあ?」
総士「お前が責任を持って遠見を送り届けろ。
戦闘指揮官としての命令だ」
真矢「総士君と乙姫ちゃん、まったねー」
乙姫「素直じゃないな、総士」
一期19話
一期5話で総士が一騎にした命令は自分の感情そのものだったのに対し、一期19話で総士が一騎にした命令は自分の感情とは逆のものでした。総士は一期5話から一期19話の間に、自分の素の感情を他人にぶつけないことを学んだのです。
●溝口と真矢
溝口は真矢の恋を後押ししているように見えます。
真矢「溝口さん、なんであたしを連れっててくれるんですか」
溝口「そのほうが一騎も喜ぶだろう」
一期13話
溝口「てなわけで、あとは任せたぞ」
一騎「ん、え?」
溝口「大事な戦友になるんだ。
うちまで送ってやんな」
一期19話
●自分の経験を伝える-真矢-
真矢は自分が最初にファフナーに乗った時に感じたことをこそうしに伝えました。
真矢「あれってファフナーに乗るっていうよりファフナーになるって感じ。
違う自分になるの」
一期19話
真矢「ファフナーは操縦しなくていい。
自分がファフナーになるの。
代わりに心も体も影響を受ける。
命を奪われるくらいに」
『THE BEYOND』5話
●自分の経験を伝える-咲良-
咲良「私が悪かったから。
私があの時、もっと早くコックピット・ブロックを外していれば」
一期9話
咲良「あたしが助けられなかった奴の名前だよ」
一期19話
甲洋を助けられなかった咲良を責める人はいないが、咲良は甲洋を助けられなかったことについての責任を感じていた。そのため咲良は『HEAVEN AND EARTH』の時、剣司に以下のような言葉をかけることができたのです。
咲良「衛がいなくなったのはあんたのせいじゃない。
あたしの体も誰のせいでもない。
でもあんたが責任感じるのもわかる」
『HEAVEN AND EARTH』
この言葉は甲洋を助けられなかったという経験から咲良が導き出した結論になります。
咲良「だから、あたしも一緒に背負わせなっての」
『HEAVEN AND EARTH』
●レアリア
史彦「早くパイロットを脱出させろ」
総士「やってます」
一期19話
このシーンを見た時、一期6話の以下のシーンを思い出しました。
総士「脱出しろ、羽佐間」
翔子「皆城君、わたし、フェンリルを使う」
音声「コード認証、フェンリル起動」
総士「羽佐間」
音声「フェンリル解除コード、アクセス不能」
一期6話
フェンリルという言葉はこの場面が初出であり、その言葉の意味を説明をしていないため、言葉の意味がわからない。 一方、一期19話の台詞は誰もが知っている言葉を使っているのでわかりやすい。一期6話の脚本を書いた脚本家は、視聴者もファフナーのパイロットが持っている操縦に関する知識を持っていると考えて脚本を書いたということになります。
SF、ファンタジー、歴史物といった現代日本を舞台にしていない物語を書く場合、言語外現実(レアリア)を意識する必要がありますが、一期11話までの脚本を書いた脚本家は言語外現実(レアリア)という考えを持っていなかったように感じます。
●ポスト・THE BEYOND
『THE BEYOND』ではこそうしが美羽に対して、以下のように問いかけました。
こそうし「君は君だ。
君がどう世界を祝福するか、見せてみろ」
『THE BEYOND』11話
この台詞を聞いた後に一期を見直すと、以下の台詞が引っかかりました。
広登「あんた、ほんとはファフナーで戦ったことないんだろ。
そういうのってさ、男らしくないんじゃないの」
一期10話
保「男の初陣なんだ、行かせてやってくれ」
一期12話
咲良「うーん、まだ決着ついてないと思うけど、
待っててやりますか、女の子らしく」
真矢「男の子か」
咲良「頑張れ、頑張れ男の子」
一期21話
一期ではその人が何者であるかを決める要素の中に、性別が含まれていたということになります。