【蒼穹のファフナー EXODUS】変態

エメリー「あなたはフェストゥムにとって抜くことのできない棘。
     痛みを教える存在だとわたしたちのミールが言ってます」
  総士「そのせいで敵を別の存在に進化させてしまった。
     責任の一端は僕にある」
『EXODUS』14話

 総士がフェストゥムの世界に行った結果、フェストゥムだけでなく総士自身も変化していた。

 

・ANIMUS

 ミールは他のミールに同化されない限り、この世に永遠に存在し続ける。しかし、そのコアの肉体には寿命があり、生存限界を迎えるとコアは生まれ変わる。コアはその姿が男性であっても女性であっても、生物的には子どもを生む存在、つまり女性ということになる。

 

 イドゥンは総士の体を同化したが、心がフェストゥムの世界に行った。2年後、総士は体を作り直してでこの世に帰ってきたが、総士は変化していた。

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
『EXODUS』14話

  織姫「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、
     あなたとあなたの器が生まれ変わる」
『EXODUS』22話

 エメリーと織姫の言葉をまとめると、総士は「この世に永遠に存在し、生まれ変わる存在」であり、コアに近い存在(※1)になったということになる。

 『EXODUS』8話でマークニヒトを載せた CCTS の名称は ANIMUS だった。アニムスはユング心理学で「女性の人格のうちにある男性的なものが人格化したもの」(※2)を意味する言葉である。総士の生まれた時の生物としての性は男性だったが、フェストゥムの体になってこの世に帰ってきた時、コアに近い存在になったため、総士の生物としての性は逆転し、子どもを生む存在、つまり女性に変化したということになる。『HEAVEN AND EARTH』で帰還後の総士の状態を表にすると以下のようになる。

姿:
心:
性:

 マークニヒトを運搬した ANIMUS という CCTS の名称は、総士は生物としては女性だが、その心は男性という状態を表していたのである。

 

・木

ナレイン「我々にとってミールは巨大な木だ」
『EXODUS』3話

 竜宮島ミールは空気に変化したが、アショーカは木になった。アショーカは神話や宗教に出てくる巨大な木になぞらえられた。

ナレイン「聖なるアショーカ、無憂樹、世界樹と呼ぶものもいる」
『EXODUS』5話

 ナレインはミールとフェストゥムの関係を木になぞらえて説明していた。

ナレイン「フェストゥムはその木によって生かされ、また木を成長させる生命だ」
『EXODUS』3話

 ナレインは木を通してフェストゥムの命を見ていたが、木には命だけでなく死のイメージもつきまとっていた。

人間が木から生じたと主張する神話がある一方、うつろな木の中にひとを埋葬する風習もあった。そのためにこんにちにいたるまで柩のことを「死者の木」ということがあるのである。
C. G. ユング『変容の象徴-精神分裂病の前駆症状』(筑摩書房)

 

  織姫「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、
     あなたとあなたの器が生まれ変わる」
『EXODUS』22話

 織姫の言葉通り、総士は海神島に根付いたアショーカの根元に力尽きて座り込んだマークニヒトのコックピットの中で生まれ変わった。

 総士が生まれ変わった場所は生と死の両方の意味を持つ木の根元ということになるが、木は母をも象徴していた。

木が母の象徴の主要なものであることを考えるなら、この埋葬法(うつろな木の中にひとを埋葬する風習)の意味は理解できるだろう。 死者は再生するためにいわば母のなかへ包みこまれる。
C. G. ユング『変容の象徴-精神分裂病の前駆症状』(筑摩書房)

 総士はコアに近い存在になったことで生物的には女性になり、アショーカという母に包み込まれ、子宮の位置にコックピットのあるマークニヒトの中で死んだ後、生まれ変わった。総士は母のイメージが幾重にも重ねられた場所で生まれ変わったのである。

 

 

※1 『EXODUS』公式サイトの SPECIAL / CHARACTER / 皆城総士には「その肉体はすでに普通の人間のものではなく、島のコアに近い存在になっている」という一文がある。

※2 アニムスの説明文はC. G. ユング『変容の象徴-精神分裂病の前駆症状』(筑摩書房)P279~P280から引用。