「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第7~9話PVの感想

・初見の印象

 『THE BEYOND』第7~9話のPVを見た後に思い出したのは、R・シュトラウスの歌劇『影のない女』で皇后が父に突きつけた台詞。

Kaiserin
Ich―will―nicht!―

 直訳すれば「私はしません!」(※1)。どんな状況であっても、自分の意に沿わない要求に対してはノーと言い続けること。これは『ファフナー』を貫くテーマそのものである。

 

・証明

   彗「なぜだ。なぜ島を追跡できる」

  零央「敵が総士の心を読んでいる可能性は」

こそうし「どうせ信じないんでしょう」
『THE BEYOND』第7~9話PV

 アルヴィスはマレスペロに育てられたこそうしの言葉を信じていない。こそうしがアルヴィスの信頼を勝ち得るためには、マレスペロが情報を得ている存在を特定し、こそうし自身はマレスペロと繋がっていないことを証明しなければならない。

 

・一騎

  一騎「行くな。
     お前が導く未来がある」
『THE BEYOND』第7~9話PV

 アルヴィスの人間はこそうしの言葉を信じていないが、なぜか一騎だけはこそうしを信じていた。しかし、目の前で妹を殺す、という残酷なことをした一騎の言葉はこそうしには届かない。

 

・マリス

 一期~『EXODUS』の一騎、総士、真矢の関係は『THE BEYOND』でこそうし、マリス、美羽に引き継がれた。

 

 総士は一騎と真矢をどう思っていたのだろう。

  乙姫「一騎と真矢、両方危険になったらどちらを優先する」
  総士「全員だ」
一期19話

 総士にとって一騎と真矢は同じように大切な存在だったことがわかる。一方、真矢は一騎と総士では一騎の方が好きだった。

  弓子「ねえ、どうして真壁君、呼んだの」
  真矢「えっ、別に。
     どうしてって」
  弓子「んー、あたしの妹は皆城君より真壁君の方がお好みなのねえ」
一期10話

 

 マリスは美羽とこそうしに執着していた。

 マリス「君たちが願っていた家族を作ったよ、美羽。
     君もおいで。
     この平和な島に」
『THE BEYOND』2話

こそうし「お前をずっと親友と思ってた」
 マリス「僕もだ。
     今でもね」
『THE BEYOND』5話

 美羽もこそうしに執着していた。美羽は迷うことなく、こそうしとエスペラントのやり方で会話した。

  美羽「小さい頃、こうしてたくさんお話したの、覚えてる」
『THE BEYOND』3話

 こそうしが海神島に戻ってからはアルヴィス内に暮らすこそうしと一緒にいて、真矢には一緒に暮らしたいとお願いした。こそうしがルヴィと話し、自分を変えようとした時、美羽はこそうしにこう言った。

  美羽「うちに来ていいんだよ、総士」
『THE BEYOND』5話

 

 一期と『THE BEYOND』の三人のキャラクターの好意を図に表すと、以下のような形になります。

  総士真矢   → 一騎
     → 一騎

 マリス美羽   → こそうし
     → こそうし

 この図からこそうし=一騎、真矢=美羽、マリス=総士となっていることがわかります。マリスと総士を比較すると、一騎、真矢は総士がこの世を去るまで友人でしたが、こそうし、美羽はマリスの友人から敵へと変化しました。総士は感情を表に出すことはほとんどありませんでしたが、『THE BEYOND』第7~9話PVを見るとマリスは感情的な人間として描かれています。つまり、マリスは総士をひっくり返した存在ということになります。

 

 

※1 訳文はR・シュトラウス/歌劇『影のない女』(ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン放送交響楽団)の解説書に掲載されている対訳を参考にしました。