冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場(集英社インターナショナル)

 2015年8月24日、妻へのDV容疑で冲方丁の逮捕が報道されました。冲方丁が逮捕されたのはその2日前の8月22日夜に開催されたイベント「冲方サミット」の終了後なのですが、その「冲方サミット」では特に変わった様子はなかったので(ニコニコ生放送での配信を見ていた)、このニュースを聞いた時はすごく驚きました。その後、この事件は8月31日付で処分保留で釈放となり、10月16日に不起訴処分となったことが報道され、幕を下ろしました。

 

 この事件は『EXODUS』の2クール目の放送の約1ヶ月前に起きましたが、場合によっては放送延期もあり得ると思いました。当然ながら、報道されるのは警察がマスコミにリークした内容であり、釈放後に冲方丁が出したコメントも当たり障りのないもので、マスコミの報道では事件の全容は見えませんでした。そのため、ブログではこの事件について一切触れませんでした。

 逮捕された冲方丁が自分の身に起きたことについて書いたのがこの本です。ファフナー関連の内容は以下の通り。

  • スポンサー有りきのアニメの企画も抱えていたため、冲方丁という作家にダメージを与えるにはこれ以上ないタイミングで起きた事件だった。
  • 留置所で他の作家が書いたある作品のノベライズのゲラチェックを行ったとの記述がありますが、これは諸般の事情で没になったファフナーのノベライズのことだと思われます。

 逮捕される少し前に刊行された文庫本のセールスが好調だったというのには驚きました。この本が書かれた時点で公にできることはすべて書いてあると思います。私はこの本を読んで、やっと事件の全容が見え、腑に落ちました。

 

 元受刑者による刑務所での体験記は数多く書かれていますが、警察に逮捕された時の状況について詳しく書いた本は少ない。自分が逮捕される可能性はゼロではないので(冤罪は誰にでも起こりうる)、一読する価値はあると思います。