ワームスフィア

 フェストゥムによるワームスフィアの攻撃はノベライズで以下のように説明されている。

 それは、一見して巨大な黒い球体に見えた。凄まじい勢いで回転しているらしく、周囲にある木々がその勢いに巻き込まれて盛大に葉を散らした。
 かといって、その球体が、どこかから投げつけられたというのではない。
 何もなかった場所に、突然、その球体が発生したのだ。
 そしてその黒い回転の中に何もかも呑み込み――わずか数秒で消えていた。
 球体が発生した場所にあったものが、全て。破壊されたのではなく――消えたのだ。そこにあった壁が、家が、道路が、一瞬で消滅し、球体にえぐれた跡を残すばかりだった。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(ハヤカワ文庫)

 一期放送時、ワームスフィアによる攻撃をどこかで見たことがあると思った。しばらく考えた後、それは岩明均『七夕の国』(小学館、1996年~1999年)だった。『七夕の国』は紙に小さな穴を開けるという超能力を持つ大学生の主人公。ある日、講義を取ったことのない同じ大学の教授から呼び出され、教授の研究室を訪れたが、教授はあいにく調査に出かけたまま、戻ってきていなかった……。

 主人公のような力を持つ者は「手が届く者」と呼ばれるが、彼らが使う力がワームスフィアそっくりなのである。「手が届く者」はこういうものを作ることができる。


『七夕の国』3巻 P179(小学館)

 目撃者は「大きくて丸いフワフワした物」(『七夕の国』3巻)と描写していた。これが物体にぶつかるとその部分が切り取られてしまう。


『七夕の国』3巻 P200、 P201(小学館)

 

 岩明均と言えばアニメ化、映画化された『寄生獣』(講談社、1988年~1995年)がよく知られ、現在は『ヒストリエ』(講談社、2003年~)を連載中。『七夕の国』はその2作品と比較すると知名度が低く、知っている人は少ないと思われます。