絵コンテ、演出は多田俊介。ファフナーは初参加。「黒子のバスケ」と「スタミュ」の監督で、スポーツ物を多く手がけているとのこと。残念ながら絵コンテ、演出とも見たことがありません。
アイ「私たちごと撃ってきた」
ビリー「交戦規定アルファだ」
ミツヒロ「退却だ、総員退却しろ」
真矢「人に攻撃されてるの」
暉「なんだよ、これ」
『EXODUS』15話
竜宮島のパイロットは人類軍の交戦規定アルファの存在を知っていたのだろうか。『EXODUS』12話で溝口さん、総士、一騎が話し合っている場面があり、そこで総士が交戦規定アルファについて触れていた。
溝口「心配なのは目的地にいる人類軍さ。
敵の撃退が伝わってなきゃ。
俺たちに向かって皆殺しの爆弾を飛ばすかもだ」
総士「交戦規定アルファというやつですか」
『EXODUS』12話
アイ、ビリー、ミツヒロと暉の反応を比較すると暉は交戦規定アルファの存在を知らないように見える。もし溝口さんがパイロットに教えてなかったとしたら、作戦上のミスだと思う。
一騎「行ってくれ。こいつは俺がやる」
総士「なんだと」
一騎「ニヒトなら行ける! 総士」
『EXODUS』15話
一騎の成長がわかるシーン。一期の一騎なら総士が引き止めようが自分で助けに行っちゃったよなあと思った。『EXODUS』でも戦場に戻った一騎は焦り過ぎで、『EXODUS』12話で「俺も出る」と言って総士に引き止められ、『EXODUS』13話で「俺達が出ていれば助けられた。なんのために二人共ここにいる!」と言ったら溝口さんに視線でたしなめられた。この時、一騎は自分にも限界があり、人にはそれぞれ役割があることを理解し、受け入れたのだと思う。
総士「飛べ、マークニヒト」
『EXODUS』15話
総士とニヒトの間には相変わらず一体感はない。ファフナーでは唯一、パイロットと機体が別の存在となっているので、違和感を感じる。総士がマークニヒトの存在を受け入れ、一体化する日は来るのだろうか。
総士「去れ、さもなくばこの虚無の申し子がお前たちを無に還すぞ」
『EXODUS』15話
ニヒトに乗ると総士は相変わらず中二病な台詞を言っているけど、ニヒトの攻撃はフェストゥムと同じく同化とワームスフィアなので、人が無に還ってしまう。その言葉はあながち嘘ではなかった。
総士「よくも人類同士。愚かなことを。」
『EXODUS』15話
『EXODUS』13話の「そいつはミールに等しい力を持ち、人の振りをしながら人を殺す、本当の怪物だ」や14話の「軍事的知識を持つ何者か、もしくは人の思考をかつてなく理解する敵の仕業」は明らかにフェストゥムの世界を見た人の言葉であり、総士の視点は他の人間とは少し異なるように感じる。『EXODUS』14話で今まで「存在と無」と言ってた言葉を総士は「無と存在」と言い換え、明らかにフェストゥムの側からの視点で話している。
『EXODUS』5話で真矢に「信用できないと思ったら、即、撤退しろ」と言っていることからもわかるように、また人類軍を見る視線は誰よりも醒めている。当然、この時も総士は誰よりも客観的に状況を見ているので、人類軍の挑発行為には乗らない。ニヒトの力を使えば人類軍など瞬殺できるので威嚇行為のみ。人類軍から見えればワームスフィアから姿を現し、ワームスフィアで攻撃するニヒトの姿はまさにフェストゥムそのもの。
暉「広登がさらわれたんです。
助けに行きましょう。
あいつはきっとまだ生きてる」
総士「その可能性を否定する気はない」
『EXODUS』15話
作中での広登の死の認定は弓子と同じくおそらく物語の終盤に持ち越し。ドラマCD『THE FOLLOWER』で弓子が自身の死を娘の美羽が気がついていないことについてこう言っている。「いつか自分で受け入れる。もし伝えなければいけないときは私が言うわ」と。身近な人の死を受け入れるのには時間がかかるけれど、この作品では人が死を受け入れていく過程を描くことを選んだ。この回の最後で暉が竜宮島へ向かう高速艇が飛び立つ場面を撮影し「広登…必ず助けてやるからな」と言って広登の生存を信じつつ彼の役割を受け継いでいる。おそらく美羽と同じく暉も完全に広登の後を継ぐ者になった時に広登の死を受け入れることになるのだと思う。
あと、この場面で総士が暉に言う言葉がとてもいい。おそらく一期の総士にはこんな言葉を言うことはできなかった。
一騎「遠見、暉から聞いた。
みんなを助けるためにやったって。
遠見一人に背負わせる気はない。
また同じことになったら、次は俺がやる」
真矢「そんなのやだよ」
一騎「遠見…」
真矢「おかしいの。悲しいのに涙が出なくて」
一騎「先に、島に帰る気はないか」
真矢「大丈夫。あたしは大丈夫だよ、一騎くん」
『EXODUS』15話
ジーベンのそばに真矢が座っているという『EXODUS』13話と同じレイアウト。
『EXODUS』13話
『EXODUS』15話
「ファフナーがお前らで、お前らがファフナーだ」(『HEAVEN AND EARTH』の剣司の台詞)だとすると、傷だらけのジーベンは真矢の本当の状態で、13話と15話の一騎と真矢の立ち位置の違いが二人の間の心理的の距離を表現しているのだろうか。
ここで15話で一騎と真矢の立場が逆転。『EXODUS』の1クール目では一騎が戦わないで済むように真矢が戦うという形だったけど、ここで一騎が真矢のかわりに俺がやると告げた。『HEAVEN AND EARTH』で一騎は操に「俺たちは人とは戦わない」と言っていたけど、織姫から「美羽が願うものすべて守りなさい」(6話)と言われ、美羽から「皆を守らないと、大きなお星様が来た時、もっと悪いことになるよ」(10話)と言われたので、人と戦うことに対して迷いがないのだと思う。また、14話で総士が真矢に「言いたいことを口にするといい」と言っているように、この二人はお互いに相手に対して本音を言えない状態が続いている。
そして、真矢がついに人を殺めてしまったが、真矢はその苦さを静かに一人で飲み込むことを選んだ。おそらく時を経て別の形になって表面化するのだと思う。
10話での一騎の「みんなと島に帰ってほしい」は真矢の気持ちを理解していない最低の言葉だったけど、13話で一騎は自分の限界があることを受け入れ、真矢に謝った。その結果ここでの「先に、島に帰る気はないか」という一騎の言葉は真矢を気持ちをくんだものになっている。
一期開始時での三人の関係。
一騎と総士:会話が成立しない
一騎と真矢:互いに本音を言える
総士と真矢:総士は本音を言えない立場だが真矢が突っ込む
15話での三人の関係。
一騎と総士:なんでも話せる
一騎と真矢:互いに本音が言えない
総士と真矢:互いに本音を言える
つまり15話時点での一騎と真矢の立ち位置は一期開始時での一騎と総士と同じような状態。一騎と総士が互いを理解し始めた時に二人が別れるという流れになったので、一騎と真矢は互いの生き方を受け入れた時、互いに別の道を歩むということになるような気がする。
ナレイン「北西へ進み、大陸消滅後のモンゴル海峡を渡り、
ハバロフスク・エリアへ向かう」
『EXODUS』15話
「モンゴル海峡って何?」ってなるよね。公式サイトのSPECIALにSTORY&MAPという項目が用意されているけれど、工事中。この時代、世界はあちこち欠けまくっているので公式サイトに地図くらい載せてほしい。仕方ないので一期のリーフレットを引っ張り出して、世界地図と見比べた。この地図はDVD-BOXとBD-BOXのブックレットにも収録されています。
総士「新たな道が示された朝、大勢が失望に打ちのめされた。
人類からの敵意と荒野への道を受け入れられず、
安らぎを求める者もいた」
『EXODUS』15話
やはり1クール目でシュリーナガルの市民の大多数がミールと共に暮らすということをどう思っているのかを描くべきだった。そこがわかれば人類からもフェストゥムからも追われることに対する市民の絶望がわかりやすくなり、生きるためにはさらに旅を続けなければならないという決断に対する悲しい反応がもっと視聴者に伝わったと思う。
エメリー「皆城にお願いがあります」
総士「僕に?」
美羽「総士お兄ちゃんとなら呼べるから」
総士「呼ぶ?」
エメリー「私たちの援軍を」
真矢「援軍?」
一騎「島のことか」
エメリー「口では言えません。
敵に読まれないよう、皆城だけに伝えます」
総士「まさか!」
エメリー「誰にも言わないで。
目覚めてくれるかわからないけど、伝えることはできる」
総士「君たちの希望の地もわかった。
だがこれは賭けだ。
ギリギリの」
『EXODUS』15話
総士はフェストゥムの会話を聞くことができて、フェストゥムからは心が読めない存在ということかな。公式サイトにはコアに近い存在と書いてあるけど、妹の乙姫と同じような力を持っているということだろうか。1話から総士がどういう存在なのかは隠してあって徐々に明らかにしていっているので、これで全部ではないと思う。
『HEAVEN AND EARTH』で総士は一騎に「これは賭けだ」と言っていたけれど、その時と同じくギリギリの状況まで追い詰められている。
シュリーナガル組のこの先の道のりについて考えていて思い出したのがRush「Red Sector A」の冒頭の歌詞。
All that we can do is just survive
All that we can do to help ourselves is stay alive…
個人的にこの曲の歌詞の引用部分が『EXODUS』2クール目のテーマになるだろうと思っていたけど、直感が的中してしまった。ちなみにこの曲の歌詞はバンドのメンバーの母のナチスの強制収容所での体験を元にしています。