蒼穹のファフナー EXODUS 第14話「夜明けの行進」

 「3話だ、6話だ」と言われる中、秋の新番組が出揃っていないにもかかわらず、2クール目の1話に爆弾を落とすというシリーズ構成に完敗。1クール目最後の13話をクリフハンガーにしなかったことを高く評価しているんだけど、こう来るとは思わなかった。

 

・カマル司令の殺害

 ナレイン将軍の「もはや階級に意味はない」(『EXODUS』2話)という台詞を思い出してしまった。結局、新国連内部もぐちゃぐちゃで、バーンズ将軍が下手に動けない状況であることがよくわかる場面。

 

エメリー「見せつけてるんだ。私たちは無力だと」
『EXODUS』14話

 13話で広登が「無力だと思わされるから、憎むんだ」と言っていたけど、無力という言葉がこの後、キーワードになりそうなのでメモ。

 

・グレゴリ型について

 14話でミツヒロが「同化された人間の思念体」と言っていたフェストゥムのグレゴリ型。1クール目の放送終了後、『HEAVEN AND EARTH』までの資料を再読していたら、一期のサウンドトラック「NOW HERE」に収録されている冲方丁のインタビューにグレゴリ型のアイデアの元と思われる発言があった。

フェストゥム化した人間たちは「皆こうなろうよ」と、両方に対して言ってくるわけですよ。

 

・一騎、総士、真矢の位置関係

 一期からこの3人が並ぶ時は左から総士、一騎、真矢の順序だった。

一期 20話

一期 21話

EXODUS 14話

 

総士「生きる限り、僕らは何かを譲ってもらっているんだ。
   水も命も平和も」
『EXODUS』14話

 これは『RIGHT OF LEFT』の総士の台詞「僕たちは常に、誰かが勝ち取った平和を、譲ってもらっているんだ」を踏まえてのもの。

 

総士「人類が知る限り、
   この宇宙で存在が無にのまれても存在した情報は失われない」
『EXODUS』14話

 『EXODUS』4巻付属のドラマCD「THE FOLLOWER」の中でエメリーが「あなたの島のミールはすべてを記憶して保ち続けるんですね」と言っていたことを思い出した。ミールの持つ特質の一つとして同化したものの情報は持ち続けということか。竜宮島のミールは人と出会ったことによって変化し、人の記憶を保存し続けるという性質を持つようになった。

 

総士「僕は彼らの地平線と交わり、彼らの調和で再び存在を得た」
『EXODUS』14話

 調和という言葉は『HEAVEN AND EARTH』のラスト、総士自身の「ミールに従いながらも拮抗し、同化ではなく存在の調和へと導いてくれた」という台詞に含まれている。私は「存在の調和」という意味をずっと考えていた。

 

総士「遠見は僕らにとっての地平線だ。
   失いかけたものを忘れずにいてくれる」
『EXODUS』14話

 一期10話で一騎は「遠見は俺のこと覚えていてくれる?」と真矢に尋ね、真矢は「たとえどんなに変わっても、一騎君のこと覚えてる」と言っていたけど、総士も真矢を一騎と同じような存在だと見ていたということだろうか。『EXODUS』で真矢は島の記録係としての役割はカノンに譲ったけれど、一騎と総士の記録係という役割を負うことになるのかな。だとすれば、それはイコール生き残る側であるということを意味するのでつらい役割だ。回覧板(※1)に書かれた真矢の役割「同胞殺しと紛争調停者」という言葉とアニメージュ2015年2月号掲載の冲方丁のインタビューから、一騎、総士と真矢の道は別れるのは確実。

 

帰る場所、それが僕たちの求めるものだったのだろう。
どこかにある希望と平和の場所へ、2万人が帰り道をたどった。
『EXODUS』14話

 「帰る場所」という言葉が印象的なのは『HEAVEN AND EARTH』のミョルニアの言葉「この島が、私の帰るべき場所だと」。ここでは作中の時系列順に並べてみたけど、発表順序は一期24話、ドラマCD『GONE/ARRIVE』、『HEAVEN AND EARTH』。

  紅音「彼らも帰る場所を探してるんじゃないかな」
  史彦「まさか!」
  紅音「私は見つけたわ、一度は失ったけど。あなたと一緒に」
『HEAVEN AND EARTH』

  乙姫「早く、早く、お願い、迷わずに来て。
     どうか見失わずに、ここに来て。
     みんないるよ。
     あなたが会いたい人たちは、みんなここにいるよ」
ドラマCD『GONE/ARRIVE』

   乙姫「おかえり」
一期24話

ミョルニア「これが私の、最後の可能性だ。
      いや、以前のコアに教えられたからだ。
      この島が、私の帰るべき場所だと」
『HEAVEN AND EARTH』

 

  総士「君も抑制剤を」
エメリー「ミールのそばにいるから念のためにって」
『EXODUS』14話

 一期22話で容子さんが「元々はミールの遺伝子汚染から守るためのものよ」と言っていたけど、ミールは人間にとって有害な存在なんだな。『EXODUS』10話でシュリーナガルのミールを容器に格納する時、そこにいた人間は重装備だった。島のミールは人間と出会い、人間を知ったことにより空気へと変化し、核攻撃により傷ついた人々の命を守っている。

 

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるためこの世に居続けると」
  総士「ぞっとしないな。
     僕は人間として生き、命を終える。
     それもそう長くない」
エメリー「あなたの祝福がそうであることを祈ります。心から」
『EXODUS』14話

 14話は先行上映で見ているんだけど、その時に一番印象に残ったのがこの部分。『EXODUS』1話冒頭のモノローグ「僕の名は皆城総士。君がこれを聞くとき、もう僕はこの世にいないだろう」の意味が変わった。総士がなんらかの祝福をしたことにより、フェストゥムの側で永遠の存在となることなく、人間として命を終わらせることができたのであれば、むしろ死は喜びであると。うまく言葉にできないけれど、一期26話での乙姫の最後の台詞「生と死、存在と無が一つのものとして続いていくことを示すためこの世に生まれた」を思い出した。

 

暉「なんだ、クロッシングが消えた」
『EXODUS』14話

 分割内蔵型ジークフリード・システムの欠点「あたしたちのクロッシングは一人でも欠ければ機能を失って、お互いの声も届かなくなる。大事なのは一人も死なないってこと」(一期25話、真矢の台詞)がついに現実となってしまった場面。

 

・広登の死

 竜宮島の大人たちは子供たちに人間同士で争うという経験をさせないようにしてきたけれど、島の戦力を島外派遣することにした結果、子供たちを島の外ではずっと行われてきた人間同士での争いの場へ引きずり出すことになってしまった。その結果、最悪の結果を招いた。広登の死は島外派遣組と島の人々に多大な影響を及ぼし、2クール目の影を落とし続けることになると思う。
弓子、広登と島の外に出てアイドルになりたがった二人が島の外で亡くなったというのは皮肉である。

 

・広登の意思を引き継ぐもの

 広登の意思を引き継ぐのは、島を出てから広登の夢を聞いていた暉だろう。広登は島に戻らず、美羽の後と一緒に本当の目的地に行くことを望んでいた。もしかしたら、この望みを暉が叶えるかもしれない。その場合、暉は姉、里奈も暉の考えを受け入れざるを得なくなり、双子は精神的に完全に離れ、独立した個人になると思う。派遣部隊は結果的に全員島から出て行く者になるのかもしれない。

 

・エンディング

 広登の魂が島へ帰り、思い出の場所を訪れてこの世から去っていくという視点だと気がついた時、涙が止まらなくなってしまった。空が学校の放送室の窓から見ている空へ視点が変わる演出が好きだ。ラストは広登が最後に見た故郷の全景とも考えられるし、ドラマCD「THE FOLLOWER」で語られた通り、広登の記憶が島と一つになったとも解釈できる。それにしても空が美しいアニメだ。
 教室に掲げられた「希望」の文字は一期10話とは異なる。

一期10話

『EXODUS』14話

 ちなみに『EXODUS』5話のアバンで出てきた教室には「希望」という文字は掲げられていなかった。

 

※1 竜宮島回覧板 EXODUS第1号