「蒼穹のファフナー THE BEYOND(TV Edition)」第十二話「蒼穹の彼方」Part3

 『THE BEYOND』を最後まで見た上での『蒼穹のファフナー THE BEYOND(TV Edition)』の感想です。『THE BEYOND』全話と『BEHIND THE LINE』は視聴済み且つ物語を理解し終わった状態で見ています。

 

●家族

 こそうしは海神島に連れ戻されたが、そこにはこそうしと血の繋がった家族はいなかった。

 こそうしは竜宮島で血の繋がった家族を手に入れた。

  朔夜「でも、僕たちとつながってる。
     今もこれからも」
  輝夜「ねえ、総士は私たちの何?
     お兄ちゃん?」
こそうし「いや、一世代違うから、甥とか姪とか」
『THE BEYOND』12話

 

 マリスはシュリーナガルから海神島への旅で父と母を失ったので、海神島にはマリスと血の繋がった家族はいなかった。

 ルヴィ「父と母が命をかけてたどり着かせたこの島で
     彼は未来を恐れて、居場所を失い、逃げ出すしかなかった」
『THE BEYOND』8話

 マリスは竜宮島で血の繋がらない家族を手に入れた。

 マリス「僕を助けに?
     なんで僕を」
レガート「俺たちは家族だ。そうだろ」
『THE BEYOND』12話

 美羽のために作った家族であるレガートとセレノアはこそうしの家族になった。こそうしが偽竜宮島を出ていった後、レガートとセレノアはマリスの家族になった。

 

●父になる

 剣司と咲良が4人の子ども(こそうし、美羽、衛一郎、フェイ)と一緒にいるこのシーンを見た後、剣司の「遠見先生の病院を俺が借りるんだ」という台詞を聞いた時、 剣司は「みんなのママ」(※1)だった千鶴の後を引き継ぎ、「みんなのパパ」になるのだと思いました。

 

●一騎の望み

  総士「この島を守ってほしい」
一期1話

 一騎はこの言葉でファフナーに乗り、ファフナーに乗れない総士の力になった。10年後、生まれ変わった総士はファフナーに乗ることのできるようになり、一騎の力が不要になった。

こそうし「お前の力なんかいるものか」
『THE BEYOND』11話

 総士の言葉によって島を守るという役割を与えられた一騎は、生まれ変わった総士の言葉によって、島を守るという役割から解放され、自由な存在になった。

 一騎は竜宮島にフェストゥムが襲来する前の平和だった時、こんな望みを持っていた。

「なあ……甲洋は、来年になったらどうする?」
 なんとなく答えを予想しながら、訊いた。
「島を出るよ」
「そうか」
「お前も多分、そうするんだろ? 一騎」
「ああ」
「あと一年さ」
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章3(ハヤカワ文庫JA)

 世界が平和になったことで、一騎は竜宮島が平和だった時の望みをかなえることができるようになったのです。

  史彦「お前は、どこかへ行くのか」
  一騎「甲洋と一緒に世界を見てくる」
『THE BEYOND』12話

 『蒼穹のファフナー』は一騎が甲洋と一緒に竜宮島から旅立ったところで終わりました。

 

●解放する

 『THE BEYOND』は一期1話でフェストゥムとの戦いに引きずり込んだ一騎を、戦いから解放する物語でした。

 総士は「この島を守ってほしい」という言葉で、一騎を戦いに引きずり込み、こそうしの「お前の力なんかいるものか」という言葉で一騎を戦いから解放しました。一騎を戦いから解放するためにはファフナーに乗れる総士、つまり生まれ変わった総士(こそうし)が必要でした。そのため、総士はいなくなる前に一騎を「未来へ導け、一騎」という言葉で、生まれ変わった総士(こそうし)と結びつけました。一騎がファフナーに乗れる総士(こそうし)によって戦いから解放された後、総士は「未来を導いたな」という言葉で一騎をファフナーに乗れる総士(こそうし)から解放しました。以上の文章を図にすると以下のようになります。

┌───総士  「この島を守ってほしい」(一期1話)
│ ┌─総士  「未来へ導け、一騎」  (「EXODUS」26話)
│ │
└─┼─こそうし「お前の力なんかいるものか」(「THE BEYOND」11話)
  └─総士  「未来を導いたな」     (「THE BEYOND」11話)

 

 

※1 『THE BEYOND』6話、美羽は千鶴のことを「みんなのママなの」と言っていた。