「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第7~9話の感想 Part2

 『THE BEYOND』第7~9話の感想です。

 

・母になる

 合同葬儀の後、陣内がこそうしに突っかかった後、真矢は美羽とこそうしに「二人とも帰るわよ」と声をかけた。真矢は母、千鶴を失った時、美羽とこそうしの母になった。

 

・手

 一騎が差し出した手はカノンの望んでしまった未来ではあり、探していた未来ではなかった。

カノン「それは心のどこかで望んでしまった未来なんだ。
    本当の望みかもしれないけど、私の探していた未来じゃない」
『EXODUS』17話

 カノンは望んでしまった未来ではなく、探していた未来を選んだため、一騎の手を取らなかった。

カノン「私は、その未来を選べない」
『EXODUS』17話

 

 一騎はマークニヒトに特異現象を起こした後、存在と無の境界線に行ってしまったこそうしを迎えに行った。一騎はその時、こそうしの先の無の中で総士の姿を見た。

 総士「未来へ導け、一騎」
『EXODUS』26話

 一騎は5年前、無の中に去っていった総士の手ではなく、総士の言っていた未来であるこそうしの手を掴んだ。

 一騎「行くな。
    お前が導く未来がある」
『THE BEYOND』9話

 カノンに取って一騎の手は取ってはいけない未来だったが、一騎にとってこそうしの手は取らなければいけない未来だった。

 

・親子の分離

 『EXODUS』4話、一騎が家で土に触っている時、史彦が家に帰ってきた。

史彦「一騎、帰ってたのか」
一騎「あ、ああ、おかえり」
『EXODUS』4話

 『THE BEYOND』8話、千鶴を失った後、史彦が自宅で土に触っている時、一騎がやってきた。

 

 『HEAVEN AND EARTH』の時は「島を任せられん」と行っていた史彦が『THE BEYOND』では一騎に島を任せた。

史彦「まだまだ島を任せられん」
『HEAVEN AND EARTH』

史彦「この島を頼む」
『THE BEYOND』8話

 『THE BEYOND』8話で一騎は史彦の家の外に立ち、家から出てくる父を見送った。史彦の家はのはや一騎の帰る場所ではなくなっていた。

 マリスがこそうしを連れ去った後、こそうしを探すために一騎が海神島から離れたことで、史彦は子離れをした。

 

・脚本

 公開日の脚本に対する印象は「思ったよりも設定を言葉で語ることを選んだ」であり、後日、物語全体を見られるようになった時の感想は「思ったよりも話が進まなかった」でした。ここで思い出すべきは、2017年7月22日に開催された冲方サミット「テスタメントシュピーゲル完結したよーー!!」での冲方丁の言葉でしょう。

冲方「アニメの制作って脚本が先行するって、当たり前なんだけど、今、半分終わりました。これからが佳境で大変です。この映像をみなさんが味わう日が来ると思うんですけど、そのときに今日の僕ががんばってたということを思い出してほしい」

 『THE BEYOND』第7~9話でのメインテーマは一騎からこそうしへの主人公交代であり、一番脚本家の力量が問われる内容であるため、『THE BEYOND』の脚本は後半が佳境という言葉の意味を理解しました。