『THE BEYOND』2巻を見た感想をまとめました。
・子離れ
総士が北極に連れ去られた後、一騎は自分を史彦に、総士を紅音に当てはめて、今の気持ちを史彦に伝えた。
一騎「父さんだって、母さんを失った時は同じ気持ちだったんだろ」
ドラマCD『GONE ARRIVE』
一騎はこの時、心理的に親離れをしていたのだろう。それから2年後、一騎は史彦に親離れしていることを暗に伝えていた。
一騎「俺たちが島を守る。
だから父さんは好きにしなよ」
史彦「何をしろと言うんだ」
一騎「ここで一緒に住むとか、遠見先生と」
『HEAVEN AND EARTH』
しかし、史彦はまだ子離れができなかった。
史彦:俺の願いはこの家がいつまでもお前の帰ることのできる場所であることだ」
『HEAVEN AND EARTH』
史彦は一騎の行動には口を出さず、黙って見守る親になったが、一騎が誤った道を選びそうになったときは助言した。
史彦「だが今は、戦いに心と命が奪われない道があると、
後輩たちに示してやれ」
『EXODUS』6話
一騎「必要なら、俺が人類軍と戦う」
史彦「お前たちが学んだのは、人の怖さだけか。
人は時に恐ろしい存在になる。
だかそれでもなお、信じるべきなのだ」
『EXODUS』25話
史彦は一騎がこそうしがマリスによって連れ去られ、一騎がその行方を捜索することになるという形で家を出て親になるまで、子離れができなかった。つまり、一騎が家を出るという形で親離れをした時、史彦は子離れをすることができたのである。
・フェストゥムの心、人間の心
人間の「死」とは、究極的には絶対的孤独のうちに引き受けならなければならないものである。
村上陽一郎『ペスト大流行』(岩波新書)
フェストゥム=死であることから、他人に頼らず一人でやろうとする操と美羽の行為は、フェストゥムの考え方そのものではないだろうか。
操「やっぱり、食べない。
ごめんなさい。
ぼく、一人で死ぬね」
『THE BEYOND』6話
美羽「島に帰れたら
ママやエメリーがしたこと
美羽もするだけだもん。
一人で大丈夫」
『THE BEYOND』6話
上掲の本には人間の「生」についても語られていた。
その意味では、根本的に他者との関わりでしか「生」を生きられない人間の宿命と比較して、それは著しい対照をなす。
村上陽一郎『ペスト大流行』(岩波新書)
封印されているにも関わらず、クロッシングを要求するという形で、自分たちもみんなと一緒に戦いたいという意思表示したマークザインとマークニヒトの行動は人間そのものと言えるのではないだろうか。
総士「クロッシング?
マークニヒト、マークザインまで」
『EXODUS』2話
母と慕っていた容子に「一体でも敵を多く倒して、それから死んで頂戴。私と関係ないところで」と突き放され、「一人で死ぬね」と言った操に一騎が手を差し伸べた。
一騎「お前が逝くときは俺たちがそばにいる」
操「うん」
『THE BEYOND』6話
死を看取るという行為は人間が行うものであることから、一騎と甲洋の行動は人間そのものと言えるだろう。
一期26話、総士はそばにいる一騎の言葉に耳を貸すことなく、一度フェストゥムの世界に行き、存在を作り出してこの世に帰ってくると一騎に告げた。
総士「僕はもうすぐ、いなくなる」
一騎「総士、何を言っているんだ。
やめてくれ、総士」
総士「僕は一度、フェストゥムの側に行く。
そして、再び、自分の存在を作り出す。
どれほど時間が掛かるかわからないが、必ず」
一期26話
他人を頼らず一人でやろうとする行為はフェストゥムの考え方そのものである。一期で総士はそばにいた一騎の言葉の耳を貸すことはなかったが、一期とは『EXODUS』26話では逆に総士の方からそばにいるマークニヒトに話しかけた。
総士「怖いかニヒト、僕もだ」
総士「僕らも還ろう、命の源へ」
『EXODUS』26話
総士は死ぬ間際、マークニヒトに一緒にいてほしいと思ったことから、人間の考えを理解したのではないだろうか。一期の総士はフェストゥムとしていなくなったが、『EXODUS』の総士は人間としていなくなった、つまり、人間として死んだということになる。
総士「僕は人間として生き、命を終える。
それもそう長くない」
エメリー「あなたの祝福が、そうであることを祈ります。
心から」
総士「僕の、祝福」
『EXODUS』14話
総士は自らの望みをかなえたことになり、エメリーの言う祝福を勝ち得たのではないだろうか。
・こそうし、マリス、美羽
マリスにとってこそうしと美羽は以下のような存在だった。
こそうし「お前をずっと親友と思ってた」
マリス「僕もさ。
今でもね」
『THE BEYOND』5話
マリス「君たちが願っていた家族を作ったよ、美羽。
君もおいで。
この平和な島に」
『THE BEYOND』2話
マリスにとってこそうしは親友、美羽は一緒にいたい人だったということになる。
美羽にとってこそうしは以下のような存在だった。
美羽「美羽、総士のこと嫌いになるよ」
『THE BEYOND』6話
美羽はこそうしが好きということになる。
こそうしにとって美羽とマリスは以下のように見ていた。
こそうし「君たちが求める力は僕が手に入れる。
君やマリスには絶対渡さないからな」
『THE BEYOND』6話
『THE BEYOND』6話の時点でこそうしは美羽とマリスの両方に対して、好意的な感情は一切持っていない。そして、こそうし、マリス、美羽の三人の感情の向きは以下のような状態ということになる。
マリス → こそうし
マリス → 美羽
美羽 → こそうし
『THE BEYOND』は美羽とマリスの両方から好意を向けられているこそうし(主人公)がどちらかを選ぶ物語ということになる。一期と『THE BEYOND』を比較すると、こそうし=一騎、マリス=総士、美羽=真矢となることから、一騎、総士、真矢の三人の関係はこそうし、マリス、美羽と同じだったのでははないだろうか。
総士 → 一騎
総士 → 真矢
真矢 → 一騎
しかし、総士は一騎と真矢が二人でいる様子を見て、身を引いた。
総士「感謝されるのはいつもあいつか」
暉「俺、総士先輩みたいに譲る気はないです」
『EXODUS』21話
その結果、最終的に一騎、総士、真矢の三人の関係はこの形になった。
総士 → 一騎
真矢 → 一騎
総士と真矢から好意を向けられている一騎の選択は『THE FOLLOWER2』で描かれている。【蒼穹のファフナー EXODUS】戦い?それとも平和?/一騎が選んだもの を参照。