蒼穹のファフナー THE BEYOND 第1~3話の感想 Part6

  蒼穹のファフナー THE BEYOND 第1~3話の感想 Part5 に引き続き、蒼穹のファフナー THE BEYOND 第1~3話の感想 Part4 を書いた後に書いた内容をまとめました。この記事には『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットのネタバレ内容が含まれています。

 

・痛みを知らない総士

エメリー「あなたはフェストゥムにとって抜くことのできない棘。
     痛みを教える存在だとわたしたちのミールが言ってます」

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
『EXODUS』14話

 総士は竜宮島のコアと同じように命が循環するという形でこの世に永遠に居続けことになった。しかし、コアとは異なり、総士の記憶と知識は生まれ変わった総士(こそうし)には引き継がれなかった。マレスペロはこそうしが痛みを知る前に海神島から連れ去った。

 総士にとって家族とは苦みを与える存在だった。母、鞘は総士が物心つく前に瀬戸内海ミールに同化されていなくなり(※1)、妹は島のコアであるため話をすることができず(※2)、父、公蔵は総士に自己犠牲を強いた(※3)。そのため、マレスペロはこそうしにフェストゥムの存在しない世界と総士が持てなかった温かい家族を与えた。マレスペロこそうしに与えた家族はマリスが読み取った「美羽の記憶」から作られた父と母、そして、竜宮島のミールを同化するために竜宮島を学んだウォーカーの欠片から生まれた妹だった。そして、こそうしを痛みをまったく知らない総士として育てた。だが、皮肉なことにそれは竜宮島のコアの望みをかなえることになった。

  乙姫「家族みんなで、暮らしたいな」
一期17話

  織姫「普通の家族みたいに、暮らしたかったね」
『EXODUS』22話

 マレスペロは竜宮島のコアの望みをかなえることはできたが、総士の望みは無視された。

  総士「それがかなう未来を願おう。
     僕らがいた証として」
『EXODUS』22話

 その結果、マレスペロは新たな総士(こそうし)を作ることで、総士、乙姫、織姫の3人はこの世に存在したことのない者にしてしまった。そして、マレスペロはアルタイルを手に入れた暁には総士、乙姫、織姫の3人に行ったのと同じことを全人類に行おうとしている。

 

 こそうしはマレスペロから「両親は健在で、妹は島のコアではない。同級生と同じように島に敵が来るまで平和を享受できた総士」という人生を与えられたことで、総士とこそうしは別の人間であってもこそうしは14歳まで平和を享受できた総士だと感じられるように描かれている。

 

・家族-弓子と一騎、乙姫(フロロ)-

エメリー「わたしは、弟がミールに願ったから生きられた。
     あなたが弓子の命を願ったように」
『EXODUS』26話

○日野弓子
 シュリーナガルのミールである世界樹が、コアの一部を美羽に託し、そのコアが弓子と同化して生命を保つ。
「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」冲方丁(※4

 父、道生は美羽が生まれる前にいなくなったため、母、弓子が美羽にとって唯一の家族だった。しかし、弓子はシュリーナガルに着いた夜、フェストゥムの攻撃により死亡。しかし、美羽はまだ幼く、母親が必要であったため、アショーカが弓子の命を与えた。弓子はその役割を終えた後、生命をアショーカに還した。

 

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
『EXODUS』14話

 総士はフェストゥムの世界に行ったことで永遠の存在になってしまったが、竜宮島のコアと同じく有限の命を持っている存在であるため、生まれ変わるという形でこの世に永遠に居続けることになった。総士にとって唯一の家族は島のコアだが、総士は竜宮島を去り、織姫は島に命を還した。つまり、海神島で生まれたこそうしには家族がいないということになる。

 一騎は竜宮島との合流を目前にしたハバロフスクで人としての命はほとんど尽きていた。アショーカがエメリーの弟と美羽の望みをかなえ、期間が限られているとはいえ、一度は死んだ人の命を永らえさせたが、アショーカと同じように竜宮島のミールも「生きたい」という一騎の望みをかなえ(※5)、期限のない命を与えた。

カノン「お前が世界を祝福するなら
    我々が生と死の循環を超える命を与えよう」
『EXODUS』24話

 家族のいないこそうしの育ての親になったのは、弓子と同じくミールの力によって生きている一騎だった。

 

 マレスペロはアショーカの行為を見て、幼い子供には血のつながっている家族が必要であることを学んだのではないだろうか。

【ウォーカ-】
ウォーカ-のコアの欠片から生み出された存在がフロロである。
『THE BEYOND』第1~3話のパンフレット

 ウォーカーはマークレゾンが同化する前、ずっと竜宮島を追いかけ、同化するために竜宮島について学んでいたことから、その欠片から総士にとって唯一の家族だった乙姫を生み出した。アショーカがコアの一部を与えて命を保ち続けた弓子と瀬戸内海ミールが命を与えた一騎は本人だったが、ウォーカーの欠片から生まれたフロロは本物の乙姫の記憶を一切持っていないため、乙姫のふりをしているにすぎない。美羽が成長し、役割を終えた後、弓子が命をアショーカに還したのと同じように、こそうしが成長した後、役割を終えたかのようにフロロ(乙姫)という存在は消された。

 

 マリスによってさらわれたこそうしが偽りの竜宮島でフロロ(乙姫)と暮らすようになった結果、本来一人しかいないはずのこそうしの家族という位置に、一騎とフロロ(乙姫)の二人が存在することになった。フロロ(乙姫)を消したのは、元々こそうしの家族だった一騎である。

 おそらく物語終了時、二者が和解、一つになる、片方が消滅などの形ですべて一つになるのではないだろうか。
蒼穹のファフナー THE BEYOND 第3話「運命の器」/同じものが二つ

 本来は一人だったはずのこそうしの家族は二人存在することになってしまったが、最終的にフロロ(乙姫)が消滅し、一騎一人になった。

 

・第三者の記憶

 道生の姿をしているレガートと弓子の姿をしているセレノアはマリスから読み取った「美羽の記憶」から形成された存在(※6)である。母、弓子とは海神島で別れるまで4年半ほど一緒に暮らしていた(※7)が、父、道生は美羽が生まれる前に亡くなったため、美羽は父のことを直接知らない。(『EXODUS』4話で美羽は自宅にやってきたミツヒロに父の話をせがんでいる)美羽が知っている父、道生とは竜宮島の記憶から読み取ったものである(※8)。レガートとセレノアはあくまで美羽から見た道生と弓子の姿であり、そのため道生と弓子自身とは少し違う存在になっているはずである。セレノアはアショーカによって命を与えられ美羽を理解できるようになった弓子、つまり美羽から見て理想の母親になった時の弓子(※9)である可能性が高い。

 アショーカが死んだエメリーと弓子の命を永らえさせたのと同じように、マレスペロは死んだ者を再びこの世に存在させようとした。しかし、アショーカがいなくなった本人自身の記憶を使っているの対して、マレスペロは第三者の記憶を使っているため、生み出したのは本人とは似て非なる者だった。

 

・過去と現在、そして未来

 ”マリス” と発音する英単語には以下のような意味を持つものがある。

malice:〈…に対する〉悪意,敵意,恨み 
『ウィスダム英和辞典』第3版

 エクセルシアは英語でも使われている単語だが、元はラテン語で以下のような意味を持っている。

excelsior: higher, loftier, more elevated Wiktionary

 マリスは 「美羽に匹敵する天才的な〈エスペラント〉」(※10)だったという過去を表す excelsior という名字と malice という新国連に対する現在の感情を示す名を持つが、いずれ人間に育てられた親(過去)の記憶とフェストゥムに育てられた自分(現在)の記憶を持つこそうしと未来を求めて争うことになるのだろう。

 『THE BEYOND』1話でマリスは甲洋と並んで未来という単語を使っていた。

 マリス「彼らは未来を予期して
     僕たちをこれに乗せたんだ」
『THE BEYOND』1話

 

 

※1 総士は2031年12月27日生まれで、母、鞘が同化されたのは2133年。妹、乙姫の誕生日は2133年3月5日である。『EXODUS』公式サイト SPECIAL/CHRONOGYを参照。

※2 『アニメージュ』2006年1月号及び『蒼穹のファフナー Blu-ray BOX』のブックレットに掲載されている「XEBEC能戸プロデューサー秘話」に以下のような記述がある。

【ワルキューレの岩戸での皆城さん】
 妹の存在、母親の温もりを感じられる場所。8歳くらいの頃はよく来てはそこで眠ってしまい、公蔵に抱かれて家のベッドに寝かされることの繰り返しでしょうか。

※3 一期15話、子どもの姿をした総士は一騎に本心を明かした。

総士「ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって、父さんに言われた。
   自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」

※4 『EXODUS』BD-BOXのブックレットから引用。

※5 『EXODUS』5話、一騎は短冊に「生きたい」と書いた。

※6 『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットのレガート、セレノアの項から引用。

※7 美羽は2147年4月1日生まれ。海神島で弓子がアショーカに命を還したのは2151年11月23日。

※8 フェストゥムがシュリーナガルを襲来した夜、美羽は夢の中で父、道生と旅をした。このエピソードはドラマCD『THE FOLLOWER』で描かれている。

※9 弓子はシュリーナガルで亡くなる前の自分についてこう話していた。

弓子「今は美羽が理解できるもの。
   わかってあげられないことの方がずっとつらかったわ」
『EXODUS』19話

※10 『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットのマリス・エクセルシアの項から引用。