2020年1月~2月に一期~『THE BEYOND』1~3話を見直した後に書いたメモをまとめた記事です。
・相手を理解する
一騎「総士はあれに乗ったのか」
『THE BEYOND』4話
ただ、ちょっとした仕草や、目線や、口の動きなどで、何となく相手が心に抱いていることって分かること、あるよね、と真矢は言った。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章2
一騎は竜宮島ミールから生と死の循環を超える命を与えられ、言葉を使わずに相手の考えていることがわかるようになったが、相手の動きを見ているだけで相手の考えていることのわかる真矢に近い状態になったことを意味している。真矢は一騎がフェストゥムの読心能力を持っていることを知っているが、一騎も相手の動きから考えていることを読み取れる真矢の能力には気がついていた。
そして、一度だけ、真矢の、超自然的と呼びたくなる読唇術に対して、
「俺が考えていることが分かるのか?」
と大真面目に、訊いたことがある。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章2
一方、真矢の精神状態は『EXODUS』終了後、総士の左目を傷つけた後の一騎と同じ状態になった。
真矢「ずっとファフナーに乗ってるみたいで
いろいろ平気になるの。
なんでも平気な自分に」
『EXODUS』19話
傷つけることも、傷つけられることも、自分は平気なのだ。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』二章7
つまり、『THE BEYOND』で一騎と真矢の立場が入れ替わったということになる。さらに真矢は一騎が総士の左目を傷つけたことを唯一知っている第三者だった。
たった一人――真矢を除いて。五年間でただ一人、自分の罪を告白した相手。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』二章8
しかし、総士の左目を傷つけた後の一騎が人類軍の戦闘機を攻撃し工作員を射殺した後の自分とは同じ状態、すなわち「なんでも平気な自分」になっていたことには気がついていないのではないだろうか。
『THE BEYOND』で真矢はフェストゥムに右目の視力を奪われた(※1)。
セレノア「私を見つけた。
おもしろい目だ。
頂こう」
『THE BEYOND』1話
その後、こそうしにパイロットとしての教育を行うことになり、真矢はその責任者となった。『THE BEYOND』の真矢はドラマCD『STAND BY ME』時の総士と同じ状況に置かれているということになる。
『THE BEYOND』の真矢は一期開始時の一騎と総士と同じ状況に置かれていていることから、真矢は『THE BEYOND』で14歳の時の一騎と総士を理解することになるのではないだろうか。
真矢「あたし、なんにもわかってないよね」
一期12話
この言葉通り、一期開始時、ファフナーに乗れず、傍観者にすぎなかった真矢は一騎のことも総士のことも全くわかっていなかった。
・一騎を理解する
カノン「私も、話がある、一騎のことで」
真矢「マークザインを見に行ったとか」
カノン「あっ、知ってたのか」
真矢「なんとなくそうかなって。
ずっと戦いだけが居場所だったから。
でも、今はここに一騎君の居場所があるし、大丈夫だよ」
カノン「あっ、わかってるんだな、一騎のこと」
『EXODUS』3話
カノンの言葉からおそらく周りの人は皆、真矢は一騎のことを理解していると思っていたはずである。しかし、真矢自身、一騎のことを理解していないと自覚していた。
「そんなのわかるわけないよぉ。変なの、一騎くん」
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章2
真矢「わかっていないよ、そう思ってるだけ」
『EXODUS』3話
それ故、真矢は総士を批判していたのである。
真矢「機械を使って人の心を覗いて、それで理解したことになるの」
一期12話
・駆け引き
史彦「お前たちに人を撃てと命じることはない」
『EXODUS』25話
史彦の「人と戦わない」という基本方針に変化はない。しかし、溝口は新国連に対してアルヴィスは部下に敵であれば人と撃てと命じる組織であることを伝えた。
溝口「もう一つ、そちらの爆撃機を撃てと命じたのは俺だ。
処刑したけりゃ、好きにしな」
『EXODUS』23話
そのため、ヘスターは実際に爆撃機を攻撃した真矢のこの言葉を信じたはずだ。
真矢「私が処分します、この手で」
『THE BEYOND』4話
・竜宮島ミール
三つに分割された瀬戸内海ミールの一つが竜宮島に根付き、人間と暮らし始めるまでの様子をアショーカのたどった道のりを通して描いているのではないだろうか。
2118年: | 人類軍による核攻撃により、日本が北海道の半分と沖縄を残して消滅 | |
2151年: | 人類軍ハワイ・ポリアフ輸送基地は新国連が発令した交戦規定アルファにより壊滅 | |
2128年: | 海中要塞艦の上に建造した人工島に入植 | |
2151年: | ナレイン将軍はエメリーを救出し、エメリーが持っていたミールの欠片をシュリーナガルに根付かせた |
2118年、人類軍の核攻撃により住む場所を失った日本人は海中要塞艦を建造し、三分割された瀬戸内海ミールとともに暮らし始めた。一方、2151年、新国連から攻撃にハワイから追われたナレイン将軍と生き残った兵士や住人はシュリーナガルに移住し、エメリーが持っていたミールの元で生活を始めた。
エメリー「私たちのミールは、争う術を捨てました」
ドラマCD『THE FOLLOWER』
アショーカはフェストゥムを生み出さないミールだが、竜宮島ミールもアショーカと同じように争う術を捨てたため、フェストゥムを生み出さないミールなのではないだろうか。そして、竜宮島を覆う大気へと変化した。
千鶴「かつて結晶鉱物だったミールがある時、バイオスフィアへと進化し、
自らを空気体へと作り替えた」
一期25話
瀬戸内海ミールには死んだ人間とフェストゥムの記憶を保管するいう性質を持っている。
竜宮島
エメリー「あなたの島のミールはすべてを記憶して保ち続けるんですね。
決して失わずに」
ドラマCD『THE FOLLOWER』
海神島
ベイグラントのコア「あいつらはたくさんの心を作っては消した。
僕がいた島の人たちもみんな殺した。
でもそのたびに力が育った」
『EXODUS』22話
蓬莱島(※2)
総士「機体に残留する思念でしょう」
保「大勢に囲まれてる気分だ」
『EXODUS』3話
※1 『THE BEYOND』2巻のブックレットに「第五次蒼穹作戦で右眼の視力をセレノアに奪われてしまった」と記載されている。
※2 『EXODUS』BD-BOXのブックレットに掲載されている「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」冲方丁には「島(蓬莱島)のミールは、皆城総士の乗るマークニヒトの中で眠っている」と記載されている