「蒼穹のファフナー」を見直した感想 Part1(BS11)

 2020年7月3日からBS11で再放送されている一期1話~7話を見た時の感想をまとめました。『EXODUS』までのネタバレが含まれています。

 

・ファフナーに乗る理由

 甲洋の親は甲洋が戦うことを望み、甲洋もそんな親の望みを知っていた。

正浩「本当か」
諒子「やったわ、あなた。
   ほら」
正浩「おお、ちょっと見せてくれ。
   おお、本物だ」
一期3話

甲洋「そりゃあ、義務だし、親が喜ぶし」
ドラマCD『STAND BY ME』

 総士は自分のために生きることを許されず、島のコアを守るために生きることを強要された。

総士「ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって、父さんに言われた。
   自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」
一期15話

 子どもを戦いから遠ざけるのではなく、積極的に戦わせようとしていたという点において、総士と甲洋の親は同じ考えを持っていたということになる。

 

 甲洋は戦闘時、同級生の中で唯一、トイレの中で震えていた子どもだった。

甲洋「みんな、みんななにやってるんだよ。
   戦争なんだぞ」
一期4話

 しかし、甲洋は翔子が亡くなった後、一変。戦闘経験を積むため、実戦形式の訓練を望んだ。

甲洋「訓練なんてもういいです。
   お願いがあります」
一期7話

総士「春日井の提案に僕は賛成です」

総士「シミュレーションには限界があります」

総士「実戦で力が発揮できなければ意味がありません」
   戦いで生き残るための訓練が必要なんです」
一期7話

 システムに乗っていた総士は最終決戦に参加する場合、ファフナーに乗って戦うことを望んだ。

行美「皆城総士は行く気だよ」

行美「もし北極のミールへの総攻撃する場合、
   ジークフリードシステムをファフナーに内蔵できないかと聞いてきた」
一期22話

 甲洋と総士がファフナーに乗った理由は対称的だった。

甲洋「お前らみたいに早く役に立たないと、
   島から追い出されちまうからな」
一期4話

総士「新国連の最終決戦計画に参加する場合、一騎達と共に戦いたい。
   僕がこの島を出るためのコアの許しがほしい」
一期22話

 甲洋と総士がファフナーに乗った理由は対称的だった甲洋は竜宮島に居続けるためにファフナーに乗ることを選び、総士は竜宮島から出るためにファフナーに乗ることを選んだ。もっとも総士の場合、竜宮島の外へ行くだけでなく、竜宮島の外で死ぬことを望んでいた。

総士「ジークフリードシステムとファフナーの二重の負荷がかかっても、
   18時間は活動できる」
一期22話

 織姫の言葉通り、総士は竜宮島ではなく海神島でこの世を去ったことから、総士の望みはかなったということになる。

織姫「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、
   あなたとあなたの器が生まれ変わる。
   そういう未来が見えるの」
『EXODUS』22話

 

・一期4話の命題

 竜宮島の子どもたちは世界が平和であるという価値観で育ったため、竜宮島の外の世界に住む人間は敵であるということを知らなかった。そのため、一騎は竜宮島を守るために人間を犠牲にするという作戦を受け入れず、命令違反して人間を助けた。一期4話の命題は一騎の「命令違反」ではなく、自分たちが生き延びるためには人間を囮にすることさえ厭わない「竜宮島の価値観」だったのではないだろうか。しかし、「命令遵守=善、命令違反=悪」という価値観に捕らわれていたため、一期4話の命題を「命令違反」だと思いこんでしまった。

史彦「なぜ命令を無視して新国連機を助けた」
総士「すべて、僕の責任です」
一騎「助けることは、悪いことなのか」
史彦「時と場合によってはな」
一期4話

 史彦が「命令遵守=善、命令違反=悪」という価値観をはっきりと否定しているが、私はこの台詞に込められた意味を正確に読み取ることができなかった。『EXODUS』で一騎は命令についてこう説明していた。

一騎「まあ、嫌な命令なら聞かなくていい」
『EXODUS』4話

 これが命令に対する一騎の答えということになる。

 

・真実

 翔子が戦闘時を行ったことは一騎が過去の戦闘ですべて行っていたことだった。

  翔子
   一期6話 命令を無視して戦った。
フェストゥムを殲滅した。
ファフナー自らの命を失った。
 
  一騎
   一期2話 命令に従って戦った。
フェストゥムを殲滅した。
ファフナーを失った。
   一期4話 命令を無視して戦った。
フェストゥムを殲滅した。
ファフナーは失わなかった。

 一騎と翔子が行ったことの違いは翔子が命を使ってしまったということになる。しかし、この後、視聴者を翔子が命を使ったという真実から目をそむけさせた。

   放送「繰り返します。
      マークゼクス抹消により…」
スタッフ1「全くあの野郎面倒なことやってくれたよな」
スタッフ2「俺たちの大事なマークゼクスをよ」
スタッフ1「メカニックの身にもなってみろっていうんだよ」
一期7話

 その後、翔子の墓が荒らされているという形で視聴者に翔子の死という真実を突きつけた。

 しかし、再び、視聴者を翔子が命を使ったという真実から目をそむけさせた。

   里奈「私、羽佐間先輩みたいに自分勝手じゃありませんから」
   真矢「それ、どういう意味?」
   里奈「えっ、羽佐間先輩って命令を無視して
      マークゼクスを壊したって聞いてますよ」
一期10話

 一期7話(2004年8月23日)の放送から2ヶ月後に発売された『蒼穹のファフナー BGM & ドラマアルバム I』(2004年10月27日発売)に収録されているドラマCDで答えが示されていることを考えると、一つの出来事を二つの視点から描くことで、視聴者自身に答えを考えさせたかったのかもしれません。

 

・情報伝達

咲良「どう、なったの」

弓子「マークゼクス、フェストゥムとともに消滅しました」
一期6話

 視聴者の視点では咲良の問いに答えたのはCDCにいる弓子という形になっているが、咲良の問いに直接、答えたのは狩谷である。

狩谷「敵は消えたわ」
四人「えっ」
狩谷「貴重なマークゼクスと、一緒にね」
甲洋「あっ、そんな…」
一期6話

 ラストに「貴重なマークゼクス」という狩谷の言葉とそれに対する甲洋の反応という一期7話への引きを作ったが、視聴者はマークゼクスの消滅という一番重要な情報を知っていたため、視聴者はと劇中のキャラクターの視点が一致しないという問題が発生してしまった。

 

・真実

 咲良と咲良の母、澄美は自分の知っている情報を元に、翔子が死んだ理由を考えた。

咲良「戦って満足して死んだんだよ、翔子は」

澄美「でもね、危険だと思ったらいつでも逃げなさい。
   それが命令違反でも」
澄美「でないと、羽佐間さんのように」
一期7話

 翔子の死の真実は以下の通りである。

翔子「私はあなたの帰ってくる場所を守っています」
一期5話

翔子「一騎君と約束したのよ。
   あたし、約束を守りたい」
一期6話

 咲良と澄美が翔子の言動と行動からは推測した理由=真実ではないということになる。

 

・甲洋

 甲洋は出撃前の一騎に会いたいという翔子をブルクに連れていったため、この言葉を聞いているはずである。

翔子「私はあなたの帰ってくる場所を守っています」
一期5話

 しかし、甲洋は翔子が死を選んだ理由を知っているにもかかわらず、翔子の感情に目を向けていた。

甲洋「翔子は苦しんで、苦しんで死んだんだぞ」
一期7話

 

・甲洋の父の価値観

正浩「あそこの娘は当たりだったのさ。
   敵を一体倒した。
   うちのははずれだな」
一期7話

 甲洋の父、正浩はパイロットが犠牲になったとしても、フェストゥムを一体倒したことに価値を見出しているため、新国連の価値観の持ち主ということができるだろう。

 

・甲洋とカノン

 両親との関係がうまく行っていない甲洋の心の支えであり、ずっと一緒にいたいと思ったのはショコラだった。

 甲洋「ありがとな、ショコラ」

 甲洋「どうするショコラ。
    一緒にファフナーに乗るか」
一期7話

 一方、母親との関係がうまく行っているカノンの心の支えであり、ずっと一緒にいたいと思ったのはショコラだった。

カノン「がんばるよ、ショコラ」

カノン「ずっと一緒にいてくれてありがとう」
『EXODUS』17話

 甲洋とカノンの親との関係は正反対にもかかわらず、この二人が本音を言える相手は親ではなくショコラだった。