「蒼穹のファフナー」を見直した感想 Part3(2020年)

 『THE BEYOND』を6話まで見た後に一期を見直した感想です。『THE BEYOND』6話までのネタバレが含まれています。今回、未公開にした記事は『THE BEYOND』全12話先行上映後に公開します。

 

●一期12話

・真矢と翔子

真矢「翔子、近藤君と小楯君がファフナーに乗るんだって。
   また、あたしだけ何もできないまま、見てるだけ。
   翔子もこんな気持ちだった。
   あたしが学校の写真を見せるたびにこんなふうに寂しかった。
   今になってやっと翔子の気持ちがわかるなんて」
一期12話

 一期で真矢は翔子と同じ立場になった時、やっと翔子の気持ちを理解することができたが、真矢は『THE BEYOND』で一期の総士と同じ立場になりつつあり、『THE BEYOND』7話で母、千鶴の死を知った時、一期前半の総士と同じ立ち位置に立つ。その時、真矢は10年前の総士のことを思い出し、その時の総士の気持ちを理解することになるのだろう。

 

・竜宮島の価値観

一騎「人間同士で平気で戦えるなんてどうかしてる」
一期12話

 一期4話、アルヴィスは新国連の探索機を囮にして、その間に竜宮島を起こし、フェストゥムから逃げようとしたが、新国連と竜宮島の関係を知らない一騎は新国連の探索機を助けようとした。一期4話で何も知らぬまま戦場に放り込まれた一騎の心情をきちんと描いていれば、この台詞を通して新国連と竜宮島の価値観の違いが明確になったはずである。

 

・真矢の視点

総士「君は、君が今戦う必要はない」
真矢「そう。
   皆城君、どうして、どうしてそう言ってあげないの、一騎君にも」
一期12話

 真矢は一騎のことしか考えていないため、自分に向けられた総士の言葉に秘められた意味を考えることもなく、「そう」という一言で済ませてしまった。

 

・モルドヴァ基地と海神島

 一期12話、浮上した潜水艦から道生が一騎にモルドヴァ基地を見せた。

 

 『THE BEYOND』3話、浮上したRボート上から美羽がこそうしに海神島を見せた。

 

・戦闘形式

「(前略)単機で戦うことを、ローンドッグと言い、援護が全くなく、個人の能力に全ての負荷がかかるため、滅多なことではこの形式は取りません」
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』三章4

 一期12話の戦闘シーンを見た時、ノベライズのこの文章が頭に浮かんだので、一期12話までの戦闘シーンを分類してみた。

    話数 戦闘形式 フェストゥム パイロット
  一期2話 ローンドッグ(一騎)  殲滅  生存
  一期4話 ローンドッグ(一騎)  殲滅  生存
  一期6話 ローンドッグ(一騎)  殲滅  生存
    ローンドッグ(翔子) 機体を失う  死亡
       殲滅  
  一期8話 ツインドッグ   -   -
    (一騎、甲洋)    
  一期9話 ローンドッグ(一騎)  殲滅  生存
    ローンドッグ(甲洋) 機体を失う  同化
  一期11話 ローンドッグ(一騎)  倒せず  生存
    ツインドッグ  殲滅  生存
    (道生、カノン)    
  一期12話 トリプルドッグ  殲滅  生存
    (剣司、衛、咲良)    

 作戦が成功しなかった部分を赤字にしたところ、ローンドッグが大変危険な戦闘形式であることが明確になった。一騎だけは例外でシステムの支援がある時はローンドッグでもフェストゥムを倒すことができたが、システムなしではフェストゥムを倒せなかった。経験値の低い翔子と甲洋はローンドッグの犠牲になってしまったと言えるだろう。この戦闘データを見るとマークザインを手に入れて竜宮島に帰ってきた一騎がこう言うのも無理はない。

総士「一人で戦うというのか。
   それがどれほど馬鹿げたことがわかってるのか」
一騎「マークザインなら無理じゃないはずだ」

総士「恐ろしくはないのか、お前一人で」
一騎「俺が戦ってる時、システムの中にはお前がいる。
   怖いと思う必要もない」
ドラマCD『NOW HERE』

 

●一期13話

・一騎が島を出た理由

真矢「敵から島を守ってくれてるって」
一騎「ごめん」
真矢「えっ」
一騎「その、感謝されるの、つらいんだ」
ドラマCD『NOW HERE』

溝口「世界の救世主にでもなるつもりだったりしてな」
真矢「違います。
   一騎君はあんなふうに見られるのが嫌だから島を出てったんです」
一期13話

 真矢は一騎が島を出る前に一騎と電話で話していたため、溝口の言葉に意義を唱えた。真矢の言葉は間違っていないが、正解でもなかった。ちなみに一騎は総士のことを理解したい一心で島を出たため、そんなところにまで頭がまわっていない。

狩谷「私はあなたに島を守るんじゃなくて世界を守ってほしいと思ってるの」
一騎「世界を、僕が」
一期11話

 島を出た島の本当の理由を一騎が最初に話した相手は日野洋治だった。

洋治「君はなぜ島を出た」
一騎「何のために戦えばいいのか知りたくて。
   自分がどこにもいないような気がしたから」
一期13話

 

・一期とTHE BEYOND

 一期では道生が一騎にモルドヴァ基地について説明していたが、『THE BEYOND』では史彦がこそうしに海神島について説明していた。

道生「新国連人類軍モルドヴァ基地へようこそ。
   ここは地下400メートルだ。
   分厚い地表がフェストゥムの読心能力を防いでくれる」
一期13話

史彦「第三アルヴィス、海神島。
   アルヴィスはフェストゥムに対抗するための海中要塞艦だ。
   島はその上に存在している」
『THE BEYOND』3話

 

 一期では日野洋治が一騎を導く役割を担っていたが、『THE BEYOND』では美羽がこそうしを導く役割を担っていた。

洋治「5年前島にいた日野だよ、覚えているかい」
一騎「日野の、おじさん」
一期13話

美羽「小さい頃、こうしてたくさんお話したの、覚えてる」
『THE BEYOND』3話

 以下に一期で一騎が新国連の捕虜になった状況と『THE BEYOND』でこそうしが海神島で捕虜だと自認していた時の状況をまとめた。

      一期 THE BEYOND
  主人公   一騎  こそうし
  主人公の立場   捕虜  捕虜だと自認
  監禁された場所   人類軍  アルヴィス
    モルドヴァ基地   海神島
  主人公を捕まえた人   道生   一騎
  主人公を導く人   洋治   美羽
  導く人についての記憶  覚えている  覚えていない
  故郷を去った人  道生、洋治  こそうし

 一期、『THE BEYOND』で対になっているが、主人公と対話して主人公を導く役割を一期では日野洋治が、『THE BEYOND』では日野洋治の孫にあたる日野美羽が担っています。『EXODUS』、『THE BEYOND』では真矢が竜宮島を代表して新国連と対話する役割を担っていることから日野家は対話する一家として描かれています。

 

・一騎の不在

冲方:単純な話、誰か一人が欠ければね、片方は繋がるんですね。そういう話なんですよ。
「蒼穹のファフナーEXODUS」スペシャルイベント-痛み-

 一期13話、一騎の不在時に人工子宮が並ぶ部屋で史彦と千鶴が会話していた。

 『EXODUS』11話、一騎がシュリーナガルに行った後、史彦が千鶴の家で食事をしていた。

 『THE BEYOND』1話でこそうしが連れ去られて以降、一騎はこそうしを探して海神島を留守にしていることが多かったはずである。つまり、一騎が不在だったため、『THE BEYOND』4話では史彦と千鶴の関係が一気に進展して状態が描かれていた。

史彦「一騎がいなければ俺もミツヒロと同じ道を選んでいた」
一期21話

 史彦にとって一騎という存在があまりも大きく、その一騎が不在にならないと、史彦は自分の気持ちに正直になることができなかったのだろう。事実、一期13話と『EXODUS』11話で千鶴は一騎の名前を言っている。

千鶴「一騎君がこの施設をどう思うのか聞いてみたいんです」
一期13話

千鶴「一騎君の料理には負けますけどね」
『EXODUS』11話

 

・ファフナーの動き

総士「間違いありません。
   あの動きは一騎です」
一期13話

 一期の戦闘シーンを『HEAVEN AND EARTH』以降の3DCGのレベルでファフナーを描いていたら、誰が見ても一騎の動きだとわかるような映像が作れたのではないだろうか。