「蒼穹のファフナー」第1話と「THE BEYOND」第2話

 放送開始から15周年となる2019年7月4日に一期1話を見直した時のメモ。『THE BEYOND』のネタバレ内容が含まれています。

 

・第1話のアバン

 『BD-BOX』に収録されているオンエア版の第1話にはアバンがあり、『機動戦艦ナデシコ』と『宇宙のステルヴィア』の紹介映像が流れた後、『蒼穹のファフナー』のPVが流れます。PVの中の文章を書き出して見ました。

あの夏――
僕らは見た
世界の終わり

そして すべての始まり

闘い

希望

あなたはそこにいますか

 この一連の文章を見て思い出したのは『蒼穹のファフナー』(2004年)ではなく『ゼーガペイン』(2006年)だった。

 

・こそうし=人間

   声「あなたはそこにいますか」
一期1話

こそうし「僕は平和な島にいます」
『THE BEYOND』2話

 一期でフェストゥムは「あなたはそこにいるか」と呼びかけたが、『THE BEYOND』ではフェストゥムの問いかけに答えるかのように、こそうしは「ぼくはここ(島)にいる」と呼びかけている。この後、こそうしの前に一騎が現れるが、一騎はフェストゥムとして描かれているため、この時点では一騎がフェストゥム、こそうしが人間として描かれている。

 

・学生の姿

 一期1話のこのシーンを見た時、『THE BEYOND』の学校のシーン(生徒会室と校門)に登場する生徒はこそうしとマリスの二人だけで、他の学生の姿を一切見かけなかったことを思い出した。これは偽りの竜宮島で学校に通っている人間はこそうしとマリスの二人のみということを暗に表現しているのだろう。

 レガート、セレノア、フロロ、マリス、こそうし以外の島の住人が出てきたのは夏祭りの時だけだった。おそらく偽りの竜宮島に住人として住んでいるフェストゥムの数はそう多くなく、こそうしの行動に合わせて、その場に応じた住人の姿に扮していたのだろう。

 

・家族の写真

 『THE BEYOND』1話、剣司が担当しているジークフリード・システム内には家族の写真が飾られていましたが、一期1話、戦闘機で出撃する要誠一郎のコックピットに家族の写真が貼ってあり、このシーンのオマージュだったことに気がつきました。

 これは咲良の夫である剣司が咲良の父の後を引き継いだことを意味していて、なかなか感慨深いシーンでした。

 

・アルヴィスの司令

 物語開始時、アルヴィスの司令は皆城公蔵が務めていたが、皆城公蔵は2416年、竜宮島にフェストゥムに襲来した時に亡くなり、司令代理だった真壁史彦が引き継いだ。

 『RIGHT OF LEFT』と一期1話では司令である公蔵の横に司令代理である史彦が立っていたが、『THE BEYOND』3話では司令である史彦の横に剣司が立っていた。つまり、アルヴィスの次期司令と目されているのは剣司ということになる。アルヴィスの司令は世襲制ではなく、相応しいという者が後を継ぐということなのだろう。もっとも公蔵と史彦には後継者はいない。公蔵と史彦の子どもたち(総士、乙姫、一騎)は全員、フェストゥム側に行ってしまった。

 次期司令と目されているのは剣司も含め、アルヴィスの司令の妻は全員、フェストゥムに同化されている。皆城鞘と真壁紅音は子どもが生まれた後、同化されていなくなったが、この二人とは逆に近藤咲良は同化現象により昏睡状態に陥ったものの、そこから回復し、その後、子どもが生まれた。

史彦「私は兵士を送り出すだけだ」
『EXODUS』4話

 アルヴィスの司令というのは子どもを戦いに送り出す張本人であるため、その代償を家族という形で支払っているのかもしれない。公蔵と史彦は妻(皆城鞘、真壁紅音)がフェストゥムに同化されていなくなり、子どもたちは人間ではなくなってしまった。アルヴィスの次期司令と目されているのは剣司の場合、妻、咲良は同化現象により一時、昏睡状態に陥った。子どもの衛一郎はいずれ総士、乙姫、一騎のような役割を担うことになるのかもしれない。

 

千鶴「私も開発に携わりました。
   タブーだったはずの技術をすべて使って、
   子どもたちの遺伝子を操作することさえ。
   慣れました」
『EXODUS』4話

 アルヴィスの司令と同じく、子どもを兵士に作り変えた千鶴もまた、その代償を家族という形で支払っているのかもしれない。『THE BEYOND』で真矢は同級生で唯一ファフナーのパイロットを務め、孫の美羽は「世界中のみんなが平和になってだれも悲しくて痛くなくなったら」(※1)という条件が満たされた時、ボレアリオスミールのコアが美羽を同化するという契約を結んでいる。

 

 

※1 『EXODUS』22話の美羽の台詞。