【蒼穹のファフナー THE BEYOND】返す

一騎「返せるものは返すよ」
『EXODUS』18話

 『THE BEYOND』は竜宮島ミールが一騎と総士から奪ったものを返す物語だった。

 

・総士

皆城鞘は、総士・乙姫の母親だ。
受胎能力を有していた彼女は、乙姫を妊娠中に同化され、乙姫のみが胎児の状態で取り出された。
2133 皆城鞘 死亡、真壁紅音 同化。(※1

 竜宮島ミールは総士から奪った母と妹を生まれ変わった総士に返した。その結果、生まれ変わった総士は父、母、妹と平和な竜宮島で14歳まで暮らした。

 

・一騎

 平気なのだ。
 自分はそんなことでは感情を動かされたりしない。誰かが傷つくことも、誰かを傷つけることも、実は、たいしたことない。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』二章7(※2

 竜宮島ミールは一騎が総士の左目を傷つけた後に消してしまった感情を一騎に返した。それが「無限のクロッシング」だった。

ファフナーに乗ると「無限のクロッシング」であらゆる者の痛みを背負ってしまう(以下略)
『THE BEYOND』第1~3話パンフレット

 一騎はファフナーに乗っている時、自分で消してしまった心が傷ついた感情と心が傷つけられる感情を体験しているということになる。

 一騎は戦闘中、父、史彦が千鶴を失った時の心の痛みを感じた。

一騎「痛みを感じる、父さん」
『THE BEYOND』7話

 「無限のクロッシング」を通して、一騎がこそうしを失った時に感じることのできなかった心の痛みを史彦は教えたのである。

 

 『THE BEYOND』3話、一騎が妹と故郷を奪われたこそうしが感じた心の痛みを引き受けた(※3)。

一騎「安心しろ。
   少し眠るだけだ」
『THE BEYOND』3話

 一騎は心が傷ついた感情と心が傷つけられる感情を失っているため、こそうしが感じた心の痛みを引き受けることで、フロロを同化し、偽竜宮島を破壊した時に感じるはずの痛みを感じていたのだろう。

 

 

※1 『EXODUS』公式サイト内の SPECIAL / CHRONOGY より引用。

※2 冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫JA)より引用。

※3 『THE BEYOND』3話の甲洋と操の会話を参照。

甲洋「一騎、眠りに入ったのか」
 操「戦いの痛みを全部引き受けたからだよ。
   あの子の痛みまで。
   必要ないのに」