【蒼穹のファフナー THE BEYOND】祝福

 『THE BEYOND』10~12話のキャッチコピー「見ろ、これが僕たちの祝福だ」という言葉は、制作スタッフから視聴者に向けられたものだったことからもわかるように、物語が見終わった時、視聴者を傍観者から当事者に変えました。『THE BEYOND』10~12話で視聴者に突きつけたのは、総士はこの世にいないという事実でした。

 この言葉はこそうしだけでなく、視聴者にも向けられた言葉だったのです。

 一騎「これが真実だ。総士」
『THE BEYOND』2話

 一騎はこそうしに言われるがままに、総士の灯籠を流しましたが、鏑木家のように自分の意思で流していないので(※1)、一騎は総士がいなくなったことをまだ受け入れていないと思われます。つまり、『THE BEYOND』11話でこそうしとの勝負に負けた一騎は、総士がいないことを受け入れられない視聴者の姿そのものなのです。

 

ルヴィ「あなたは誰ですか」
『THE BEYOND』5話

 『THE BEYOND』ではキャラクターを通して、人間が親しい人がいなくなった時の反応が描かれました。暉がいなくなったことを受け入れられない里奈は、ナレイン将軍が竜宮島に来る前の竜宮島に閉じこもりました。美羽がいなくなる未来を見たマリスは未来を恐れて、居場所を失い、逃げ出しました。(※2

 以下の言葉が総士がいないことを受け入れられない視聴者へ作品からのメッセージです。

 織姫「すべてを受け入れて世界を祝福すると、
    誰もが希望に満ちた未来を開く。
    いつだってそれは信じていい未来なんだ」
『EXODUS』26話

美三香「怒りにはやさしい気持ち。
    憎しみには理解する気持ち」
『THE BEYOND』5話

 

 

※1 『EXODUS』17話、鏑木香奈恵が「早苗の灯籠を流したこともないのね、私たち」と言った後、鏑木家はお祭りで灯籠を流しました。

※2 『THE BEYOND』8話、ルヴィはマリスを「彼は未来を恐れて、居場所を失い、逃げ出すしかなかった哀れな人間なのです」と説明しています。