「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第1~6話を見直した感想(2020年)Part1

 『THE BEYOND』1話~6話をまとめて見直した時の感想です。

 

・同化

 フェストゥム(総士)は人間(一騎)と一緒にいたいと思った。

  総士「一つになろう、一騎」
一期15話

 人間はフェストゥムのやり方(体の同化)でフェストゥムと一緒にいたいとは思わなかった。そのため、フェストゥムを攻撃して、フェストゥムを消そうとした。

 フェストゥムの攻撃が体の同化の場合、人間は目の前にいるフェストゥムを攻撃して、フェストゥムを消すことができれば、体の同化を防ぐことができる。

 

 フェストゥム(セレノア)は人間(里奈)と一緒にいたいと思った。

セレノア「私の祝福を閉ざした。
     だがお前はまだ私といる」
『THE BEYOND』1話

 人間はフェストゥムのやり方(思考の同化)でフェストゥムと一緒にいたいとは思わなかった。フェストゥムはクロッシングを通して人間の心に入り込む、つまりフェストゥムが人間の心の中にいたため、人間は自分の存在を消すことで、人間の心の中にいるフェストゥムを排除しようとした。

  里奈「ごめん、暉」
『THE BEYOND』1話

 フェストゥムの攻撃が思考の同化の場合、フェストゥムがどこにいるのかわからないため、人間が敵の居場所を見つけ攻撃するのは難しい。フェストゥムの思考の同化を防ぐには人間がいなくなるしかない。

 

・人間とフェストゥム

  こそうし「でも敵が来たら戦わないと」
  セレノア「大丈夫。
       ここはずっと平和だもの」
『THE BEYOND』2話

 セレノアはこそうしに偽竜宮島が平和である理由を言わなかった。セレノアに命令しているマレスペロ(=プロメテウス)に理由がないことが力だと考えていた。

プロメテウス「理由のない憎しみが最も強い力なんだ」
『EXODUS』23話

 こそうしは偽竜宮島が平和である理由を知るために外の世界を知ろうとしたが、その場にいたレガートとマリスはその理由を知りたいという気持ちさえを持っていなかった。

  こそうし「なんでわかるのさ。
       外の世界がどうなっているのか誰も知らないのに」
  レガート「知る必要はないだろう」
   マリス「平和ってこと以外に何が知りたいんだ」
『THE BEYOND』2話

 アリストテレスは人間を以下のように定義していた。

 すべての人間は、生まれつき、知ることを欲す。
アリストテレス『形而上学』第一巻第一章(※1

 偽竜宮島の住人の中で知りたいという気持ちを持っていたこそうしだけが人間だったということになる。

 

 セレノア、レガート、マリスは偽竜宮島が平和である理由は不要だと考えていたが、フロロはこの三人とは少し違う意見を持っていた。

   フロロ「だいたいどうやって知るのよ」
『THE BEYOND』2話

 こそうしの知りたいという気持ちを否定しなかったフロロはセレノア、レガート、マリスより一歩先に行っていたのかもしれない。

 

・人間とフェストゥムを見分ける

 一期1話、人間の住む竜宮島にフェストゥムがやってきた。

 人間とはあまりにも違う姿だったので、見た目で人間とフェストゥムを見分けることができた。

 

 『THE BEYOND』2話、フェストゥムの住む偽竜宮島に人間がやってきた。

一騎「お前たちは人間じゃない」
『THE BEYOND』2話

 偽竜宮島に住むフェストゥムは人間の姿に擬態しているため、見た目で人間とフェストゥムを見分けることはできない。

 

・言葉にする

 一騎がフロロを同化した後、セレノアは「フロロの声が消えた」(※2)と言っていることから、この時、フロロがいないことを受け入れていた。その後、たとえフロロと同じ姿のフェストゥムを作ったとしても、家族として暮らしたフロロと同じではないことに気がついていた。それを確認するかのように、セレノアは海神島で一輪の花(※3)を摘み取り、海の中で手放した。

 摘み取った花と同じ花が咲くことはない。

 

 セレノアはマレスペロに支配されているため、マレスペロの考えをそのまま甲洋と操に伝えた。

セレノア「ここと同じ島を作ることもできる。
     お前たちが愛した者たちもすべて用意しよう」
『THE BEYOND』5話

 甲洋がセレノアの考えを代弁した。

  甲洋「どれほどの力があっても同じ命は二度と生み出せない」
『THE BEYOND』5話

 セレノアが甲洋と操を説得しに来たはずだったが、甲洋と操がベノンの言葉に嘘であることに気が付きつつあるセレノアに道を示した。

  甲洋「君もいつか自由になりたい日がくる」
   操「その時はいつでも言って」
『THE BEYOND』5話

 

・美羽の命

  操「母さんは僕が死ぬのが嫌なんだ。
    君を食べればもっと生きられる。
    だから」
『THE BEYOND』6話

 美羽の命を奪おうとしたのは操なのだろうか。

 

 ボレアリオス・ミールのコアである操は生まれ変わることを受け入れていた。

  操「僕はミールのコアだから生まれ変わるの」
イアン「皆城乙姫が織姫のようにか」
  操「そう、ミールが命を学ぶために」
『THE BEYOND』6話

 しかし、操は一人で死ぬのは嫌だった。

 一騎「お前が逝くときは俺たちがそばにいる」
  操「うん」
『THE BEYOND』6話

 操が死ぬ時、そばにいてほしい人は容子だった。

  操「だって子どもが死ぬことに慣れてるでしょ。
    死ぬってことを知ってるから」
『THE BEYOND』6話

 しかし、容子は操の死が受け入れられず、操の死を看取ることを拒否した。

 容子「一体でも敵を多く倒して、それから死んで頂戴。
    私と関係ないところで」
『THE BEYOND』6話

 織姫は千鶴にコアの寿命について話していた。

 織姫「でも、私を長く生かそうとしてはダメ。
    島のミールはこれからも学ばないといけないから。
    命の終わりと始まりを」
『EXODUS』8話

 つまり、操は延命というコアの禁忌を犯しても、容子の望み(操に生きていてほしい)をかなえようとした。

  操「母さんは僕が死ぬのが嫌なんだ。
    君を食べればもっと生きられる。
    だから」
『THE BEYOND』6話

 美羽の命を奪おうとしたのは容子だったということになる。ここでマリスがこそうしに言った言葉を思い出した。

マリス「誰かが生きるために誰かが犠牲になる」
『THE BEYOND』1話

 容子は結果として「操が生きるために美羽が犠牲になる」ことを望んでしまったのである。

 

・操の本音

 操「僕がいなくなったらあの二人と一緒に僕も飾ってよ」
『THE BEYOND』6話

 真矢が容子に操の言葉の真意を代弁していた。

真矢「自分がここにいたことを忘れてほしくないだけ」
『THE BEYOND』6話

 

 

※1 アリストテレス『形而上学』(岩波文庫)から引用。

※2 『THE BEYOND』3話のセレノアの台詞。

※3 フロロ(Floro)はエスペラント語で花を意味している。