劇場版「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」

 TVシリーズがきれいに終わっているので、私自身、続編は全く望んでいなかった。総士のその後も自分なりのその後を想像して、満足していました。

 2010年12月23日に制作が発表された時、TVシリーズの完結から5年が経過していたこともあり、割と抵抗なく受け入れた自分に驚いた記憶があります。さすがに続編で悲しい経験をしているので、期待というものは全くしていなかったけど。

 最近、劇場公開されるアニメは一度見ただけでは理解できないことがわかっていたので、最初に見に行った12/25に川崎で2回見ました。その後、12/29に池袋で1回、1/11にロフトプラスワンでのイベントの前に川崎で1回と合計4回見ました。4回見て、やっと自分の意見がまとまりました。

 1回目に見たときは酒を呑んだくれる小楯保の姿で涙がこぼれた。なんか要所要所で泣いていたような気がします。本放送時、とにかく作品にのめり込み過ぎていたので、6年という時間が流れても、当時の気持ちを思い出すことができました。そのかわり、2回目以降は冷静な気持ちで見ていました。

 映画を観る前に『Newtype Library 冲方丁』に掲載された「Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」を読みました。冒頭3ページで絶望の底に叩きつけられました。

 

 映画は期待というものがないフラットな状態で見たのですが、台詞を限界まで絞り込んだと思われる脚本がすばらしい。パンフを見ながら、名前のあるキャラ23人(+1)の行動やセリフを思い出してみたけど、すべて思い浮かんだ。登場人物が多いけど、それぞれ印象に残る場面があった。95分なので必要な要素は全部入っているものの、物語展開が駆け足気味。120分位で、緩急付けた展開のほうがもっと感情を揺さぶられる作品になったのではないか。

 物語を重視すると1クールでテレビ放映という形が良かったと思うけど、 ロボットアニメは週一では難しいという問題とぶち当たる。 私自身、TVシリーズは物語はおもしろけど、 ロボットアニメとしては物足りないという評価でした。 どっちを取るのかは難しい問題だ。

 映画ということもあり、戦闘シーンは素晴らしい。TVシリーズではOPを見て、メカの動く場面を想像して、楽しみにしていたにもかかわらず裏切られたので、映画でやっと動くファフナーを見て、大満足でした。メカは3DCGとセルが混在していますが、4回目にして見分けが付くようになった。戦闘シーンはTVシリーズでの悲劇を思い出す演出が多く、最初に見たときは精神的にきつかった。今回、空を飛翔する機体があったのが絵的に嬉しい。

 メカの作画はよかったのですが、残念ながら人物の作画は今ひとつ。同じジーベックであれば「ブレイクブレイド」の方が作画はよかった。1/11のロフトプラスワンのイベントの話では、DVD/Blu-rayリリース時期は確定しないように感じたので、リリースを遅くしてもいいので作画を修正してほしい。しかし、TVシリーズよりもキャラクターの顔の判別がしにくいので、正直、ごっちゃになっていたキャラがいました。平井久司のキャラクターデザインは好きではないのですが、この映画では前提的に「鉄のラインバレル」っぽいなっていて、TVシリーズの頃の方がまだ好きだった。さらに言うと「無限のリヴァイアス」、「スクライド」の頃が好きだけど。

 

 映画は『RIGHT OF LEFT』とTVシリーズで犠牲になった人々のことを忘れず、その上で生きていくという姿勢が貫かれているように感じた。TVシリーズで亡くなったパイロットの想いは様々な形で生きいるものが引き継いでいる。

 羽佐間翔子:カノンが羽佐間容子の養女となる。
 小楯衛:広登がゴウバインのメットと役割を引き継ぐ。
 日野道夫:弓子との間に子供を残す。
 皆城乙姫:新しい島のコアの誕生。

 島を思うミョルニアと甲洋の行動には泣かされた。

 来主操が単なるスフィンクス型のフェストゥムというのは良かった。ただし、何度か見ないと来主操の感情が見えにくかったのが惜しい。自分で考えたことがないし、コアには逆らえないという部分をもう少し観客に伝わるように描いてほしかった。

 音楽は絵とのタイミングが合っていないように感じた。新収録の音楽は決して嫌いじゃない。TVシリーズとROLは音楽の使い方がよかっただけに残念だ。挿入歌の「さよならの時くらい微笑んで」の使った場面は良かった。

 1回目は総士が2年で帰ってくるのは早すぎると思ったんだけど、2回目に見たときはこれでいいと思えるようになっていた。TVシリーズ終了、一騎と総士の人生は重ならないと思っていたけど、この結末はありで、受け入れた。しかし、皆城兄弟の末路は対照だった。総士は約束通りこちらにもどってきたけど、乙姫は芹にさよならを言って永遠に去っていった。

 フェストゥムと竜宮島の関係は一段階進んだものの、竜宮島と人類軍とは距離が開いてしまった。竜宮島はフェストゥムとの共存を目指し、人類軍はフェストゥムの撲滅なので、互いの考え方は永遠に平行線だ。

 TVシリーズも映画でも人類とフェストゥムのどちらかの絶対的な勝利は描かれず、一旦休戦という形で終わっている。どちらかの一方的な勝利がありえない時代なので、物語の落とし方は時代の空気を反映していると思う。ロフトプラスワンでの中西Pの発言で続編を望む声が大きいけれど、私はこの先の物語はいらない。この後の物語は受け取った人それぞれに委ねてほしい。